平凡に第一村人発見!?
其の11
『旦那さま。誰かこっちに向かって来ます』
煙の方角へと先に飛んで行ってたシュウソウが伝えてきた。
前の世界なら「第一村人発見」てなところだろうが、恐らく面倒事のほうからこっちにやって来たと言った方が正しそうだ。
すぐに面倒事の当人の姿が見え、その当人も俺と婆ちゃんの姿を見付けたようで
『助けてください』
そう言いながら走ってきた。
服は少し破れ、顔にはすすけたような黒い痕がある少女が俺の後ろに回り込み自分が走ってきた方角を怯えた様子で確認する。
少女が怯える理由もすぐにわかった。
少女を追い掛けて来たのは年齢がバラバラな5人の男達だった。
よく視ると全員の腕や頭に赤い布が巻いてある。
男達は俺が子供でもう1人は小さな婆ちゃんだけなのに安心したのか先頭の一番年配風の男が
『その娘をこっちに渡せ』
『ついでに命が惜しかったらお前らの荷物と金目のモノも置いていきな』
と悪役セリフ全開だ!
うわぁ
悪者の言うセリフって異世界でもお約束なんだ。
ちょっとそんな感想を抱いていた横から
『お前さん達は何者じゃ』
『この娘をどうするつもりなんじゃ?』
と婆ちゃんは正義の味方丸出しのセリフで聞き返す。
スッゲェ~!
リアル時代劇のワンシーンにいるみたい。
俺だけ違った方向の興奮状態だったが、婆ちゃんは至って冷静なご様子。
まぁ「The雑魚キャラ」が5人集まったところで仙人の敵ではないだろうし。
『決まってるだろ。俺達、赤頭巾の戦利品だ』
とこれまた下衆な口上。
『お前さん方は赤頭巾なのかね?そうなのかい…』
婆ちゃんは目的の集団に早くも出会って少し拍子抜けでもしたかの様子だ。
『この赤い布を見てわからねえのか!』
5人の後方にいた若い男が頭に巻いた赤い布を指差して吠えた。
『そうか。赤い布が赤頭巾なんじゃな』
婆ちゃんが確認するように全員の赤い布を見回していると
『ええぇい面倒だからまとめて切っちまえ』
と今まで黙っていた中年の男が手に持った片刃の剣を振り上げて叫んだ。
『ひぃっ』
俺の後ろでしがみつきながらその様子を伺っていた娘が小さな悲鳴をあげる。
『大丈夫だから少し下がりな』
俺がニコやかに少女に語りかけると、少女はコクコクと頷きながら後退りを始めた時に男達が一斉に襲い掛かってきた。
「バリバリバリィィ~」
一瞬、雷鳴に似た轟音が響いたと思ったら男達は全員その場に崩れ落ちた。
婆ちゃんの魔法はさすがだ。
轟音で目を閉じていた少女が目を閉じる前との光景の違いに呆気にとられた様子で座り込む。
『カンや。死んではおらんじゃろうから全員の武器を取り上げて縛っておくのじゃ』
そう言って大きな袋から何本かの縄を俺に投げてきた。
『もう大丈夫じゃ。何があったか教えてくれるかの?』
男達の手足を俺が縛っていると婆ちゃんが座り込んだ少女に優しく問いかけた。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
『助けてくれてありがとうございました』
『私はコウといいます』
少しは落ち着いたようでコウと名乗る少女はやっと語り始めた。
コウと名乗る少女は俺より2歳下の10歳でこの先の村娘だった。
コウちゃんの話しによると、今朝突然赤頭巾の集団に村が襲われ、沢山の村人が殺され、コウちゃんの両親もコウちゃんとコウちゃんの兄を逃がす途中で殺されたらしい。
コウちゃんは逃げ惑ううちにお兄さんとはぐれて1人で居るところを5人の男達に見付かりここまで逃げて来た状況だった。
