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第二章・中編

ルーナが

消えた

雪の日から


もうすぐ

ひと月になる。



オレたちは

手分けをして


ルーナの

痕跡を探した。



しかし


『可能な限りの転移先』を

シラミ潰しに探したが


ルーナは

どこにも

見つからなかった。




「「ちょっとカミュ!」」



ミリアと

サリアが

声を揃えて


オレの前に

立ち塞がる。



「・・・・・・なんだ」


「『なんだ』じゃないわよ!」



相変わらず

ミリアはウルサイ。



「『ウルサイ』じゃないでしょ!」



・・・オレは

口に出していないが。



「顔を見れば分かるわよ!」


「・・・ルーナを探してて気付いたのですが」



ミリアでは

話が進まないと


セリアが

話し役を交代した。



周りで

思い思いに

過ごしていた

仲間たちも


聞き耳を

立てている。



「ルーナの事だから、手掛かりを探して先に進んでいる可能性があるのではないでしょうか?」


「いや。それならユルグの『探索サーチ魔法』で引っかかってるハズだ」


「チッチッチッ。甘いわね」



バムの言葉に

ミリアは

立てた人差し指を

左右に振った。



「よく考えて。ルーナと一緒に『遺石』も消えているのよ」


「『遺石』なら、ありとあらゆる魔法から『ルーナを隠すことが出来る』と思いませんか?」



確かに

『賢者の遺石』だ。


不可能ではないだろう。



では

この地(ノースエリア)から

次に向かうのは・・・



「砂漠の『サウスエリア』!」



オレたちは

素早く

身支度を整え



サウスエリアに

一番近い

『ドルテ』という町に転移した。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





オレたちは

ドルテで

馬車を買い


サウスエリア側の

最初の町

『エルクリム』に

たどり着いた。



「交易の町』というだけあって

様々な国から

人が集まっている。



オレたちは

怪しまれないよう


そして

『おのぼりさん』に見られないよう

周囲に注意を払いながら

ルーナを探した。



「馬車も置ける宿なら反対側の門の方がいいぜ」


馬車から

周囲の様子を見ていたオレたちに

声をかけてきた衛兵に礼を言う。


衛兵には不審がられたが

『馬車を置ける宿屋』を探していると

セリアが話すと

衛兵は納得した様子で宿を教えてくれた。


こちらの門には

乗合馬車でドルテからやってきた

旅人を対象にした宿屋が多いらしい。



オレたちは

ひとまず宿を取ってから

調査に出ることにした。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -




『銀の星』という宿屋で

オレたちは数日泊まることにした。



「この町は賑やかだね〜」


オレは近くの酒場で

情報を集めることにした。



本音は

ルーナを探しに行きたい。


しかし

新しい地域の情勢を知るのも

『トラブル回避』に必要だ。



逆に

ルーナが

トラブルに巻き込まれている可能性もある。



「お前さん、どこから来たのかい」


「ああ。ドルテからだ」


「乗合かい?」


「いや。古い型だが幌付き馬車さ」


「この先は陽が強いからな。幌付きじゃないと途中でくたばるだけさ」



気のいい商人は

ビールを一杯奢ると

色々な情報を気前よく出してくれた。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





「この先にある町で『聖杯』が盗まれた?」



情報を仕入れたオレは

宿屋で仲間たちと合流して

情報の『すり合わせ』を始めた。



「ああ。ここから3つほど先の『エンカム』という町だ」


「そんなところに『聖杯』?」


「正確には『神殿から王都へ極秘裏に運ばれていた聖杯が盗まれた翌日に戻ってきた』らしい」


「・・・何よそれ」



確かに

普通の人なら

ミリアと同じ反応を示すだろう。



だが



「それってルーナの仕業よね?」


そう。

『聖杯を捧げよ』だ。



ユルグが

探索サーチ魔法を使ったが


「エンカムにルーナの気配はない」


と残念そうに話してた。



しかし

オレたちは

ルーナと共にある『遺石』が

ルーナの存在を隠している

可能性を信じている。



「じゃあ、次は」



『聖櫃に捧げよ』



つまり

聖杯が

いつも安置されている神殿に

聖櫃もあると思われる。



それでも

『エンカム』に寄って

神殿に関する情報を

集めて行こう。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





