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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第二章
18/84

平凡なチンゲンサイ

其の18






『旦那さま!助けてください』


転移魔法で山賊のアジトから新たに3人を連れ帰った俺の元にシュウソウが文字通り飛んで来た。


シュウソウの後から


『まだ話しが…』


と言いながら自称龍の女性が追いかけて来たが、俺達を見るなり大人しくなってしまう。

それどころか、少し照れたように頬を赤く染めて俺の着物姿を上目遣いで眺めていた。


なんだか妙な感じだ…


『お帰りだったのね』


そう言って俺の隣にシズシズと歩いて来る。


やっぱり妙だった。


何故この性格残念な自称龍はここに来る時もそうだったが俺の隣に?


いまいち状況把握に苦慮していたが


『とりあえず今日は疲れたの。夕飯にでもするかの』


婆ちゃんが言うと


『ハイ!』


大きな声で俺の隣にいた女性が応える。

お腹でも減っていたか?

また腹減ったを繰り返すのが一匹増えたか?


婆ちゃんはそんな女性をチラッと見ただけで、昨日と同じ丸太の辺りに昨日より大きな魔法障壁を張り、連れてきた3人を押し込むと


『あとは任せるでの』


と言いクンヨウを魔法障壁の中に送って家の中に入っていった。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




夕飯を済ませ俺と婆ちゃんとシュウソウは魔法障壁のところに来ていた。


夕飯は俺がさっき森で赤い空飛ぶ鶏を狩ってきて唐揚げを作ったのだが、自称龍の女性が手伝おうとして邪魔ばかりしていた。

料理に関しても残念である。

唐揚げはクンヨウと3人に好評だったが、シュウソウにも好評だった。

雀が鳥の唐揚げを食べるという共食い状態だったが、何か言うとまた生意気なことを言いそうなので普通にスルー。

そして、料理の邪魔をしていた女性は唐揚げを一口食べてビックリした表情で俺を見た後、無言で唐揚げを食べ続け結局1人で半分近くを食べてしまった。


やはり唐揚げは共通言語である。


そんな大食いを披露した女性だが、片付けを率先して始めたのでこの場には不在だ。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




『チンゲンサイじゃな』


婆ちゃんが3人を笑いながら見回す。

夕飯の後、昨夜のように3人の話しを聞いての一言だ。


3人は「チンソウ」「ゲンシン」「サイタン」と名乗り、まさに「チンゲンサイ」トリオである。

しかし異世界にもチンゲン菜があったのには驚いた。

その3人は[ユウ州]の出身で農家の息子と言う共通点だ。「ゲンシン」と「サイタン」は同郷の者で「チンソウ」は別の村の出身だった。

村での生活は僅かな収穫に重い税で困窮しており「赤頭巾」が勢力を広げてからは僅かに残った自分達の食糧を役人が奪うこともしばしばあったらしい。

農家の働き手であった彼等も小さな兄妹達の為、口減らしとして村を出たが行く宛も無いうちに山賊に拾われたと言うことだった。


婆ちゃんが3人を見ながら


『お前さんらも大変じゃったようじゃが、変な世の中じゃのぉ』


と言うと


『各地の村々はどこも似たような有り様です』


クンヨウが呟く。


確かに統治している筈の有力者や帝国から重い税で人々は困窮し、反帝国勢力である「赤頭巾」の方がマシのようにも感じる。


もしかしたら、シュウソウのポンコツ推理にあった魔王もこの辺を利用しているのか?と俺もポンコツ推理をバカには出来ないかと思った時に


『ガッシャン!』

『キャッ』


大きな音が家の中から聞こえるのと同時に小さな悲鳴が…

どうやら後片付けも残念な様子だった。


そんな物音を気にするでもなく


『それでじゃ。この先どうするつもりじゃ?』


婆ちゃんの問いに


『赤頭巾に入るのも一つの案ですが、この際争いが無い南の[ケイ州]にでも行こうかと思います』

『もちろん仙人様のお許しを得られた場合の話しですが…』


クンヨウが婆ちゃんに向き直って今後の身の振り方を話すと


『3人はどうするつもりじゃ』


と「チンゲンサイ」に婆ちゃんが問うが、3人はお互いを見るばかりだった。


その時


『それでは唐揚げを売るのはどうかしら?』


女性の声で提案してきた。

声の主は当然の如く俺の隣に座り笑顔でこちらを見る。


『なるほど。実に良い案だ』


クンヨウが肯定し婆ちゃんに視線を移し


『どうでしょうか?仙人様。この者達と一緒に商売を始めたいと思います』


婆ちゃんに願い出る。


婆ちゃんが3人を見ると


『『『クンヨウさんお願いします』』』


「チンゲンサイ」も乗り気だった。


『そうか。ならばクンヨウや。しっかり3人の面倒を見るのじゃぞ』

『カンや。作り方をクンヨウ達に教えてやれ』


と俺にある意味丸投げ。

どうやら婆ちゃんの許可は下りたようだ。


『しかし何の役にも立たないわけでは無いようじゃの』


そう言って俺の隣に座る女性を婆ちゃんが見ると


『私は龍なのよ!役立たず呼ばわりは殿のお婆様とは言え失礼だわ!』


と性格残念な自称龍の女性は少々ご立腹のご様子…


ん?

殿?

殿って誰?


『龍?龍ってあんな美人なのか?』

『龍って人なの?』


3人は初めて自分を龍だと言い張る女性に混乱している様子だ。

しかし殿って誰なんだ?

俺が隣に座る女性を見ると


『ねっ。殿』


そう言ってニッコリ微笑んだ。


次回投稿予定 【8月17日】

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