平凡に一路村へ
其の10
今得られる情報からやはり森を出た方が良いと判断した婆ちゃんは旅支度を始めていた 。
『カンや。忘れ物は気にするでないぞ。転移魔法があるからの』
『大事なのは旅をしているフリなんじゃからの』
そう言いながら、結構な大きさの袋に着替えなどを詰め込んでいる。
着替えこそそんなに必要か?魔法の袋ならもっと荷物も持てるのに…などと考えながら俺は一応の武器になるであろう薪割り用のナタの刃を研ごうとしていた。
『カンや。それは必要無いぞ』
ナタを見た婆ちゃんからの指摘に魔法があるから必要無いと解釈した。
ちなみにタイシジ師匠は婆ちゃんに
『稽古の邪魔して悪かったの。もう大事な稽古の邪魔はせんよ』
と走って帰らされていた。
用が済んだから走って帰れって…
やっぱり婆ちゃんは気分屋の仙人だった。
一応の旅支度を終え明日[ユウ州]にある村に行くことでその日は眠りについた。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
翌朝、一応の旅人風に着替えた俺が庭にいると婆ちゃんが眠そうに一本の棒を持って起きてきた。
『カンや。これをお前にやろう』
そう言って婆ちゃんは手に持っていた棒を俺に渡してくる。
見た目より結構軽いな。
俺の身長(160cm)より少し長い棒は周りに布が巻かれており、材質は木ではなく金属のようだ。
『婆ちゃんありがとう』
とりあえず礼を言う俺に婆ちゃんは棒の説明を始めた。
『その棒は槍じゃ。刃は先端に少ししか無いがの』
確かに先端が少しだけ尖っているようだ。
『材質は白銀鉱じゃ。お前の気功の伝わりも良いじゃろう』
俺用の武器!?
でも刃はちょびっとしかない。
微妙だなぁ…
そんな俺の気持ちを察したかのように婆ちゃんは説明を付け足し始める。
『武器と言っても護身用じゃよ。何かあったらわしの魔法があるしの』
『一応はわしが作った魔道具じゃから大事にせい』
笑顔でそう言うと家の中に行ってしまった。
仙人が作った「魔道具」
ちょっと格好いい響きだ。
俺も以外にチョロいな。
白銀鉱製と言うことはミスリルってやつか。
よく視ると先端の刃の部分の周りに龍のような彫刻が施され見た目にも手が込んでいる。
貴重な金属を使って俺の為に作ってくれた武器だから大事にしないとな。
改めて貰った槍を眺めて俺は心に誓った。
その後支度を終えた婆ちゃんと一緒にシュウソウと転移魔法で[ユウ州]方面に向かったのだった。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
そこは[ユウ州]方面と言っても人里ではなくまだ「北魔の森」の中だった。
『もう少しで森の外じゃ。そしたら街道があるはずじゃからの』
そう言う婆ちゃんの後に続いてしばらく歩くと森を抜けられた。
久しぶりに森以外の景色を見たような…
そこは遠くに国境の山脈が見える草原のような場所だった。
空は抜けるように青く、草原を吹く風はとても気持ちが良い。
心なしか空を飛んでるシュウソウも嬉しそうだった。
あいつ悪魔だよな…
雀を謳歌し過ぎじゃないか?
そんなことを考えながら歩くと、草原の中に道らしいのが見えてきた。
あぁ~
異世界の人々の気配がそこに…
昨日まで面倒とか思っていたのが嘘のような気分で俺は婆ちゃんに続き、一路近くの村を目指し歩いて行った。
婆ちゃんは昨日準備していた旅支度用の大きな袋を俺に持たせて自分は杖を一本持っているだけだった。
杖と言っても普通の木の杖と違うのは見た目から明かだ。
婆ちゃんの身体より少し長い(120cm弱)杖は柄の部分が黒くうねった状態で、先端はまるで蛇がとぐろを巻いたような形状だった。
婆ちゃん曰く、300年程昔に黒檀と言う木から作った魔道具で、魔法威力増幅効果や武器としてもかなり使える自慢の逸品だと無い胸を張って威張っていた。
千歳を超える婆ちゃんがチビッ子のように威張る姿はちょっと可愛いらしい。
しかし、婆ちゃんの杖や俺の槍など、やはり仙人なんだから魔道具を作る腕もかなり優秀なようだ。
今までは普段生活に使う魔道具などは見てきたが、武器にもなる魔道具を作れたりする点を省みても、俺は凄い人に子供の時に拾われて幸運だったと婆ちゃんに感謝の気持ちになった。
『カンや。わしは少し疲れた。おぶらせてやるけど、どうじゃ?』
うわっ。
さっきの感謝の気持ちが不意になる気分屋仙人モード。
『婆ちゃん。まだ全然進んでないよ。もう少しだけ歩いてよ』
俺が婆ちゃんを宥めるように言うと、道の遥か先の方に煙が上がるのが見えた。
のどかな時間って短いんだな…
面倒事の予感である。
次回投稿予定 【7月2日】
今回で第一章は終わりとなります。
ここまで沢山の方に読んで頂きありがとうございました。
物語はなんとなく三国志の世界観に実名、仮名、空想の三国志演義の登場人物を織り混ぜながら試行錯誤を繰り返しております。
読み難い文章もあるかと思いますが、引き続き第二章をお楽しみ頂けましたら幸いです。




