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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2596年(1936年)

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大艦巨砲と多目的母艦

皇紀2596年(1936年)2月5日 帝都東京 有坂邸


 史実において36年という年は通称①計画こと第一次補充計画、②計画こと第二次補充計画で空母2隻、重巡6隻他の軍縮条約に沿った増強計画が実行されている時期である。


 だが、史実と違い、この世界では蒼龍・飛龍の空母2隻の代わりに伊勢代艦の戦艦4隻が建造され、同時に超巡規格で最上型4隻、高雄型8隻が建造されている。また、駆逐艦の建造こそ遅れているが、多目的艦(MEKO)の建造が進められ、海上交通路の警備と東南シナ海における哨戒任務が盛んに行われているが、これらは史実における初春型から朝潮型の建造枠をそのまま流用した形となっていた。


 規模だけを見ると③計画こと第三次補充計画の分まで含んだ建艦規模になるが、軍縮における建造ペースの鈍化と抑制を考えればそれを取り返す勢いになっているだけとも言える。


 この建艦ラッシュを支えているのが統帥権干犯問題によって政府からの手打ち金として振られた予算を投入して行った造船施設拡充によって海軍工廠だけでなく、民間造船所の造船能力が史実の2倍以上に膨れ上がったことで実現出来たことはその決断をした大角岑生海軍大臣の先見の明であったと言えるだろう。


 尤もそれは後出しジャンケンであるのは東條英機中将、有坂総一郎ら転生者の目からは明らかではあるが、そこは言わぬが花。


「空母建造のそれが全く感じられない・・・・・・」


 艦政本部の実力者である平賀譲造船中将から建艦計画に関しては情報が入ってくる総一郎はその今後の建艦構想についてそう漏らす。


 しかし、直近の空母戦力の整備計画がないことで不都合があるかと言えば、実際にはそうも思えないのがこの時期の列強海軍の整備状況であった。


「天城型と加賀型を装甲空母として建造する方向に進めたというのに後継艦が出てこないというのはそれはそれで大丈夫かと思うけれど・・・・・・」


 バルカン戦役においてはアドリア海からユーゴスラヴィア全域に対地支援攻撃を行い、地上投射能力を示したことで空母と航空戦力の戦略運用という可能性を示せていたにも関わらずそれに合わせた次世代空母の建造が行われなかったことは総一郎には不思議でならなかったが、かと言って、戦艦が不要であるとは思ってもいなかった。


「伊勢代艦という史実に存在しない戦艦、まして超巡規格という準戦艦が量産されたこの世界では空母の存在が希薄になるのは致し方ないことではあろうけれど・・・・・・しかし、この上で金剛代艦という名目でA150(大和型)をやろうというのだから突き抜けるだけ突き抜けてしまったもんだ」


 平賀の資料ではA150は4隻建造が明記され、36年中にほぼ同時起工し39年冬~40年春頃に就役とあった。しかも、情勢の変化によっては3ヶ月から半年程度の工期短縮が可能となっていた。


 また、年2隻ずつ総工期1年半(進水まで1年、竣工まで半年)のペースで水上機母艦(甲標的母艦)が4年連続で組まれていた。


「1万トン級水上機母艦・・・・・・あぁ、あれか・・・・・・空母改装用のアレか」


 半年で上部構造物を改造し30~40機程度の航空機を搭載可能にするというそれが平賀の資料で感じ取れたが故に総一郎は苦笑いをした。優秀船舶助成金で超大型客船の建造を推進しているが、客船改造するよりも短期間で投入出来るこれは理に適っている上に条約に一切抵触しない。


「これは平賀さん、やってくれたな」


 それどころか、甲標的母艦への改造も予備設計されているが、甲標的ではなく大発動艇(大発)や特大発動艇をその腹に収めている場合、ちょっとした強襲揚陸艦になるだけに陸軍向けも視野に入れた流用前提のそれに苦笑いするしかなかった。


 大発動艇を2列×3隻の6隻搭載出来、1隻当たり70名の完全武装の歩兵を合計420名満載出来るため、1隻で1個大隊弱を輸送出来ることを意味している。4隻を1個強襲揚陸戦隊として運用した場合、1個連隊規模を強襲揚陸可能になる。


 また少ないとはいえども、12.7cm連装高角砲2基ないし14cm連装砲2基を搭載することで対地攻撃支援もある程度賄えるだけに使い方によっては大きく戦局を左右しうる戦力とも考えることが出来よう。


「ガ島殴り込みでも考えているのか、この設計は・・・・・・」


 水上機運用能力は水上機母艦仕様よりも半減するとはいえども、6機程度の搭載が可能であることから水上戦闘機を搭載している場合、航空支援も可能であることから平賀の欲張りな設計には呆れを通り越して乾いた笑いをする他なかった。


 だが、その仕様は割と堅実であながち馬鹿には出来ないだけに有効に活用出来るならばその真価を発揮することだろうとそこにあった数字は総一郎に語りかけるのである。


「どう転んでも、このフネは帝国海軍にとって重宝するんだろうな」

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― 新着の感想 ―
[一言] 空母(という名の強襲揚陸艦)に改造可能な水上機母艦…あれ?青井孔雀氏の作品で似た様なバケモンを見たぞ?(あっちは豪華客船ベースだが
2022/06/23 15:18 退会済み
管理
[一言] 1923年に日本が開発したようです。 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%…
[一言] 強襲揚陸艦の予備設計とかポートモレスビー攻略作戦かな。 空母は、天城、加賀改造の装甲空母に、大型客船改造の飛鷹級。 金剛級は廃艦後、どうするんでしたっけ。 時間が経ちすぎて記憶が。。。
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