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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
27/84

平凡に爆弾発言

其の27






ユウ州候エンリュウに拝謁する前に案内された控え室で


『ええか。わしが色々喋るが驚くでないぞ。冷静を装って下でも向いてればええからな』


婆ちゃんから俺とリュウビに対しての指示は全て任せろ的な内容だった。

やはりこの気分屋仙人は何やら企んでいやがる。

さて、どうしたものかと思案していると案内の文官のような人に呼ばれ部屋を出た。


案内された部屋は扉を開けると奥行きがあり向かって左に鎧姿の兵士、右に文官や導士のような人が並んで「謁見の間」とでも表現するのが適当かはわからないが、少し高い位置に椅子が一脚置かれ中年の男性が座っていた。

婆ちゃんを先頭に俺とリュウビが部屋の中頃まで進んだ位置で案内をした文官のような人に止まるように指示され俺達は片膝を付いた状態で膝間付くと


『儂がエンリュウである』

『この度のローソン村での働き大義であった』


そう椅子に座った男性が名乗る。

40歳前後の見た目だが、爽やかな感じの顔付きを裏切るような丸い体型をしている。


『なぁに。成り行きじゃから気にせんでくれ』

『これは成り行きで拾った物じゃがそちらで役に立ててくれたらええ』


婆ちゃんはいつもと変わらぬ口調で喋りながら、魔法の袋から山賊の宝箱の中身である王冠や剣を取り出し近くの文官らしい人に渡した。

王冠や剣を見てエンリュウさんは


『褒美を取らせる立場の儂にこのような物を差し出して導士は何が望みかな?』


少し怪しむような口調で婆ちゃんを視ながら問う。

自分の言葉で会話している点からも暗愚と言った印象では無かった。



『別に褒美が欲しくて山賊退治をしたわけじゃないしの』

『成り行きじゃから気にせんでくれ』


と知り合いと話すかのように答える婆ちゃん。

すると婆ちゃんの話しを聞いていた導士らしい人物が


『先ほどから「成り行き」と言うが、導士様には他に目的があったのでしょうか?』


と問いただしてきた。


『まぁ。目的と言うほどではないんじゃが、赤頭巾のことをちいと教えてくれんかの』

『わしは普段「北魔の森」におって世間の事に疎くての』


婆ちゃんが飄々と答える。


「北魔の森」に少し会場がざわめいたが、エンリュウさんがスウセイ将軍を見て頷き、スウセイ将軍が一歩前に出て赤頭巾のことやユウ州の現状を詳しく教えてくれた。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




『それは困ったことじゃのぉ』


一連の説明を聞いた婆ちゃんが斜め上を見て思案をするような素振りで呟く。


スウセイ将軍の説明によると、現在ユウ州は州都の「ダイキン」を占領され、この「タクケン」が臨時の州都になっているとのことだった。

また「タクケン」の南にある「タイコウ山」にも赤頭巾の軍が布陣している。

赤頭巾は州全体を掌握しているわけではなく、州都や主要な拠点を抑えて勢力を広げ、中央と分断された地方都市をゆっくり制圧しているらしい。

他の州も似たような状況だが近々皇帝の命で赤頭巾の勢力が及んでいない州を中心とした討伐軍が編成され、ユウ州軍もそれに合わせて攻勢に出る為に義勇軍の編成をしているとのことだった。


