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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2597年(1937年)

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空母っぽい何かの誕生秘話

戦前戦中にアメリカ合衆国という奴は戦艦ヒラヌマ、空母リュウカク、超巡チチブ、駆逐艦涼風20型とか謎の物体を創造しているのだけれど、数枚の不鮮明な写真がどこまで発展するのかと思って読んでくれると彼等の間違った方向の情熱で何かをでっち上げるそれを理解出来る・・・・・・かも知れない。

皇紀2597年(1937年)2月21日 アメリカ合衆国


 海のものとも山のものともつかぬ謎の空母的な何かが建造される背景はアメリカ合衆国が抱えた事情から察することはそれほど難しくない。


 36年4月29に支那大陸で発生した天長節テロ事件から派生した反列強テロ、それに続く反米抗米闘争。これによってアメリカ合衆国はラスト・フロンティアという夢幻から果てしない蟻地獄へと誘われていったのだ。


 蟻地獄で藻掻き苦しんでいることは蚊帳の外にいる大日本帝国の転生者や転移者たちからは「精々苦しむが良い」「他人事で良かった」「やっぱりあそこは地獄なんだな」とそれぞれの感想によって察せられるが、当の本人たちは至って真面目にかつてのインディアン狩りやフロンティア西進の如く、憑かれたように支那の泥沼へ足を踏み入れていく一方であった。


 無論、その状況を危険視して警告は発している人物・・・・・・ヘンリー・フォードなど・・・・・・がいたが、アメリカ国内世論はかつてのフロンティア開拓の夢に酔っていてその警告を真面目に受け止めなかったのだ。


 だが、軍部は別である。


 彼等は本国の資本家や投資家、そして無知な選挙民と違い、目の前で殺し合いを演じているか演じることを強いる側だったからだ。


 特に遠征軍の主力として上海近辺での上陸作戦や橋頭堡周辺での戦闘を行う海兵隊にとっては必要な戦力は常に不足し、どこからか涌いて出てくる抗米民兵(ゴブリン)との戦いに疲れ果てていた。


 彼等には旧式装甲巡洋艦が改装の後に強襲揚陸支援艦として打撃支援に投じられ、更に増援としてテネシー級標準戦艦が配されたが、これらが出来るのは面での制圧に寄与しているだけで、敵地を綺麗に更地にしてくれるが、抗米民兵(ゴブリン)退治には殆ど役に立っていなかったのだ。


「Kill Chinkie, kill Chinkie, kill more Chinkie!」


 日々ウィリアム・ハルゼー・ジュニア少将は旗艦テネシーで叫び続ける。史実世界線では「Kill JAP, kill JAP, kill more JAPs!」と叫んでいたが、その憎しみの矛先が変わっている。それは海兵隊の指揮官として派遣されているアレクサンダー・ヴァンデグリフト少将も同様だ。


「相手は抗米民兵(ゴブリン)であるが・・・・・・その立ち向かってくる度胸に敬意を示しつつ・・・・・・皆殺しにしろ」


 何度か支那へ派遣され内戦における米市民の避難などでいい加減に支那人との関係にうんざりしていたヴァンデグリフトはハルゼーほど口汚くないが同じ内容を部下に指示していた。


 いずれにせよ、前線で戦う彼等の認識は共通していた。


「今の与えられている上陸用の装備は揚上陸に適切なモノではない。特に強襲上陸するには手間が掛かることで奇襲効果がない、奇襲を狙うと兵の装備が限られ火力が劣る」


 確かに上陸にあたっての火力支援は戦艦や装甲巡洋艦を配されたことで劇的に改善したが、上陸時の問題は解決していなった。相も変わらず駆逐艦改造の武装高速輸送艦で強襲上陸を敢行するか、沖合に停泊する貨物船からデリックと縄ばしごで装備や兵員を舟艇に下ろして揚陸する方式のままである。


「このままでは埒が明かない」


 前線指揮官たちは結論づけ、本国に打電することにしたのである。


「従来の上陸方式のままでは決定力に欠ける。迅速な兵員と重火器の揚陸なくば戦線の維持が精一杯である」


 この報告は支援艦隊と海兵遠征軍両方から同時に上がってきたことで流石に本国海兵隊司令部も腰を上げざるを得なかった。いや、正確には海兵隊上層部の考えは違った。


「この機会に完全に海軍から独立、海外遠征の主役の座を奪い取る。そのためには海兵隊直轄の支援艦艇を手に入れる必要がある。この報告はその交渉材料になる」


 海兵隊上層部は内心しめしめと思いつつも前線部隊には大統領府(ホワイトハウス)に掛け合うから現有兵力で戦線の維持に努めるよう、当面は十分な補給物資を送ることで耐えるようにと返事を出した。同時に前線部隊へどういう仕様が良いのか要望を出すようにとも下命したのである。


 支援艦隊のハルゼーから真っ先に報告と要望が届いた。


「航空支援が肝要である。内陸の敵目標を迅速に処理するには精密爆撃が可能な急降下爆撃機が必要である。それらを搭載する母艦が必要だ」


 ハルゼーの報告は海兵隊上層部も痛感していた点を補うものであった。そのためには艦上爆撃機という存在は適当なものであり、これは偵察機としても運用出来るために偵察ついでに抗米民兵(ゴブリン)の巣・・・・・・もとい村落に爆弾を叩き込むことで示威行為にも活用出来る。非常に有用だと彼等は認識を新たにした。


 次に海兵遠征軍からの報告が届く。


 ヴァンデグリフトなど海兵遠征軍はこれに思いつく限りの要望を書き出し、適宜報告書に添付して本国へ送り、また、戦闘詳報を再検討し改訂版のそれも再提出し、海兵遠征軍が行った図上演習での結果も添えたのである。


 これら詳細な情報は海兵隊上層部を喜ばせることとなった。


「これだけあれば大統領府(ホワイトハウス)を動かせる」


 だが、海兵隊上層部はこの報告群に渋い顔をする。彼等にとって航空機そのもの運用は兎も角、航空母艦の建造ノウハウがなかったのだ。


「確か、ジャパン・アーミーが変なの造ってなかったか?」


 一つの情報が彼等の足りないノウハウを補いつつも一つの方向性を見いだすことになったのだ。


「あぁ、いつだったか上海沖で撮影された奴のことか?」


「おお、これだ。不鮮明だが、舟艇を腹に収めているなコレ」


「いや、よく見ろ、カタパルトで水上機(下駄履き)を飛ばして居るぞ?」


「こっちの写真だと下駄を履いてない奴が飛んでるぞ?」


 上層部連中の頭の中は一致した。


「これだ!」


 そして、大統領府(ホワイトハウス)を動かした空母っぽい何かが誕生することへ繋がったのである。

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[一言] >「これだ!」 >空母っぽい何かが誕生 必要なのはわかったが、なぜ、そんなことになった……。
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