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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2596年(1936年)

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マイアーレ

皇紀2596年(1936年)6月8日 渤海


 第二出光丸の遭難によって大連に出光佐三以下、出光商会の主立った幹部が揃い事後協議を行っている頃、イタリア王国海軍東洋艦隊は本国から持ち込んでいた特殊兵器を第二出光丸の救出作戦に投入することを決定していた。


 その特殊兵器の名を人間魚雷マイアーレという。


 欧州大戦においてアドリア海で活動するオーストリア海軍の戦艦を撃沈するために開発投入された人間魚雷ミニャッタを改良した代物である。史実においてアレキサンドリア軍港に停泊する大英帝国海軍地中海艦隊のクィーン・エリザベス級戦艦2隻を大破させる戦果を挙げた特殊部隊用の兵器だ。


 イタリア海軍がこのマイアーレを東洋艦隊へ配備して渤海へ持ち込んでいたのは、いざ戦時になった場合において停泊している他の列強海軍艦艇へ吸着爆弾(リムペットマイン)を設置して艦艇を爆破、着底させることで港湾閉塞を狙っていたからである。


 尤も、用意した当の本人たちもまさか実際に使うことになるとは思ってはいなかったが、特殊部隊を用いてジャックされた船舶への接近及び乗船するのに適当であったことと、交渉手段及び時間稼ぎのために吸着爆弾(リムペットマイン)を活用することを考えた結果、救出作戦に用いることになった。


 とは言っても、彼等に支給されていた吸着爆弾(リムペットマイン)はそれほど破壊力があるものではない。人間一人が持ち運び出来るサイズでしかない以上、船舶の水線下重要部分であるスクリューやソナー、舵などに設置して行動不能にするのが本来の使い方である。


 だが、今回の作戦ではタンカーに用いるため、たった一発であっても撃沈ないし大破させるのには十分とも言えた。史実でも戦時中に連合軍による昭南港爆破事件で油槽船とタンカーが計7隻撃沈されている。


「威力が無いとは言っても民間船だ。下手したら一発で沈むから起爆させないにこしたことはないのだが・・・・・・積み荷は原油か?」


「ええ、出光商会からの情報ではその様です」


「厄介なことだな」


 特殊部隊の指揮官とその副官のやりとりからも爆破を前提としての作戦行動であることがわかる。基本的に時限信管の作動で起爆する方式だ。信管を解除すれば良いが、その手順を間違えたり無理矢理引き剥がそうとすればその時点でアウトである。


「解除そのものは精通しておりますから支障はありませんが、この海域は見ての通りの黄土色ですから作業がし辛いのが難点かと・・・・・・」


「まったく面倒なことだな」


 彼等特殊部隊の練度は比較的高い。士気も高い。列強ひしめく海域であることから東洋艦隊に属する全将兵の待遇はイタリア全軍の中でもとびきり良いものであるからだ。それもベニト・ムッソリーニ(ドゥーチェ)が見栄を張っていたからであるが、それを支えるのが天津租界とその目と鼻の先にある勝利油田の権益だった。


「日本帝国が情報提供してこの渤海沿岸の油田開発が行われるようになって我々はその恩恵に浴しているわけだが、その返礼をする良い機会だと本国は言っているが、そうそう簡単に人質を解放してくれるモノかね?」


「先日、我が国の船が消息を絶っておりますから、本国も一刻も早く失点を回復したいのでしょう」


「まったく、政治という奴は面倒だな。ローマ復興は良いが、ここはローマの領域じゃないんだがな」


 指揮官のぼやきを副官は苦笑いして応えるだけだった。


「さて、時間のようだ。兵たちに訓示を垂れてやる必要は無いが、作戦成功したら大連で宴会とゲイシャが待っていると言ってやるか」


「それは連中の士気が高まるでしょう」

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