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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2597年(1937年)

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スペイン内戦<2>

皇紀2597年(1937年)1月31日 スペイン情勢


 国粋派スペイン(正統スペイン)軍がスペイン共和国に反旗を翻してから半年、概ね、国土の西半分と東半分を等分した格好で両勢力が拮抗した状態となったのはある意味仕方がないことかも知れない。


 内戦が始まってからこの半年、概ね国粋派スペイン(正統スペイン)軍がフランシスコ・フランコ・バアモンデ将軍に率いられ攻勢を掛けるという格好であったが、それでもやはり、一息吐かないといけないほど戦力が消耗していた。


 特に戦力消耗を促したのはマドリード攻防戦であった。


 装軌式列車砲”ラントクロイツァー・スレイプニール”を投入した国粋派スペイン(正統スペイン)軍はマドリードへの戦略砲撃を行うことで、共和国政府を首都放棄させることに成功こそしたのだが、いざ入城という段階でパルチザンやゲリラによる不正規戦に遭遇し、市街地戦を強いられたのである。


 これによって多くの将兵が傷つき、また同様に住民が犠牲になった。元々、”ラントクロイツァー・スレイプニール”の戦略砲撃によってマドリード市民は共和国側に立っていた。そのため、国粋派スペイン(正統スペイン)軍がマドリード入城に際しては一種の報復を考えていたのであるが、国際旅団や義勇兵が大規模な不正規戦を仕掛けたことで全市域、全市民を巻き込む格好での市街地戦に発展してしまったのだ。


ノー・パサラン(奴らを通すな)!」


 内戦勃発時にバルセロナで反ファシストの指導者で伝説的な女性闘士ドローレス・イバルリ・ゴメスが演説時に宣ったスローガンだが、これの旗印を反ファシスト、共和国派、共産主義者、無政府主義者たちは国粋派スペイン(正統スペイン)への徹底抗戦を誓ったのであるが、これを彼等はマドリードで忠実に実行したのである。


 だが、その結果は確かに国粋派スペイン(正統スペイン)軍に犠牲を強いて撤退させることに成功したのであるが、強いた犠牲と等しい犠牲者を生み出したのであった。それは無抵抗の女子供老人関係なく、その命の灯火を死神に刈り取らせる結果となったのであった。


 フランコはこの結果に驚くが、同時に一つの決心を抱く。


「今後一切の妥協などしてはいけない。我らは国際法に則って、正しく処断する。ゲリラもパルチザンも、これに協力する者も皆国際法では許されざるべき存在だ。交戦権を有さない存在が抗戦するならば、それは皆容赦なく殲滅すべきものであり、仮に同胞であろうと変わらない」


 戦線の整理をすると共にフランコは自軍に徹底した便衣行為の殲滅を命じ、また自軍だけでなく敵対する共和国派及び自軍勢力圏に宣伝ビラの投下、ラジオ放送による自軍行動の正当化を行ったのである。同時にマドリードにおける惨劇とその責任の所在を明確に共和国政府及びその背後にあるソヴィエト連邦や共産主義者たちにあると糾弾した。


「ドローレス・イバルリ・ゴメスは無辜の民に犠牲を強いたスペイン国民の共通の敵である。奴は戦場という名の大釜に国民という名の生け贄を放り込む魔女そのものだ。けして許してはならない」


 プロパガンダ放送と宣伝ビラには、この様に締めくくられ共和国派とその支配地域住民を分断する様に工作が行われていたのだが、実際にはフランコはその効果などそれほど期待などしていなかった。


 フランコが望んだのは独伊からの援助が届くまでの時間を稼げることであって、そのついでに自軍支配地域住民の統制さえ出来れば十分だった。しかし、この効果は思いの外大きく、共和国側にとって打撃となっていたのである。


 反乱軍への対抗と人民の戦意を高めるためのスローガンでしかなかったが、形振り構わないパルチザンの行動とそれを指示した共和国政府や人民戦線のやり方に疑問の声が噴出したのである。特に無政府主義者やトロツキストらは共産主義者のゴメスへ不信感をあらわにしたのだが、これが共和国派を分断する原因となったのだ。


「アナーキスト、トロツキストは内部にいる敵のファシストであり、反革命的な思想に酔っている人々だ。斯様な輩と共にあっては崇高な理想や革命を守り戦い抜くことは出来ない」


 バルセロナにおける臨時議会においてゴメスは糾弾するような演説を行った。これは彼女の独断によるものであり、スペイン共産党の意ではなかったが、共和国政府やスペイン共産党などはこの演説を利用して体制引き締めを図る為に利用した。


 |マルクス主義統一労働者党《POUM》の指導者であったアンドレウ・ニンがスパイ容疑で逮捕されるとそれを契機にPOUM指導者層が次々と行方不明や逮捕され、トロツキストの切り崩しが始まった。これにはPOUM党員、支持者、トロツキストが結集し不当であると抗議をしたが、それも認められず、バルセロナ市内で人民戦線側と対峙、結果、市街地戦に発展したのである。


 フランコら国粋派スペイン(正統スペイン)から見ると同士討ち、仲違いでしかないのだが、ことはそう単純でもない。


 この一件にはソ連からの意を受けたゴメスらがトロツキストを壊滅させるべく粛清の口実として利用したのであり、ソ連国外におけるトロツキストの活動拠点を壊滅させることでソ連国内でのヨシフ・スターリンの立場を安泰とするべく行われた粛清の一環であったのだ。


 年明け早々発生したバルセロナ市街地戦で人民戦線とPOUMは3000名を超える犠牲者を生み出したのだが、その結果、POUMと無政府主義者は実質的に共和国政府における影響力を失ったのである。共和国政府がごたついている一方、フランコは独伊からの援助を受け取り、戦力の再編を進め、これによって春期攻勢を掛ける準備は概ね整いつつあった。


 スペイン内戦の第二ラウンドの幕が切って落とされるのも時間の問題である。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 4月にはゲルニカ爆撃が行われるわけだが、英独関係やら米帝の支那での行いなんかがあるから政治的扱いが変わりそうだな。
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