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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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第47回帝国議会<3>

皇紀2583年(1923年)12月12日 帝都東京


「議長、参考人答弁の許可を……有坂重工業の有坂総一郎氏と満鉄理事の島安次郎氏に答弁願います」


 総一郎と島がこの場にいるのは理由がある。


 原敬総理大臣と後藤新平内務大臣の和解を演出した総一郎であったが、総一郎はその後、広軌派を政事の表舞台へ引き戻すべく暗躍していた。元鉄道院総裁でもあり、筑豊本線の前身である筑豊鉄道の社長をしていた仙石貢を担ぎ出すこととしたのだ。


 仙石を担ぎ出すこととした総一郎は島に連絡を取り、大連で建造中だった新型機関車を仙石に見せることとし、彼を大連に送り込み島の説得で広軌派の旗頭とすることに成功したのだ。


 仙石は島の計らいで最終艤装状態だった新型機関車の完成、試運転まで大連に逗留し、新型機関車の高速運転を実際に目にすることとなった。この時、彼はあまりの高速運転に狂喜乱舞したそうだ。


 試運転列車が長春に到着し、ホームに降り立ったその時、仙石は島とともに広軌派の再結集のために尽力することを約し、同時に更なる高速運転が可能な機関車の開発が可能かと尋ねた。


「その為の広軌であり、新型機関車です」


 島の言葉に仙石は大きくうなずいた。


 それは総一郎が大連へと出向くことの1週間前の出来事だった。


 そして3ヶ月……。関東大震災という未曽有の災害に見舞われたことで震災復興というまたとないチャンスを利用して改軌計画は水面下で進んでいた。


 具体的なスケジュールと予算規模が確定した段階で総理である原へ示され、その数字に驚きとともに満足出来る内容であると原が頷いたことから内閣改造が行われたのである。


 話を議会へ戻そう。


 粕谷義三衆議院議長は事前の根回しの通りに仙石の参考人答弁を認めた。


「参考人、島安次郎君……答弁願います」


 島は本会議場の壇上に登り、一礼すると事前の打ち合わせ通りに答弁を開始した。


「犬養議員の御懸念に答弁させていただきます」


 犬養は胡散臭そうに壇上の島を睨む。


「我が満鉄は先日……震災前にとある新型機関車の開発に成功しました……残念ながら此度の震災で大々的に公表出来ておりませんが、この機会に公表させていただきます。ハドイ形蒸気機関車と呼称する本機は最高速度160km、運転速度140kmを誇り、現時点では世界最高水準の機関車と言えます……」


 議場は騒然とする。誰もがそんな機関車の存在を知らない。そして、現実に存在し、既に満鉄が実用化しているという……仙石の寝言戯言だと思っていたものがそこにある。


「議長、先程御覧になって頂いたパンフレットを議員諸氏にもご覧いただきたいのですが、配布してもよろしいでしょうか?」


「島安次郎君、配布を許可します」


 島は議場出入り口に配置されている警備員に合図を出すとすぐにパンフレットが議場に運び込まれてきた。全議員の手に届くまで数分かかったが行き渡った。


「これは!」


「なんということだ!」


「斯様なものが……」


「満鉄は恐ろしいものを開発したな……」


 議員はフルカラーで印刷されたパンフレットに見入っていた。言葉ではなく、文字で、具体的数字で新型機関車牽引の列車と従来列車の比較をされているものを見せつけられた議員たちはこれが夢物語ではないと感じた様だ。


「如何でしょうか、言葉では伝わらないことがあるのでパンフレットにて紹介させていただきましたが……時代は変わったのです……これが我が満鉄の技術力であるとともに、広軌の優位性を示すものであります。狭軌では現時点では達成することが出来ない技術的問題を広軌に改軌するだけで達成出来るのです……また、高速で運転出来るというだけでなく、車両の安定性や乗り心地も雲泥の差があります……私の答弁は以上で終わらせていただきます」


 島は議長に一礼すると壇上から降りて参考人席へ戻っていった。


 仙石の答弁を邪魔した犬養の顔には悔しさが滲んでいた。

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