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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2597年(1937年)

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ハルゼー、一杯食わされる

皇紀2597年(1937年)3月31日 舟山諸島東方沖 ハルゼー艦隊


「閣下、予定通りに艦載機を発艦、海兵遠征軍司令部からもたらされた情報に基づいて空爆がもうじき行われます」


「大変結構。海賊の巣窟を徹底して破壊し尽くすように反復攻撃すべきだろう。第二次攻撃隊も準備が出来次第発艦させるように」


「アイサー」


 戦艦ニュー・メキシコの艦橋は慌ただしくスタッフが動き回っている。というのも、上海の海兵遠征軍司令部からもたらされた情報によって海賊の拠点が判明したため、予定外の艦載機攻撃を要請され、艦隊司令官ウィリアム・ハルゼー・ジュニア中将がこれを承諾し急ぎ攻撃命令を発したのである。


 元々対地攻撃準備は整えられていたためすぐさま発艦が行われ、海兵遠征軍司令部によってもたらされた攻撃地点へと艦載機が飛び立っていた。


 この艦載機群が向かうのはまさしく海賊の根拠地であったが、尚旭東によるタレコミによるものである。証拠隠滅を敵の手によって手伝わせようというのだから大胆不敵というかずる賢いと言うべきだろうか。


「予定外のスケジュールが入ったが、行きがけの駄賃だと思えばそれほど悪いものではない。だが、タイミングが妙である様にも思える。釣りだそうとしている我々が釣りだされていると可能性もなくはないだろうか」


 ハルゼーの危惧は当たっていた。しかし、それはお互い様であると言うべきだろう。お互いに策を弄して相手を出し抜こうとしているのだから。


「まさか、そのようなことはあり得ません」


「ほぅ、なぜそう思う?」


「我々は事前に海兵遠征軍司令部だけでなくアジア艦隊司令部にも行動を知らせていません。よって、我々の行動は我々だけしか知り得ません。無論、航行予定情報はあえて平文で打電しましたが、それは撒き餌であり、実際の航路は異なっているのですから」


 ハルゼーは幕僚の言葉に頷く。


「確かに君の言う通りだ。我々の行動は我々しか知り得ない。だが、我々以外の行動についてはどうだね?」


「と、申しますと?」


「例えば、アレの積み荷が何か考えてみ給え。銀塊だ。だからこそ、我々はアレが逃げ遅れる格好になるように演出したのだ。そして、アレの取引相手は青幇である。つまり、連中も積み荷を知っているわけだ」


「ええ、閣下の仰る通りですが」


「我々の行動は知らなくても、アレの動きは想定出来るわけだ。だからこそ、我々の動きを把握するためにタレコミによって艦載機を発艦させたとは考えられないか?」


「つまり、我々は艦載機を飛ばしたことで自分の位置を教えたということになると?」


「まぁ、そういうことだな。少なくとも飛んできた方向に我々がいると言うことくらいは連中に教えたことにはなるだろう。そして艦載機が飛んでくるまでの時間を計算すればおおよその距離くらいは把握出来るだろうさ」


 ハルゼーはそう言うと肩を竦める。一杯食わされたと言わんばかりの表情だ。


「では、攻撃隊に中止命令を・・・・・・」


「もう手遅れだな。今頃空爆が行われている頃――」


「閣下、攻撃隊から入電、第二次攻撃の要ありとのことです」


「――だろう?」


 お手上げのポーズでハルゼーは言葉をつなぎ幕僚たちも頷くしかない。


「さて、そういうことだ。始めた以上はやらねばならん。第二次攻撃隊は南寄りのコースを通って欺瞞工作をするくらいしか今は打つ手がない。第一次攻撃隊の帰還コースも燃料に余裕があるなら欺瞞コースを取らせ給え」


「閣下、水偵による偵察は――」


「無論、行う。ただし、海賊どもに発見されぬように気をつけるように厳命せよ」

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