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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
25/84

平凡に元気な声

其の25






『さっきの子、どうするの?』


食事をしながら婆ちゃんに聞いてみる。


『そおよのぉ~』


婆ちゃんも未だ決めかねている様子だ。

食事の案内に来た少年が婆ちゃんに弟子入りを懇願し土下座まで披露したのだが、まだ幼い少年を弟子にするのを婆ちゃんも躊躇っているのだろうか…


『一応、夕飯を食べたら話しぐらい聞いてみるかの』


そう言っていつもの夕飯とは比べようもない豪華な料理を堪能する婆ちゃん。

俺の正面には満面の笑顔で料理を食べながら


『美味しい』


を連呼するリュウビ。

なんとも微笑ましい光景にも思えるが、この料理を用意してくれたユウ州候エンリュウとはどんな人物なのか?

先ほどの少年は何故婆ちゃんに弟子入りを懇願したのか?

まさか婆ちゃんが仙人だと知ってる訳は無いだろうし。

そして何よりユウ州候に王冠や剣を献上すると言い出した婆ちゃんの意図がわからなかった。


そんな事を考えながらの食事では、せっかくの料理の味もわからなくなると、頭を切り替え料理に集中していると


『料理はお口に合いましたか?』


とスウセイさんが先ほどの少年を連れて現れた。


『先ほどは、この者が何やら導士様に失礼なお願いをしたようで申し訳ない』


と少年の頭に手を押し当て強引に謝罪の姿勢をとらせる。


『失礼な事なんぞ何も無い。まぁ少し話しを聞かねば何とも言えんがの』


と普段通りの婆ちゃんにスウセイさんは色々話してくれた。



先ず、スウセイさんはユウ州候配下の将軍だと自己紹介をしてくれた。

次に、スウセイ将軍の話しによると、先ほどの少年はスウセイ将軍の奥さんの縁者で、赤頭巾との戦いで住んでいた州都が襲われた際、両親は共に死んでしまったらしい。

少年には姉と妹がおり、姉は学問の為、今は[ケイ州]に行っていて難を逃れ、少年と妹は知り合いの農夫が匿ってくれて助かったとのことだ。

両親を失った2人をスウセイ将軍の奥さんが呼び寄せて面倒を見ているらしい。


ただ、先ほどの少年は他の人より魔力が強く簡単な魔法を扱えたことから、スウセイ将軍がユウ州候に頼んで導士の修行をさせているそうだ。


なかなか将来有望な少年のようだが、何故このまま導士の修行をしないで、素性も知らない婆ちゃんに弟子入りを望んだのか?


一連の話しを聞いた上で婆ちゃんが


『お前さんは何でわしに弟子入りしたいんじゃ?』

『ユウ州にも導士はおるじゃろうに』

『実際、ユウ州候とそこの将軍さんの計らいで修行も始めておるそうじゃないか』


婆ちゃんが改めて少年に問うと


『僕はこんな世の中を止めたいのです』

『争いで多くの人が死に、賄賂がまかり通る世の中を』

『ただ、僕にはそんな力も知識もありません』

『ここで修行を続けていれば普通の導士には成れるかもしれませんが、普通の導士ではこんな世の中を止めることは出来ないでしょう』

『そんな時に赤頭巾を倒した導士様がこちらに居ると聞いてお会いしたく参上しました』

『そして実際にお会いした導士様が、年配のそれも女性だと知りました。力がおありになるのに誰にも仕えていないこの方なら僕が成りたい導士の修行をしてくださるかと思いお願いをしたのでございます』


と明確に答えてみせた。


俺より見た目は幼い少年だが、考えていることは既に子供の考えを凌駕している。

俺は少年の気持ちに嘘は無く、なんとかしてやりたいと思ったが…


気分屋の婆ちゃんだからな…


半分諦めにも似た気分でいると、ずっと話しを聞いてから黙っていた婆ちゃんが


『将軍さんはどう考えるのじゃ?』


と少年ではなく、スウセイ将軍に問う。


『私のような凡人にこの者の考えは出過ぎた思い上がりにも思えます』

『しかし…』

『私がこの時分に同じ考えが出来たかと言えば否です』

『さすれば、私のような凡人の考えより、この者の思うようにさせてやりたいとも思います』


将軍を任されるだけあって見た目でのみ判断をしない辺りは流石なのか。

それでも黙ったままだった婆ちゃんがおもむろに


『着いて来い』


と少年を呼んで庭の方に歩き出した。

俺とリュウビとスウセイ将軍も婆ちゃんの後を追って庭に出ると、婆ちゃんは魔法で炎を出して庭に生えていた木を燃やし始める。

何をしているのか俺達は意味がわからないでいると


『お前さんがこの炎を消してみるのじゃ』


と少年に告げた。

一瞬驚いた表情をした少年だったが、炎を観ながら少し考えた後、急いで建物の中へ走って行ってしまう。

残された俺達はまたしても意味がわからないでいたが、建物の中からゾロゾロと桶等を持った人達を連れて少年が戻って来て消火の指図を始めた。


数分後、どうにか火を消した少年が婆ちゃんの前に歩み出て


『消えました』


と笑顔で報告すると婆ちゃんも笑顔で


『お前さんの名前を聞いておらなんだの』


名前を尋ねる婆ちゃんに少年は元気な声で


『ショカツリョウです』


と名乗ったのであった。


次回投稿予定 【9月25日】

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