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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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借りは返したぞ!

皇紀2583年(1923年)9月7日 帝都東京


 震災発生から1週間となるこの日に至るまで、紆余曲折があった。


 2日にはクーリッジ大統領から大正天皇宛のお見舞いの電報が届いた。


「日本国民が未曾有の震災に遭遇しているとの緊急情報がたちまちのうちに全米に達し、誰もが驚愕を覚えております。そこで貴方の国に対して、私自身とアメリカ国民から心からの哀心と同情の意を表すものであります。もしそちらの被災者の困苦を減少させる道があるのならば、どんな努力も惜しみません」


 邦訳するとこういう内容の電報だった。


 アメリカ合衆国はただの外交辞令ともいえる見舞い電報だけでなく、フィリピンや天津に寄港していたアジア艦隊に物資を満載させ東京湾へ急行させていたのだ。


 アジア艦隊の入港と前後して連合艦隊や大英帝国東洋艦隊の艦艇が横須賀や横浜、品川沖に続々と到着し、艀や艦載艇によって陸上の重傷者などを艦内に収容し、医務室にて治療を行った。また、満載された物資も陸揚げされ、帝国陸軍の近衛師団や第1師団などによって被災地へ搬送されていたのだ。



 そんな最中の3日……。


 英国東洋艦隊の巡洋艦と連合艦隊旗艦長門が接近遭遇。全力航行をしていた長門の速力が露呈したのであった。東洋艦隊の巡洋艦は元々、連合艦隊の大連沖での演習の情報収集が目的で日本近海を航行していたのだが、海軍船橋通信所からの帝都壊滅の無線を傍受するや横浜を目指して航行していたのだ。その途中で長門と遭遇し、彼らは偶然ではあるが、その任務を達成することに成功したのであった。


 この事件に対して帝国海軍上層部は不問し黙殺することとした。仮に彼らが連合艦隊や長門艦長を批判し、懲罰を与えていた場合、非常時になんら手を打てず後手に回った海軍のメンツを傷つけるだけだと考えたのだ。


 帝国陸軍は陸軍省が機能不全に陥ったとは言えど、防災演習や震災発生で災害指揮を執った東條英機少佐の活躍と見識、そして秩序を回復した近衛師団と第1師団の災害出動による統率が取れた行動は帝都市民から賞賛されていたのだ。このことで面目丸つぶれとなった帝国海軍は連合艦隊の軍機無視に目を瞑り、大連沖から急行した英雄扱いすることにしたのであった。



 そして4日……。


 米大統領クーリッジはワシントンポスト紙を始め、新聞各社を通じ合衆国市民へメッセージを発表。


「未曾有の大災害を被った親愛なる日本国民に対し、東京、横浜、そしてその周辺各市町村の詳しい被害状況は未だ公式には連絡はないので不確かですが、大地震、火災、津波に襲われ、大災害に襲われた人々は生活手段を奪われ、欠乏、苦境の中で即刻の救援を待ち望んでいることは確かです。政府として即時の救援活動は行っておりますが、救援活動はこれからも長く続けなければなりません。国民の皆さん、友愛の精神で日本救援に協力をお願いしたいのです。救援活動がより効果的になりますよう在ワシントンの赤十字会長、若しくは赤十字社支社長を長とした使節団を日本へ派遣したいと考えております」


 このメッセージによって合衆国市民は太平洋を挟んだ隣国へ支援を決意することとなったのだ。



 震災発生後のゴタゴタからやや落ち着いた6日。


 この日、大正天皇からクーリッジ大統領宛の電報が送られたのである。


「我が国が被りました災害に対し、丁重な御見舞いと感銘深き申し出を戴き、感謝の念で一杯です。大統領閣下と国民の皆様に厚く御礼申し上げます」


 この電報がクーリッジに届いたとき、彼はホワイトハウスの執務室から日本の方を向き、小さく呟いた。


「サンフランシスコの借りは返したぞ」


 サンフランシスコ地震があった1906年は、彼がマサチューセッツ州で政治家となるための活動を行っていた時期だ。その時に彼は日本からの多大な支援があったことに感銘を受けたのである。そして、政治家としての借りと感じていたのである。そして、発生した関東大震災……彼の中での使命感が日本へ国家としての支援、政治家としての支援へと突き動かしたのだ。


 大日本帝国とクーリッジとの関係はこれだけで終わることはなかった……また後日、彼と日本は再び大きく関わるのである。

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