エルクリムで集めた情報に

ルーナ自身に関するものは

一つも見つからなかった。



ルーナは必ず

この町に寄っているはずだ。



それでも

ルーナを見かけた人は

誰一人いなかった。




「ヘンよ!絶対ヘン!」


「落ち着いて。ミリア」



またミリアが騒いでる。


「だってヘンだと思わない?」


「そうね。『甘いものが大好き』なルーナが、この町でどこにも寄っていないなんて」



・・・確かにヘンだ。



ミリアとセリアは

ルーナに

いつも

デザートをひと口あげては

満面の笑みで

「ありがとう〜」と言われて喜んでいる。



ルーナを

大の『甘いもの好き』にした

コイツらは


『スイーツショップ全制覇』

するついでに

聞き込みをしてきていた。


そのどの店にも

ルーナらしき姿を見た者がいないらしい。




「ルーナが姿を変えているとしたら・・・」



「やっぱり、そこに考えが至るな」



オレの言葉にバムとログが頷く。




「明日は男女関係なく、一人旅をしている奴の目撃情報を集めるか」



オレの提案に

全員が頷いた。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





オレたちは

一日かけて

様々な情報を集めていた。



「そろそろ『次の町』に移動した方がいいかもね」



確かに。


連日情報集めをしているオレたちを

不審がる連中も現れた。



『聖櫃』や『聖杯』の話は

先日の『聖杯事件』があったため

どことなく忌避されている。



この宿は

明日の朝まで

前払いしてある。



「明日の朝、出立しよう」



そうと決まれば

情報のすり合わせは

明日の馬車の中でするとして

今は旅の支度を優先しよう。





この日

神殿の聖櫃に接触した者がいた事を

オレたちは後に知ることとなる。




- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





エルクリムの隣の小さな村で

昼休憩を取った。



移動する馬車の中で

オレたちは

昨日集めた情報のすり合わせをしていた。



一人

気になる子供がいた。



その子は

昨年起きた内乱の『戦災孤児』らしい。



確かに

エルクリムでは

孤児を多く見かけたが

オレたちは

大きな街でよく見かける

『スラムの子』だと思って

深く考えてはいなかった。



その戦災孤児は

家族を探して回り


雑用をしては小銭を稼いで

エルクリムに流れ着いた半月後に

乗合馬車に乗って行ったらしい。



その乗合馬車の経路に

『エンカム』があった。




「その子なんだけど」


スイーツショップの

皿洗いをしていたが


その店の賄いは

スイーツだったらしい。




確かに

その子がルーナなら

ありえるだろう。



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二日かけて

オレたちは『エンカム』に着いた。



そのエンカムから先は

街道が岩崩れを起こしたとかで

先に進めなくなって


たくさんの人たちが

足止めを余儀なくされていた。



もちろん

宿屋にも空きはなかった。



驚いたことに

半月以上前に出立した乗合馬車も

王都に向かってた『聖杯』も

この町で足止めされていた。



「情報集めついでに『例の子供の情報」も集めるか」




ログを馬車番で残し

オレたちは情報を集めに向かった。




- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





「カミュ・・・どうやら『聖櫃』も『使用済み』みたいね」


「そっちも同じ情報か」


「来るのが遅かったか」



確かに

『聖櫃に接触した者』の話は

3日前の事だ。



ただ

目撃者の話だと

後ろの人がつまづいて転んでしまい


最前列で見てた人が

聖櫃側に倒れて

手が触れた


『本当の事故』だったそうだ。



その日はそのまま

『聖櫃の公開は中止』となったらしい。



「でも、その日から聖櫃の公開はされていないそうよ」



一度神殿に向かった方がいいだろう。



「神殿に『聖櫃』があるみたい。見てみたいわ」


「このままここにいても『足止め』でヒマなんだもん。「ねー」」



ミリアとセリアの会話は

神殿へ馬車を向ける口実として

有効だろう。



足止めの暇つぶしに

神殿へ向かうのは

オレたちだけではないらしい。



神殿へ続く道は

徒歩の旅人や馬車が

行き交っていた。



オレたちは

その中に戦災孤児を探したが

如何いかんせん

肝心の子供の容姿が分からず

徒労に終わった。






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