3/29
青【ヒューマン超短編】
青
「はい、じゃあその子のイメージに合う色を書いて、机の上に置いてあげてね」
図工の授業。色の個性について延々話していた先生は、そう言って手をたたくと、私たちを立ち上がらせた。
くるりと教室を一周して、時間をつぶして戻ってくる。途中、隣の席の子の机の上に「赤」や「オレンジ」と書かれた紙を見た。いわゆる「誰にでも好かれる」「人気者」だ。
席に着く。全部見るまでもない。
私は目の端をかすめた寒色に、心臓がきゅっと縮むのを感じる。
そのときだ。目の前に影が落ちて、見上げる。そこには、うれしそうに頬を緩めている隣の席の子がいた。
「青だね」
まるで指差されて言われたかのようだ。心の真ん中に、くさりと刺さる。
生きている場所が違うのだ。くったくなく愛想を振りまけるあんたとは違うんだ。
「海の色だね」
だから何。
その子はにっこり笑うと、「青」と書かれた紙を指差した。
「本当はあったかいんだよね」