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異世界勇者は何もさせてもらえない。


メインで書いているものがあるのに出来てしまった副産物。

暇つぶしにどうぞよろしくお願いします。

 



 トラックに跳ねられて死んだら異世界転移して居ました、なんていうのはライトノベルの常套句だ。俺は今当にそういう状況に居る訳で、詰まる所異世界チートや知識つええ、ハーレムに興じる運命──ああ困ったな、そんな事望んでなんか無かったのに──。取り繕ってみてもニヤける顔が治らない。にやにや。


 俺を召喚したらしい魔術師っぽいおっさんは、感情を一切感じさせない表情で有頂天の勇者サマにとんでもない爆弾を投げてきた。


「安心しろ、特典とやらは存在しない。知識つえーもハーレムも、そんな事はものは無いから、安心して欲しい」


 はああ!?特典無いの!?ていうか、なんでこのおっさんそんな事知ってるんだ!?ひょっとして、この人も転移「安心しろ、それもない」成る程、このおっさんは「安心しろ」というのが口癖らしい。

 ところで、召喚されてからというもの俺は一言も喋っていないのだが、心が読めているのだろうか?


「私はこれまでに何人も異世界人を召喚してきたからな、異世界人の考える事はだいたい予測がつくようになったのだ。ところで、お前。名は何という?」


「しゃ、しゃきに名前を名乗るのが礼儀にゃ」


 噛んだ。久々に誰かと会話をした所為だ。最後に会話をしたのは、3日前、コンビニ店員に「温めますか」という問いに「ひゃい」答えて以来だ。


「にゃ…?ふん、まあいい。私の名はレイモンド・シッダニパータ。

 お前を呼び出した宮廷魔導師だ。」


 わーいカッコイイ名前!こりゃ間違い無く中世の世界観で魔法ありありエルフドワーフありありパターンですな!


「…お、俺にょ名前は田中竜太、高校生だ。で、…で?何人も召喚したって事は、今この世界はとんでもない世界の危機に陥っているって事だよな?その為に俺達異世界人を召喚したって流れだな。よっしゃ把握した、魔王はこの俺が倒す!引きこもりゲーマーの名を欲しいままにしてきた俺に任せ「別に世界の危機などないぞ」…へ?「魔王もいないぞ」

 ………は???」


 魔導師のレイモンドなんとかのおっさんは、やはり顔色も変えずに無表情だ。オタク特有の一気喋りにも眉一つ動かさず、たった一言二言でそれを制止した。


「………つまり?」


「むっちゃ平和だ」


 ………じゃあなんで呼んだの。

  おっさんの死んだ魚のような目を見ていると、世界は混沌に包まれ崩壊の一途を辿っている気しかしてこないのだが「むっちゃ平和だ」…二度と言われた。

 おっさんのある意味曇り無きまなこには間抜けな俺の顔だけが映っていた。


「………で?」


「うん?」


「いや、俺世界を救う勇者として呼ばれたんじゃ…?」


「まあ、一応」


 何その返答。一応??あ!分かった!手違いで呼んじゃったからお詫びに国が色々支援してくれて悠々自適異世界スローライフ送るパターンかぁ〜〜!!そっか〜〜なんだぁ〜〜それも悪くな〜い………。


「──三百年前、


 おっ、何か語り始めたぞ。


「…未曾有の危機から世界が救われ長く平和が続いているとはいえ、いつ何が起こるか分からない──お前はそのもしもの時の為の保険で、つまり平和の象徴だ。

 まあ、もう千年ほど平和だと予言者が言っているから大丈夫だとは思うが。安心しろ、お前は週に何度か公務を行うのみで贅沢し放題の待遇になるだろうから、安心してこの国で暮らしてもらっていい。ああ、女が欲しければ好きなだけ見繕ってやる。安心しろ。

 鍛錬も頑張らなくていいだろ。安心しろ」



 ……………………へっ?




 そんなん、そんなん、冒険も何も始まらないやないかい!!!!

 贅沢し放題だったら俺が一からやる事も全く無いし!!!

 そんなに安心安心って言われると逆に不安しかないわ!!!!


「まって!?!?公務するだけで悠々自適ライフ!?!?それはなんか違う気がするんだけど!!!!」


「安心しろ、公務とは、国民に笑顔で手を振る、握手をする、お言葉を述べるくらいだ。…ああ、お言葉はこちらで用意する、安心しろ」


「そうじゃなくて!!!」


 だんだんムカついてきた。張り切って呼び出されてやったのに願いが何も無い坊やを目の前にした魔人のランプの気持ちだ。…魔人は坊やと友達になるんだっけか。こんな安心おじさんは友達にはいらん。


「俺、帰っていい?」


 というか、帰せるんだろうか。


「国の決定無くお前を帰すと、私の首が飛ぶ。よって無理だ」


「知るかよ!!俺、嫌だよこんな平和な世界なんて!!!」


「平和が一番」


 おっさん魔導師は、魔法か何かの力で俺の体を浮かし召喚の間から外へ追いやった。動けない。


 そんなデバブ状態の俺はメイド達に体を洗われ(いやん)煌びやかな服を着替えさせられ(どこ触ってんのよ)勇者の玉座(王でも無いのに玉座とはこれ如何に?)に据えられた!


 こうして、お飾りの勇者となったのだった!

 俺たちの戦いはこれからない!!!!

 あばよ!!!!、!!!!!!





『異世界勇者は何もさせてもらえない』


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