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世界はいい色をしている  作者: 速水詩穂
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ヒカリヘ、1【ヒューマンちょい長】


 ヒカリヘ



 例えば

 なかなか思うように会えなくなったとしても

 そうして距離ができたとしても

 それでもずっと、友達だよ。


「寂しい」とは「本来あるはずのものがない物悲しさ」のことを言うらしい。それは一方的で、己の主観のみで完了する不満。幼子がぐずるような胸のうちに、まさかイチイチ耳を傾ける社会なんてない。

〈結婚するんです〉

 かすかに残っていた夕日が完全に身を潜める。信号がはっきりと赤に変わる。

 午後五時四十五分。いつの間にか短くなっていた日。色を変えつつあるであろう街路樹の輪郭がゆさゆさと揺れる。目の端を横切っていく人の影は皆一様。たくさんの人の中で、私は今一人ぼっちだ。

 信号が青に変わった。うつむいていても分かった。

 それほど闇が深かった。光を「鋭い」と感じるほどだった。


 かおりさんはニコニコしていた。いつだって穏やかで、協調性はあるのに変なとこ大胆で。だからどこか危なっかしくて。ふと思い出して笑ってしまうような個性だった。

 恋について。仕事について。家族について話す中で、約二時間「毛の話」について盛り上がったのは二人だけの秘密だ。

 思えば休むために彼女の傍にいた。どこまでもやさしい橙の夕日に包まれて、うとうとと昼寝をすることもあった。決して長くはない会う時間に、けれども代えがたい密度を見出していた。

「疲れていたんですね」

 目が覚めると彼女がいた。眠りにつく前と同じ姿勢で、ずうずうしい友人を前に微笑んだ。






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