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世界はいい色をしている  作者: 速水詩穂
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ヒカリヘ、3【ヒューマンちょい長】




 気づかなかった。今宵は満月らしい。

 スタバを出ると、もう少し北に向かう。駅は南だが、まだあの明かりに向かう気がしなかった。西を向いた市役所からまっすぐ伸びる道。通称「青葉通り」は、まだ暗いままだ。

 もう少し冬に近づけば毎年恒例のイルミネーションが始まる。青い光一杯に包まれた通りは幻想的で、明るいところを好まない私でもこの光だけは好きになれた。

 目を閉じれば浮かぶ、脳天突き抜ける鮮やかな青。

 仕方がないから近くのLOFTに入る。明かりが苦手でも、鮮やかに浮かんだ青の効果で今はこの程度の明かりだったら享受できる。

 やわらかな橙の光。

 木でできたつくり。階段を上がると奥へと進む。同じ二階でも段差がいくつかあるつくりは珍しい。突き当りまで来てバス用品を見た。

 カラフルな入浴剤、石鹸。桃、黄、緑、水、青、紫。

 どれも刺激のない、やさしい色をしている。リラックスする場所で使うものだから、おのずとそうなるのだろう。

 そのうちひとつを手に取ると、来た道を戻る。途中、以前あった猫足のバスタブがなくなっていることに気づいた。前来たとき値段を聞いたら、困った顔で「三十万以上」と言われた。元々売り物ではなかったのだろう。あるいは全く売れなくて「売り物」として認識している人が、既にここを去ってしまったか。いずれにせよ、相応の処理をされたわけだ。

 寂しくなんかない。

 と言えばうそになる。ぽっかりと開いた穴。静かな風さえ通り抜けて、その側面を冷やしていく。

ごく当たり前のことだ。何も彼女に限った話ではない。今は恨み言を言っている私もいずれ同じ道を歩む。順番の違い、ただそれだけだ。ただ、置いて行かれる立場の方が辛いだけ。ただそれだけなのだ。

会計を終えると外に出る。時刻は七時半をまわったところだった。もうそろそろ人ごみもマシになっている頃だろう。

 通りは相変わらず明るい。さっきよりもまばらになった人影は、それでも赴くがままに光の中へと吸い込まれていく。





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