第四章・後編
「久しぶりね」
「ああ。お前らは元気そうだな」
ミリアは
目の前に立つ
『かつて愛した男』を見る。
彼は
変わらず『イイ男』だ。
「ルーナは?」
「相変わらず。だ」
セリアと
淡々と会話をする
カレに
どうしても
『聞きたいこと』があった。
「・・・なぜ。あの時、急に『いなくなった』の?」
「ちょっと。ミリア」
あの時・・・
いつも通りに出掛けた
カミュとルーナ。
二人は
二度と帰ってこなかった。
「ずっと・・・待ってたのよ?」
「ああ。それに関しては悪かった」
あの時
いつものように
『ふるさと』に寄った。
その時
ルーナは
『精神的な疲れ』が
溜まっていたのか
倒れてしまった。
「それは『ユルグ』に関係してるの?」
「・・・聞いたのか?」
「ユルグ本人からね」
「そうか」
ユルグの
探索魔法で
『ルーナの里』が
見つかった。
ユルグの弟が
『第一騎士団』に
いた。
『弟に手柄をたてさせたい』
そんな
理由から
手を貸したのだった。
結果
ユルグの弟は
ルーナを
殺そうとした。
ルーナは
魔法を
暴走させて
ユルグの弟を
たくさんの
兵士たちを
死なせてしまった。
ルーナは
『そのこと』に
『気付いてしまった』のだ。
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「わたしが!わたしが殺したの!」
いつもの様に
魘されて
目を覚ました
ルーナ。
しかし
『いつも』と
違った。
『あの日』
ルーナが
殺されかけた日
ルーナは
『使ってはいけない』と
言われていた
魔法を
使ってしまった。
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「ルーナのせいではない」
カミュは
何度も
そう言っては
ルーナを慰めた。
しかし
ルーナは
みんなを
殺した人と
『同じことをした』
そう
泣き叫んでいた。
そんな
ルーナを
連れて
ユルグの前に
戻るなんて
ムリだった。
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カミュの言葉に
セリアと
ミリアは
顔を青ざめた。
「今はもう落ち着いた」
カミュの言葉は
二人を
安心させるに
至らなかった。
二人が
いなくなって
3年。
その間
ルーナは
ずっと
『苦しんでいた』
のだろう。
「じゃあ。元気でな」
カミュは
指輪の魔法を使って
目の前から
転移していった。
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「ただいま」
セリアと
ミリアは
重い気持ちで
『家』に帰った。
「おかえり」
中央の
共同リビングから
オラフが
顔を出す。
しかし
暗い顔をした
二人を見て
難しい表情になる。
「何が・・・?」
口を開きかけた
オラフを
セリアは
腕を掴んで
『自宅』になる
建物の右側へ
連れていく。
入れ違いに
左側の
リビングから
ユルグが
顔を出した。
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今は
『自身の夫』となった
ユルグ。
彼の過去は
カミュたちが
帰らなくなって
数日後に
初めて
聞かされた。
カミュは
知っている
そう
言っていた。
オラフには
『懺悔』のつもりで
話したそうで
オラフも
知っていた。
ユルグは
長い間
ルーナの姿を
見ては
苦しんできた。
いま
思い返せば
ルーナも
気付いていた
と思う。
カミュの話だと
遅かれ早かれ
『いなくなる』
予定だったらしい。
もう
十分だろう。
戻らない
『過去』を嘆くのは・・・