『それは怖かったじゃろ』
そう言ってまだ震えるコウちゃんの背中にそっと寄り添う婆ちゃん。
『それにしても赤頭巾の奴等は酷いな!』
俺が縛りあげてもまだ気を失なったままの男達を睨みながら吐き捨てると
『多分この人達は赤頭巾じゃないかも』
とコウちゃんが小さな声で呟いた。
『えっ?』
『なんでなの?』
俺が聞き返すと
『赤頭巾の人達は元々は普通の村人だった人が多いから村とかを襲ったりはしないと思う』
とコウちゃん的な赤頭巾の印象を答えてくれた。
『だとしたらコイツら何者なんじゃ?』
と言いながら婆ちゃんはツカツカと男達の方に向かい、おもむろに気を失なってる先ほど先頭にいた一番年配風の男の脇腹に蹴りを入れた。
『ムグフゥッ』
どうやら気が付いたらしい。
婆ちゃんはまだ意識がハッキリしない男の前にしゃがむなり男に向かって小さな火の玉を放った。
『アッヴァヴァ』
顔を振って火を消す男に向かって
『やっと気が付いたか?』
睨み込むように男に迫る。
『何しやがる!!』
吐き捨てる男の前にさっきより大きい火の玉を見せ付けて
『威勢だけはまだあるようじゃの』
とまるでヤ○ザのような婆ちゃん。
ちょっと怖い。
そんな婆ちゃんにやっと自分の状況がわかった男は反論など出来なかった。
『やっと話しが出来そうじゃの』
『で?お前さんらは本当に赤頭巾かの?』
と婆ちゃんの言葉に無言のままの男。
『なんじゃ。言葉を忘れたか?』
そう言ってまた火の玉を出すと男は
『赤頭巾じゃない。俺達はお頭の言うまま赤頭巾のフリをしてたんだ』
と慌てて答える男。
お頭?
どうやらコウちゃんの読み通りだったようだ。
どこかのポンコツ推理の雀よりコウちゃんの方がずっと鋭い。
そんな時
『やっぱりでしたか』
今まで何もしないで静観していたポンコツ君が達観したかのように一言。
突然、明後日の方向から喋る雀の登場にコウちゃんと男はビックリした様子だ。
『あぁ。こいつはちょっと変わった雀じゃが気にせんでくれ』
と、ザックリ誤魔化す婆ちゃん。
『で?お頭とはなんじゃ?』
何事も無かったかのように婆ちゃんは男に問いただすと
『俺達は竜谷一帯を根城にする山賊です』
とシュウソウを凝視しながら素直に答える男。
どうやら赤頭巾に成り済まして村を襲った犯人は単なる山賊だったらしい…
その後5人全員が気が付いた頃にはコウちゃんもずいぶん落ち着いた様子でシュウソウとお喋りしている。
シュウソウって悪魔のクセに女の子と仲良くなるの上手いな。
そんな事を考えてると、不意にシュウソウが俺を見て大きく頷いた。
なんなんだこいつは?
『さて。お前さんらをどうするかの?』
婆ちゃんはもう興味が失くなったように冷めた目で男達を見渡すと
『助けてください』
『もう悪さはしません』
『助けてくれるならお宝を差し上げます』
『どうか命だけは』
『ごめんなさい』
とそれぞれに婆ちゃんに反省の言葉を言い始める。
どうする?的な顔で俺を見る婆ちゃんに
『今は殺さないでやろうよ』
と呆れ気味に答え
『お前達を今は殺さないでやる』
『だが、おかしな真似をしたら容赦はしないからな』
と子供の姿の俺が大人達に向かって脅してみせた。
一様にウンウンと頷くので、全員の足を縛っていた縄を放ってやり
『全員ついてこい!』
と男達から奪った剣をかざして未だ煙が上がる方向へ
(やっぱり面倒事だよ…)
心の中でボヤきながら村を目指して歩きだした。
次回投稿予定 【7月9日】




