表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
26/84

平凡にデキる女

其の26






『おはようございます』


俺を起こす声で目が覚めたが、シュウソウの声ではない。

俺の隣で寝ていたリュウビも眠そうに目をこすりながら起きたようだ。


『おはよう』


俺がリュウビに声を掛けると、少し恥ずかしそうな顔をして布団の中に隠れてしまう。


『お二人は仲がよろしいのですね』


俺を起こした声の主が話し掛ける。


『もうすぐ朝食の支度が出来ますよ』


「朝食」の言葉に反応したリュウビが布団から出てきて


『カンちゃんおはよう』

『リョウ君は早起きね』


やっと見た目の年相応の対応をとるリュウビだが「朝食」に反応する辺りはリュウビらしい。


『リュウちゃんは早く着替えておいで』


そう言って俺は俺達を起こしに来たショカツリョウに


『婆ちゃんは?』


と聞くと


『導士様は一度森に戻ると仰有っていました』



昨夜一応の弟子入りを許可されたショカツリョウは、俺達と森に一度転移し俺達の関係や素性等を婆ちゃんから説明を受けている。

さすがに悪魔や龍と一緒なのを隠すのは難しいだろうし、俺が転生者なのも説明しないと後々面倒そうなのでそれも説明しておいたのだが、婆ちゃんのことだけは仙人だと教えなかった。

何かしらの考えがあるのだろうが、案外「なんとなく」なんて気分的なのかもしれない。

それから昨夜のマッチポンプのような試験だが、ショカツリョウが魔法を使って炎を消そうとしたなら魔法の実力差から炎は消せなかったらしい。

魔法を使えるのに使わないで地道に消火をしたからこそ消せた炎で、何事も安易に魔法に頼るようならショカツリョウの願いは理想のままで終わるだろう。

しかし、魔法ではなく人々の協力を募って炎を消したその判断力を婆ちゃんは評価したようだった。

普段は気分屋の婆ちゃんだが、伊達に仙人をやってる訳ではないようだ。


そしてリュウビが何故俺と一緒に寝ているのかと言えば、夜中に俺の部屋に押し掛けてきて強引に寝てしまったからである。

婚約しているのだから同じ部屋で寝ても一応は問題無いのだが、そんな色っぽい事情では無く、ただ単にリュウビが1人で寝たくなかっただけのようだった。



俺が身支度をして昨夜と同じ部屋に向かうと、婆ちゃんは森から戻ったようで既に着席している。


『何か用事?』


俺が森に戻った理由を婆ちゃんに問うと


『用事と言うほどのことは無いのじゃがな』

『この先をちと考えな』


と何やら婆ちゃんなりの考えがあったようだが、とりあえずは内緒のようだ。

そこに着替えたリュウビが来て朝食となった。


朝食を済ませ部屋に戻ろうとすると、1人の兵士がやって来て


『この後、1刻後に馬車が来ますのでご準備ください』


とユウ州候エンリュウとの謁見を伝えてくれた。


部屋に戻ると婆ちゃんが入ってきて


『カンや。これを着るとええ』


そう言って先日山賊からいただいた着物を俺に渡して部屋を出ていった。

恐らく森に戻った理由はこれだったのかもしれない。

でも、山賊の着物って今の俺にはデカイし、匂いがな…

少し憂鬱な気分で着物に袖を通すと、以外にも俺にちょうど良い身の丈で匂いも無い。

婆ちゃんがいつの間にか手直ししてくれたのだろう。

「デキる女」ってやつはこう言うことなんだろうと、俺は普段はちょっと気分屋の仙人を見直していた。



俺は着替えを終えてから庭に出てシュウソウに朝食をあげていると、婆ちゃんも着替えを済ませて庭にやって来た。

いつもの地味なローブのような布より少し艶やかな色使いの布を肩から巻いて魔道具の杖を持っている。

婆ちゃんもやはり女性なんだなと思っていると、婆ちゃんの後ろからリュウビが現れた。

いつもの赤系の生地ではなく、俺の着物より少し淡い紫色の着物で、魚の柄が入っていた。

これも「デキる女」の仕業なのだろうが、いつもよりも大人っぽく見えるリュウビは正直ヤバイ。

俺がリュウビに見とれていると


『似合いますか?』


少し照れたようにモジモジしながら訊ねてきたので、俺はリュウビに近づき


『リュウちゃん。良く似合っているよ』


と冷静を装って言うのが精一杯だった。

俺の言葉にリュウビはいつもより破壊力増々の笑顔で俺に微笑む。

そんな俺達にシュウソウは


『何やら今日は熱いですな』


と冷やかしてきたがリュウビの笑顔をロックオン中の俺は完全スルーだ。


『またちちくりあっちょるのか。まぁ仲が悪いよりはええが、この分じゃ結婚より先に子供が出来そうじゃの』


と呆れとも、イヤミとも取れる言い回しをしてきたのだが


『まあ。私とカンちゃんの子供ですか?』

『楽しみですね』


とリュウビは言ってる意味がわかっているのか、わかっていないのか判断に悩む反応をし、俺と婆ちゃんは苦笑いをするだけだった。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




俺達を乗せた馬車は一番大きな建物の前で止まった。

馬車から出ると、十数人の兵士が入口の両脇に並んで俺達を出迎えているようだ。

すると建物の中からスウセイ将軍が出てきて俺達を出迎えてくれる。

ユウ州候配下の将軍が公の場で俺達を出迎えたりして問題無いのか?などと思っていると、将軍の後ろから綺麗な女性が現れて


『初めまして導士様。私はスウセイの妻でケイと申します』

『この度は私共のショカツリョウがお世話になるそうで、そのご挨拶に伺いました』


と丁寧なお辞儀で婆ちゃんに挨拶をしている。

将軍の奥さんともなれば、このような所作も当然なのかと、ここにも「デキる女」がいた。


『まぁそんなにかしこまらんでもええ』

『それにまだ正式に弟子とは認めてはおらんしの』


とまさかの茶舞台返しを言い放つ。


『『えっ?』』


とスウセイ将軍と奥さんが同時に驚きの表情になったが


『なぁに。ちとあの坊主は他とは違うようじゃから、わしも色々考えての』


と何やら企んでいる様子の婆ちゃんに俺は嫌な予感がするのであった。

次回投稿予定 【10月2日】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