おくりもの【詩】
君に一輪の花を贈ろう。
冬でも決して枯れることのない、深緑の葉をもった花を贈ろう。
どんな風にも負けることのない、強い根をはった花を贈ろう。
けれども誰にも望まれることのなかった花を贈ろう。
君に花びらのないこの花を贈ろう。
君に一足の靴を贈ろう。
風よりも早く走ることのできる靴を贈ろう。
泥がはねても汚れることのない靴を贈ろう。
けれども一足のうち、片方だけを贈ろう。
君に探してもらうために、この靴を贈ろう。
君にひとつの時計を贈ろう。
決してとまることのない時計を贈ろう。
ぶつけても壊れることのない時計を贈ろう。
けれども常に十分進んでいる時計を贈ろう。
君が時間に追われることのないようにこの時計を贈ろう。
君に一台の携帯を贈ろう。
充電する必要のない携帯を贈ろう。
トンネルでも山奥でも電波の届く携帯を贈ろう。
けれども電話しかできない携帯を贈ろう。
君が悩みを溜め込むことのないようにこの携帯を贈ろう。
君にひとつの目薬を贈ろう。
コンタクトをしていても使うことのできる目薬を贈ろう。
使ったその時だけ、この文章が「普通」の基準になる目薬を贈ろう。
けれども合う人と合わない人が出てしまう目薬を贈ろう。
君が「合う人」であるよう願って、この目薬を贈ろう。
君に一台のテレビを贈ろう。
実物よりもずっと美しく映るテレビを贈ろう。
全国すべての番組を見られるテレビを贈ろう。
けれどもリモコンのついていないテレビを贈ろう。
君が便利さだけを追求することのないようにこのテレビを贈ろう。
君に一枚の鏡を贈ろう。
汚れの付着することのない鏡を贈ろう。
いつでも笑顔だけを映し出す鏡を贈ろう。
けれどももろく、壊れやすい鏡を贈ろう。
君が己を大切にするために、この鏡を送ろう。
君に一冊の本を贈ろう。
読むたびに内容の変わる本を贈ろう。
美しい挿絵のついた本を贈ろう。
けれども結末のない本を贈ろう。
君に創造してもらうためにこの本を贈ろう。
君にひとつの夢を贈ろう。
朝まで絶対覚めることのない夢を贈ろう。
その日の疲れを癒してくれる夢を贈ろう。
けれども見たい、と望むことのない夢を贈ろう。
君に現実が一番と思わせることのできるこの夢を贈ろう。
君にひとつの祈りを贈ろう。
今日この瞬間が楽しいと思えるように祈りを贈ろう。
明日、きっと明るい未来が待っているように祈りを贈ろう。
けれども何が変わるわけでもない祈りを贈ろう。
君に終わることのないこの祈りを贈ろう。
君にいくつかの問いを贈ろう。
最初に贈った花は気に入ったかい。
二番目に贈った靴のもう片方は見つかったかい。
三番目に贈った時計はなじんだかい。
四番目に贈った携帯は機能しているかい。
五番目に贈った目薬は今でも使っているかい。
六番目に贈ったテレビは受け入れられたかい。
七番目に贈った鏡は無傷で済んでいるかい。
八番目に贈った本の続きは考えてみたかい。
九番目に贈った夢には慣れたかい。
最後に贈った祈りは通じたかい。
君に少しでも影響できるよう、問いに添えてこの詩を贈ろう。