『どうであろう。導士殿にも我が軍に参陣して赤頭巾討伐に加わってくれまいか?』


エンリュウさんが婆ちゃんに提案と言うより要請をしてきたが


『それは無理じゃな』


アッサリ断る仙人。

自分の主人の要請をアッサリ断った婆ちゃんに


『エンリュウ候の申し出を!』


とか


『不敬である』


などの言葉で婆ちゃんを窘める者もいたが


『導士様。人民の為にもお力をお貸しくださらねか』


スウセイ将軍が懇願すると少し思案をする素振りをして


『今まで黙っちょったが、わしは仙人じゃ』

『じゃから人里の争いには関わりたくないんじゃ』


いきなりの爆弾発言にエンリュウさんやスウセイ将軍は驚いた表情だったが、導士や文官達の一部は


『そのような子供にでもバレる嘘を』



『多少魔法が使えるからと言って仙人とは』


等と疑う者も多かった。

まぁそうなるよな。

いきなり得体の知れないお婆さんが仙人を自称しても信じる訳ない。


すると


『信じれんじゃろうから、証拠を見せちゃる』


と言って


『シュウソウや』


とシュウソウを呼ぶと一羽の雀が「謁見の間」に飛んで来て


『仙人様。お呼びですか』


と普通に喋る雀の登場に騒然とする場内。


『お前さん達の中に喋る雀を見たことある者はおるかの?』


そう言って少しドヤ顔で周りを見回すが、当然そんな人物はいるはずも無く


『そう言う訳じゃ』


と言ってエンリュウさんを見上げ


『信じて貰えたかの?』


とまたもやドヤ顔の仙人。

ハッとした表情を見せたエンリュウさんは、急いで自分が座っていた高い位置から婆ちゃんの前に下りて来て片膝立ちで膝間付き


『仙人様とは知らず大変ご無礼を致しました』


頭を下げて謝罪の言葉を言うと、自分の主人の姿に慌てて他の配下の人達も片膝を付いて頭を下げるのであった。


『まぁ頭を上げられよ。そんな格好じゃ話しも出来んしの』


そう言ってエンリュウさんを立ち上がらせて


『わしは関わりたくないが、余り無視も出来ん状況のようじゃの』


そう言ってエンリュウさんに笑顔を見せた。


エンリュウさんは謁見の間からテーブルのある別の部屋に俺達を案内し、今度は椅子に座っての会談となったのだが、婆ちゃんを仙人だと認めたエンリュウさんが座席の上座を婆ちゃんに譲ると言い張って一悶着あったが、立場上でもエンリュウさんが座らないと始まらないと婆ちゃんが説得してお茶を飲みながらの会談になっている。


『わしから提案なんじゃが、わしの弟子を義勇軍に参加させようかと思うのじゃがどうじゃ?』


何やら弟子なぞ居ないはずの仙人から弟子の派兵等と、どう考えても巻き込まれているような提案がされた。

とりあえずは事前の打ち合わせ通り俺とリュウビは冷静を装ってはいるが、内心「ふざけんな!」と叫びたい心境である。


『仙人様のお弟子様ですか?』


少し戸惑った様子のエンリュウさんだったが


『なぁに。お前さん達の軍の邪魔にはならんと思うのじゃ』

『じゃがな。命令されて動くような器用さはないでの』


と気分屋仙人の自分勝手な言い分に先ほど婆ちゃんを疑っていた文官のような人が


『命令を無視した存在を軍に迎えるなど!』


とご立腹の様子だったが


『仙人様がそう仰有るのであれば』


アッサリとエンリュウさんは婆ちゃんの言い分を認めてしまった。

喋る雀一匹でこうも婆ちゃんを信じてしまう辺りエンリュウさんって案外チョロいのか?

それとも、王冠やらが布石となっているのか?

俺が1人エンリュウさんの人柄を想像していると


『そうか。ではもう一つお願いがあるんじゃが』

『ここにショカツリョウちゅう小僧がおるじゃろう?』

『小僧をわしに貸してくれんかの?』

『弟子入りを頼まれたのじゃが、仙人が弟子入りを認めるにはちと未熟での』

『今回小僧の試験も兼ねたいのじゃ』


とまたまた自分勝手な言い分をお願いと称している仙人…


エンリュウさんがスウセイ将軍の顔を見ると、スウセイ将軍は頷いて後ろで控えていた兵士に何やら指示を出している。


兵士に連れられてリョウ君が部屋に入って来てスウセイ将軍から婆ちゃんの話しの内容や、婆ちゃんが仙人だと説明され驚きの表情で俺達を見ていたが


『仙人様。改めて私を弟子にしてください』

『どのような試験でも受けてみせます』


と力強い口調で懇願してきた。

リョウ君の態度に婆ちゃんは笑顔で頷き


『どうじゃな?』


とエンリュウさんに先ほどの「お願い」の答えを促すように聞くと


『承知しました』


とエンリュウさんが婆ちゃんの言い分を受け入れたのであった。


『そうか。それじゃわしからお前さんに良い話しをしてやろうかの』


婆ちゃんはそう言って立ち上がり、エンリュウさん達を見回した後


『ダイキンをわしの弟子が取り返しちゃる』

『そうじゃのぉ。5日後に弟子がここに来るから、それまでにお前さん達は軍を用意しておいてくれ』


とまたもや爆弾発言を良い放ちドヤ顔の気分屋仙人であった。

次回投稿予定 【10月9日】

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