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世界はいい色をしている  作者: 速水詩穂
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ヒカリヘ、2【ヒューマンちょい長】




 静岡駅からセノバの脇を通る道、そこから一本西へ向う。駅を基点に放射状に突き出た道にはそれぞれ名前がついている。私はにぎやかなパチンコの前を通って呉服通りに顔を出した。すぐ左手にあるスタバ。会いたい友人がいた。

 久しぶりやな。

 ニッと笑うと、八重歯が見えた。くすんだ空色のアイシャドウ。血色のいい唇に、相変わらず青いほどの白い肌。軽くうでを組んで吸うタバコは緑のマルボロ。その薬指に光るヴィヴィアンの指輪。

 ほっとする。警戒心の強い彼女は、心を許した相手以外に目を細めて笑わない。私は席に着くと同時に灰皿を押しやった。

 吸ってもええ?

 いつだってそう聞いた。拒否権は、あるようでない。そんなYESしかない選択肢に、けれども承知の上でここにいるのだから、さぞかし彼女はいい立場なのだろう。

 窓際の席に座ったため、さっきから車のライトが歩行者にさえぎられてチラチラとまぶしい。テールランプだから停車しているのかもしれない。

 友人が、結婚することになってん。

 おりすんはふぅん、と大して興味もなさそうに耳を傾けた。

 いっつも一緒に遊んでて「遊んで」って言っても九割がたずっと話してて。ほんと、ずっと、会う時間いつも五時間ぐらいやねんけどその間中ずっと話してて、残り一割はあたしが寝てて。

 おりすんはふぅん、と大して興味もなさそうに煙をはいた。横を向くあたり、一応気を遣ってくれてはいるらしい。

 勿論うれしいことなんで? おめでたいことなんやけど、分かってんねんけど。

 タバコを灰皿に押し付ける。おりすんは笑みを消した。

 けど、おもんないねやろ?

 私は顔上げると、肘を突いた。大きく息をつく。

 せやねん。


 もはや体裁ですわ。とんだ茶番ですわ。

 こういう場合はこうするっていうマニュアルがきっとあって、別に直接学んでいなくてもそれは自然と身につく。

 勘ってやつですわ。コミュニケーションなくして生きていけない生き物の、悲しい、悲しい性ですわ。

 幸せやねん。彼女は。普通、おめでとうやろ。ってかそれ以外言いようがないやろ。

 拒否権は、あるようでない。

 そう思うんなら言うたらええやん。とおりすんがあごを上げた。私はいやだ、とこたえた。

 かおりさんはまぶしい。自分は彼女の傍にいるべきではないと感じる。

ただ、臆病なのだ。





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