ヒカリヘ、4【ヒューマンちょい長】
ねぇ、おりすん。
ゆっくりと駅に向う。重い足取り。明るい街。まだ戻りたくなかった。
おりすんなら、きっとこの気持ちを分かってくれると思ったんだ。
唯一なんてなくて。「なんとなくそれらしいもの」「なんとなくこれが一番理想に近いんじゃないかと思うもの」を探し当てていくだけで、確証なんてなくて。だからこの痛みもきっと、すぐに癒えて、流れていく。いずれ、慣れる。でも今ここにある痛みは、きっと身に覚えがあって、きっとあって、
分かるよね。分かってくれるよね。
おりすんはいつだってうなずいたから。
そのとき電話が鳴った。取り出してみると彼氏からだった。
光るランプ。マナーモードのままだった。しばらく見ていると、やがて鳴り止んだ。少し経って画面が暗くなる。お知らせランプが強い光をもって点滅する。
ねぇ、おりすん。
スマホをバッグに戻す。何故だかもっと寂しくなった。
もっと聞いて欲しいことがあった。もっと話して欲しいことがあった。
ただそれだけだった。今の私は、癒えない。
関係が変わる。ただそれだけのことなのだ。
一対一から、二対一に。奥さんと、成人女性に。「旦那がね」と「彼氏がね」
たったそれだけのこと。
日々入れ替わる細胞。二年経てば身体の中すべての細胞が入れ替わるという。「私」をつなぎとめるのは「名前」と「誰かの記憶」ただそれだけ。なんとも危うく、なんとも不安定なのだろう。けれども、だから人とのつながりを求めざるを得なく、群れをなし、ひいては「人」として生きるすべを全うしているのだろう。種の保存とやらは実によくできている。だから
だから関係が変わろうと、私は彼女を好きでいる。ただそれだけでいいのだ。
そう納得できれば、満足できれば何の問題もない。あるとすれば関係が変わった先で、それでもつながっていたいと思えるか。リアルタイムで、忙しいサイクルの中に彼女を見出せるか。私は
誓うよ。私はきっとこれからもずっと友達でいる。キレイ事じゃなくて、きっと。
彼女に、救われたんだ。