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第四章・中編



「ルーナ。その指輪どうしたの?」


「そんな指輪、してなかったよね?」



ルーナの

右手中指には


ミリアとセリアから

指摘された指輪。




「これ?・・・ずっと持ってたよ」



ただ

指輪が大きくて


カミュの

アイテムボックスに

入れてもらっていたが。



「カミュも、似た指輪をはめていますね」


「もしかして『ペアリング』ですか?」



珍しく

オラフとユルグが

興味を持ち出した。






「ん?ルーナ?」


何があった?




ログやバムと共に

少し離れた場所から

水を汲んできた

カミュが


ルーナの様子に

いち早く気付いた。



「ちょっと指輪のことを聞いただけなんだけど・・・」


セリアの言葉に

カミュは

「ああ」と納得する。



「ルーナ」


カミュは

ルーナを抱きしめて額にキスを落とす。



「ちょっと出掛けてくる」



カミュは

いつものように

ルーナを抱き上げて


今来た道を戻っていった。






「ルーナは、両親のことを思い出したのか?」



カミュは

小川のそばにラグを敷き

その上にルーナを抱えたまま座る。



俯いたまま

無言で頷くルーナ。



カミュが右手を突き出すと

ルーナと同じ

右手中指にはめた指輪が光り

二人の周りを結界が覆う。



「ルーナ。もう泣いていい」


ガマンするな。




カミュが

強く抱きしめて

頭を撫でて

背中を軽く叩く。



「ふぇ・・・」



それを合図に

ルーナから

大粒の涙がこぼれ出す。



「パパァ・・・ママァ・・・」



ルーナは

カミュにしがみつき

声を上げて泣きじゃくる。



カミュは

ルーナが落ち着くまで

強く抱きしめていた。





ルーナの

泣き声が弱くなると


カミュの

はめた指輪が

青白く光り


睡眠スリープ魔法が発動して

ルーナは眠りについた。




「おやすみ。ルーナ」




ルーナの目に

回復魔法をかけてから

結界を解除する。



周りに

心配そうにルーナを見つめる

仲間たちがいた。



結界は

外から中が見られないが

中から外の様子も分からない。




「ルーナなら寝ているだけだ」



そう言って

ルーナを抱き上げて

立ち上がる。


セリアがラグをはたいて

持ってくる。



今日の野営地に戻ると


馬車の中に

セリアが持ってきたラグを敷いて

その上にルーナを寝かせる。



カミュが右手を伸ばすと

指輪が光り

ルーナを結界が覆った。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -






指輪は

ルーナの両親のものだった。



村人は

野ざらしで

すでに骨となっていたが


全員を一ヶ所に埋葬することにした。




それは

『ルーナのため』でもあった。




ルーナの両親を

運ぼうとした時に

二人の指輪を見つけた。


ルーナの指には

大きすぎた形見の指輪。



ヒモを通して

首からかけさせようとしたが


「無くしちゃうのイヤ」


とルーナが言い出したため

カミュがアイテムボックスに入れていた。



その頃はまだ

どこにでもある

『木彫りの指輪』だった。



ルーナは

その後も

何度か取り出しては

両親を思い出していたが


先日出した時に

『聖石の欠片』がめられていた。



ルーナが

母親の指輪に指を通すと


大きかった指輪が

指に合わせて小さくなった。



ルーナに促されて

父親の指輪に

カミュが指を通すと


ルーナの時同様

指に合わせて小さくなった。




指輪には

探索サーチ魔法解除』や


『生活魔法』から

『高等魔法』を含めた


『この世のありとあらゆる魔法』が

使えるようになっていた。



そして

『隠れ里独特の結界』が

張れるようにもなっていた。





「何よそれ!」



「『偉大な魔法使いの木』で作られた指輪だからだろ」



カミュの言葉に

みんなが納得する。



伝説の賢者が

際限のない魔力をぎ込んで


自身の死後も

『隠れ里』に結界を張り

人々を守り続けられるように願った


『偉大な魔法使いの木』



その木から作られた指輪なら

『賢者が使っていた魔法』を

秘めていても

おかしくはない。



「ああ。ですからユルグが探索サーチ魔法を使っても、お二人の居場所が分からなかったんですね」



オラフが

納得したように呟く。




それはまだいい。

我慢しよう。




問題は

続いて言った


ミリアのセリフ



「だからといって、寝る時まで結界張らなくてもいいでしょ!」




・・・・・・覗くな!






結界を張るのは

ルーナのためである。



今でも夢でうなされる

ルーナの

苦しむ姿を

周りに見られたくない。





とくに

ユルグには・・・




- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





魔力に

『底』が出来たことで


成長を

抑える必要が無くなり


少しずつ

成長するのではと思われていた。




なのに




「全然、おっきくならな〜い!」



なんで?

どして?





今日もまた


途中で体力が切れて

カミュに抱えられている。




「んむぅ・・・」



「眠いんだろ?ガマンしないで寝てろ」



「むー・・・。眠くない」



「ムリするな」



「・・・してないもん」



「ハイハイ」



カミュに

一定のリズムで

背中を軽く叩かれて

目蓋まぶたが落ちてくる。








「どう?ルーナ眠った?」



「ああ」



カミュが

寝かしつけると


あっという間に

寝息をたてて

眠っているルーナ。




「最近のルーナは、無理をしてでも起きていようとしますね」



オラフが

ルーナの頭を撫でる。



「誰かさんたちが『夜更かしは大人の特権』っていうから」



「「スマン」」





そうなのだ。



最近のルーナは


目をこすりながら

少しでも長く起きていようと

頑張っている。



それは

日中の体力を

大幅に減らしてしまっている。




・・・逆効果なのだ。





「ルーナは、早く大きくなりたがっているからなぁ」



ユルグの言葉に

カミュは思い当たることがあった。

あれは里にある『ヒカリゴケの洞窟』の中でのことだ。







「カミュ。コーヒーって美味しいの?」



いつものように

『ハチミツ入りホットミルク』

を飲んでいた

ルーナ。




「ルーナにはまだムリだろ」



「ヤ。飲みたい」



なんでも『試してみたい』

ルーナには

止めても逆効果なのは分かっている。



「じゃあ、ひと口だけな」



「わーい!」と喜んで

ひと口飲んだ

ルーナ。



「にっがーい!」



「だから言っただろ」



「エーン。口の中がにがいよー」




涙を浮かべて

カミュの首にしがみつくルーナ。



ルーナの身体を

そのままの状態で支えて

ルーナのマグをとる。




「ホラ。これを飲んでろ」




ルーナを

自身のヒザに乗せて


マグを手渡す。



一気に

半分まで飲み干して

カミュを見上げる



「にがかったよー」



「ちゃんと人の言うことを聞かないから」



「だって・・・『コーヒーは大人の飲み物だ』ってログとバムが」




またアイツらか。




「そんなに急いで『大人』になる必要はないだろ」




その言葉に膨れるルーナ。

ルーナは気付いていないのだろう。

少しずつ、確実に大きくなっている事に。




「そんなに『大人』になりたいか?」



「うん!」



「よし」と言って

ルーナを

ヒザからラグに下ろす。



「『大人』なら一人で座らないとなー」


抱っこもダメだし

夜も一人で寝るんだぞー。




「やだー!ルーナ、まだ『子供』だもん!」



カミュにしがみついて

グズり出すルーナ。




ルーナが

『大人』になれるのは

まだ先のようだ。







もちろん

ログとバムには




しっかり『お話し』をして



二度と『大人』の話は

させない約束をさせた。





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