平凡に異世界人生
其の1
横浜…
商売の神様って確か…
昔…三國志の英雄とかだよな。
それにしても髭ながッ。
子供の頃やった歴史シミュレーションゲームでは最強クラスのキャラだったけど、未来の世界では商売の神様ですか…
まっ、色々あって神様に祀り上げられたのだろうけど、本人的にどうなんだろう?
俺なら…
ちょっと迷惑に感じるかなぁ…
とりあえず神様のことより、自分の腹の心配だな。
そんなことをぼんやりと考えながら、昼食を横浜中華街で食べたのは昨日。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
ん~
むむむぅ~
ここ何処?
朝、目が覚めたら知らない森?の中で、なぜか子供…
俺はまだ夢でも見ているのだろうか…
でも、リアル過ぎる景色と森の香りから夢ではなさそうな…
杉山 幹
27歳 会社員 独身。
平凡過ぎる日常と、平凡過ぎる人生を過ごしてきた俺。
履歴書に書ける資格は普通自動車免許。
高校は地元の普通科。
大学は俺が産まれる前に一度出場した正月の駅伝大会が唯一の自慢という三流大学。
三流商社に入社して出世と恋愛には無縁で現在に至る。
そんな普通が取り柄みたいな俺に突然訪れた異変に未だ絶賛混乱中だ。
とりあえず頬をつねってみると
『痛っ』
ベタだけど痛かった。
これが現実だと仮定して、さて裸はダメだよな…
知らない森の中で裸の子供って補導の対象としては充分だけど、このまま交番を探すのも躊躇していた時だった。
『ガサッ』
何かいる。
恐る恐る音のする方を視てみると
『ガサッ』『ガサッガサッ』
動物なのか?
そう思った瞬間。
バァッと何かが飛び込んできた。
咄嗟に腕を身体の前でクロスして防御の体勢をしたが、腕から熱い衝撃が。
腕を見ると幾本かの傷からボタボタと流れる血。
『うあぁぁぁぁ~』
もう何?何?何?
痛い!痛い!痛い!
『グルゥ』
俺に飛び込んできヤツのうめき声で我に返る。
犬!?と言うより狼か?
でも違う。
狼には不似合いなほど長い牙が2本。
ヨダレを垂らした口からはみ出していた。
絶滅したサーベルタイガーってこんなヤツだっか?
しかもデカイ。
未だに絶賛混乱中の俺にサーベルタイガー(大)がまた襲い掛かってきた。
裸の子供(5歳児ぐらい)とサーベルタイガー(大)との対決。
夢か何かは知らないが
『終わった』
俺の人生最後の瞬間…
稲光がサーベルタイガー(大)に落ちた?
イヤ、落ちたのではなく飛んできた。
次の瞬間サーベルタイガー(大)は
『ドサッ』
っと音をたて崩れ落ちた。
あれ?
人生最後の瞬間が…
『なんで裸なんじゃ?』
そんな言葉に我に返った俺は言葉のする方を振り返ると、お婆さんが立っていた。
しかも小さい。
『おぉ~おぉ~派手に怪我して危なかったの』
そんなことを言いながら小さいお婆さんは俺に近づいてきた。
『どこの小僧かのぉ?お前名前は?』
俺が腕の痛みを堪えて小さいお婆さんを見てたら、小さいお婆さんの右手が俺の方にかざされた。
『ピカァ~』
っと俺に向かって光が放たれる。
思わず目を閉じて怯えたように体を小さくする俺に
『ほれ、じっとしておれ』
と小さいお婆さんが言うと腕の痛みが消えたような…
恐る恐る目を開けて腕を見ると、そこにあった傷が無い。
流れた血の痕が幻ではなかったと主張している。
でも、そんな簡単に治るような傷ではなかった筈だ。
『それで小僧の名前は?裸で何しておった?』
『あっうっっ』
絶賛混乱中第2ラウンドの俺は言葉にならない。
『なんじゃ?話せないのか?』
『杉山 幹です』
やっと出た言葉に
『スギヤマミキオ?随分と変わった名前じゃの。ゴゥキンの者じゃないのかの?どこから来た?』
ん?
何やら不思議ワード?
ゴゥキン?
首を傾げる俺。
『ワシの名はチョウ。お前は何でこんな森の中に裸でおるんじゃ?親はどうした?』
どうやら、この小さいチョウと名乗るお婆さんが質問してきた。
身長は俺(推定5歳児)より少し小さく、体型はローブのような服でハッキリしないが、髪は真っ白ながらも艶やかで腰の辺りまで三つ編み。
顔はかなりの美形だったと名残があるが、シワの多さでお婆さん感が増している。
何をどう話せば良いのか未だ絶賛混乱中の俺に、チョウお婆さんはローブの下で腰に巻いていた布のような物を掛けてくれた。
『裸じゃ風邪ひきそうだしな』
そう言ってシワくちゃの顔で俺に微笑む。
『ありがとうございます』
それが俺の異世界人生の始まりだった。
次回掲載予定 【5月30日】