平凡に土下座
其の24
そこは城壁に囲まれた町だった。
普通に町と言うより城の中に町があるような容である。
俺達がスウセイさんの案内でタクケンに着いたのは日暮れ間近になっていた。
城門を抜け広い道を真っ直ぐ進むと先ほどの門より小さな門があり、その先に宮殿のような建物が何棟か建つエリアである。
小さめな建物の前で馬車が止まると、出迎えの兵士が今夜はここに泊まって明日ユウ州候エンリュウとの対面だと教えてくれた。
建物の中は俺が異世界に来てから見たどの建物より立派で内装も装飾が施され豪華だ。
恐らく客用の建物、差し詰め迎賓館のような感じなのだろう。
俺達3人にはそれぞれ部屋が与えられ、どの部屋にも大きな天蓋付きのベッドが置いてあった。
俺は案内された部屋に入って馴れない馬車の移動でかなり腰が痛かったのでベッドに横になり思い切り背中を伸ばしていると
『カンちゃん』
とリュウビが入ってきた。
『なんか落ち着かないの。一緒に居ても良い?』
人間の世界に馴れないリュウビがいきなり迎賓館のような場所に案内されて一人ぼっちにされたのだから、不安にでもなったのだろう。
『ああ。こっちにおいで』
そう言ってリュウビを招き入れるとリュウビは俺の横に寝転び
『んん~』
と俺と同じく背伸びをしている。
どうやらリュウビも馴れない馬車の移動で腰が痛いようだ。
舗装もされていない街道をガタガタと荷馬車のような馬車で半日近く揺られていたのだから仕方ない。
『馬車は早いけど腰がね…』
俺がリュウビを気遣って言うと
『泳いでいた方がずっと楽。人間って大変よね』
人間期間実質3日目らしい感想だ。
『龍の姿になった方が楽なんじゃないの?』
俺の問いに
『楽かもしれないけど、人間の姿になる時また裸になっちゃうし』
と少し照れたように話すリュウビ。
俺が服を破いて裸になるのと逆で、リュウビは白蛇のような龍の姿では服からすり抜けてしまうので、そのまま人間の姿になると裸状態になってしまうのが恥ずかしいようだ。
初めて会った時の残念感たっぷりな時とは比べ物にならないほどリュウビは人間としてたった3日だが成長しているのか?
もしそうだとしたら、数年後残念感が抜け非の打ち所がない女性になって…
俺の奥さんに…
そんな淡い未来を想像していると横で寝そべったリュウビが俺を笑顔で眺めている。
ヤバイ。
この笑顔には勝てる自信が全く無い!
俺はそっとリュウビの艶やかな藍色の髪を撫でてあげると気持ち良さそうに俺の方に身体を丸めて寄ってきた。
そんな新婚夫婦の一幕にも似た甘い雰囲気を打ち消すように
『カンや』
と婆ちゃんが乱入。
『なんじゃ。もうちちくりあっちょるのか?』
『若いのぉ』
そう言って俺とリュウビに少し呆れた様子だ。
『婆ちゃんどうした?』
俺の問いに
『わしは腹が減ったのじゃが、夕飯はどうなるかの?』
とどっかの悪魔のような夕飯の催促だった。
でも、これだけの宿泊所を用意したのだから夕飯も用意してくれるのでは?と俺が考えていると
『カンちゃん!私も!』
と先ほどまでの新婚雰囲気が嘘のように食事を催促する未来の奥さん。
まだまだ残念感が抜けるには時間が掛かりそうである。
『ちょっと聞いてくるよ。もし用意してくれてるなら待たないと悪いしね』
そう言って部屋の外に出ると、俺より少し幼い男の子が俺に気付いて廊下の先から歩いて来る。
多分10歳前後ぐらいで身長は150cm弱。
頭に白い帽子のようなものを被った少年が
『あの…』
『赤頭巾を倒した導士の方ですか?』
少しおどおどしながら俺に話し掛けてきた。
『いや。それは俺の連れのお婆さんだね』
『君はここの人?それとも町の子かな?』
『もしここの人なら誰か大人の人はいないかな?』
俺が少年の質問に端的に答え逆に質問すると
『あっ。失礼しました』
『僕はここの者で、皆様に食事の案内をしに来ました』
と俺の目的を早くも達成してくる。
『そっか。ありがとうね』
『それじゃ案内してくれるかな?』
そう言って俺の部屋で待ってる婆ちゃんとリュウビの元に行くと、部屋に付いて来た少年が婆ちゃんを見るなり
『導士様!』
『お願いですから僕を弟子にしてください!』
そう言って土下座をして頼み込んでいる。
異世界でも土下座は健在でしたか。
でもな…
またもや面倒事の予感が…
次回投稿予定 【9月18日】




