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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2595年(1935年)

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Series96<1>

皇紀2595年(1935年) 三菱新型機開発の顛末


 帝国陸軍が試製九六式戦闘機(キ27)の開発に勤しんでいる間、帝国海軍はそれを黙って指をくわえてみていたかと言えばそうではない。


 天城型、加賀型の両装甲空母に搭載する艦載機の陳腐化、旧式化はいよいよ兵たちの士気に関わるほどの問題になってきていた。


 横須賀鎮守府に近接する追浜にある海軍航空廠は、海軍における航空機関連の各部局である海軍技術研究所航空研究部、横須賀海軍工廠航空機実験部、横須賀海軍工廠航空発動機実験部を統合して32年に組織されたのであるが、彼らも陸軍の新型機に対抗すべく日夜研究と情報収集を行っていたのである。


 七試艦上戦闘機は海軍当局に将来性を示すことに成功したが、結局は性能不足ということで採用されるに至らなかった。しかし、全金属単葉機として三菱が提示した九試単座戦闘機は艦上戦闘機という縛りを敢えてなくし、要求は速度や上昇力など戦闘機に不可欠なもののみに重点を絞り、航空本部部長山本五十六海軍少将の指示でその他の条件は極力緩和するという方針が示されたことで、設計主任であった堀越二郎は七試艦上戦闘機の雪辱を果たすべく意欲的に設計に取り組んだのである。


 同じく競作を命じられていた中島飛行機も三菱同様に試作機を提示したが海軍要求を上回る性能を示すことに成功したが本気で取り組んでいたとは言えず、社長である中島知久平から「海軍機は後回し、陸軍機こそ本命」と優先順位を明確に指示されていたことから試製九六式戦闘機(キ27)へその熱意を全力投球し、とりあえず海軍の要求がクリア出来る程度の機体に改修したキ11を提出していたのである。


 キ11の寿発動機をハ5発動機へと換装し、馬力アップと多少の改設計を行い最高470キロと性能を改善させることで一定の成果を示し海軍側のご機嫌を取ったのだが、海軍指定の寿発動機を採用しなかったことで不満を抱かれ試験飛行もそこそこに中島飛行機へ機体は返還されている。


 しかし、問題は三菱側の受け取り方であった。


「やはり海軍指定要求に従っての発動機選定では早晩陳腐化することは中島のキ11で十分に示されている。恐らくアレが寿を採用していたらどんなに頑張っても430キロ程度であっただろう・・・・・・まして手抜きのアレに三菱(我々)は速度で負けているのだ。敵さんが中島みたいに手抜きしてくれるわけがない」


 堀越はキ11《手抜き》に速度で完敗したことに屈辱感と発動機の選定が大きく影響を受けることを突きつけられたことで海軍指定を無視しようと決心し、名古屋航空機製作所で発動機開発の指揮を執っている深尾淳二を訪ねるべく試験飛行の行われた各務原から名古屋へ向かった。


「深尾さん、九試単戦は中島の手抜きに負けました。あれに勝つために・・・・・・いや、今後の戦闘機開発で後れを取らぬ為には発動機が重要です。金星を都合してはいただけませんか」


「お安い御用だ。だが、海軍の逆鱗に触れるのではないか? 現に中島は海軍の指定を無視したことで即日却下されておるじゃないか」


「中島が陸軍向けに試作しているアレも格闘戦より高速性能を追求しているのですから何れ時流はそちらに傾くでしょう。それに九試単戦は幸い艦上戦闘機ではありません。陸上戦闘機という採用の可能性がありますから」


「そこまで言うのなら、いくつか都合してやるよ、上には上手く話を通してやるから、融通してやるんだ中島に負けなさんなよ」


 深尾から激励と融通の確約を貰うとその脚で自身のオフィスへ戻ると早速改設計に移った堀越であったが、彼の同僚は揃って「何かに取り憑かれているようだった」とコメントを残しているが、彼は改設計案の中でいくつかの提案を行うことになる。


「堀越さん、これ本当に大丈夫ですかね?」


「あぁ、大丈夫だ。これを理解出来ないならこれからの戦争に日本は対応出来ないだろうさ。それに海軍もボンクラだらけじゃない。分かる人には分かって貰える」


 堀越の力強い言葉に無根拠ながら頷かされてしまった三菱のスタッフは自分の仕事を全うすべく九試単座戦闘機の改造を始めるのであった。


 九試単座戦闘機(A5N):キ11改

  全備重量:1920kg

  発動機:中島ハ5 950馬力

  最高速度:475km

  馬力荷重:2.1kg/馬力

  翼面積:19.1㎡

  翼面荷重:105.7kg/㎡

  全長:6.89m

  全幅:10.89m

  全高:3.33m

  航続距離:800km+400km


  九試単座戦闘機(A5M)

  全備重量:1373kg

  発動機:中島寿 600馬力

  最高速度:451km

  馬力荷重:2.25kg/馬力

  翼面積:16㎡

  翼面荷重:84.5kg/㎡

  全長:7.67m

  全幅:11m

  全高:3.27m

  航続距離:800km+400km

※キ11改の全備重量が異常に重かったため、再度計算したところタイプミスが判明。修正した。現時点での数字が正しいものである。




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― 新着の感想 ―
[一言] 海軍ですな(笑) やはり総帥は陸海軍の<宿痾>はそう簡単には直せんとお考えのようです(笑) ところで新型機が揃ってきたら、<空軍>でも作って新陳代謝・・・というのは無理か(笑)
[一言] 〉海軍指定の寿発動機を採用しなかったことで不満、機体を返却 うん。理解不能。海軍あるある。
[気になる点] 九試単座戦闘機(A5N):キ11改   全備重量:2920kg 馬力荷重からみると、重量が重すぎでは
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