いざ帝都へ!
皇紀2583年9月1日 大連沖
「帝都及び横浜方面、壊滅す、救援乞う」
海軍船橋通信所からの緊急電が大連沖で演習中の連合艦隊へ届いたのは午後3時過ぎのことだった。この時点では海軍省及び軍令部は機能喪失しており、指揮系統は完全に沈黙していたのである。唯一、統制され秩序だった行動が出来た海軍組織は演習中の連合艦隊とその司令部であった。
「至急、第二艦隊と連絡を取り、ここ長門において事後策を協議する。全ての作戦艦艇は行動可能な状態で待機せよ……1個駆逐隊は大連へ至急入港し、医薬品を積み込み次第出港、帝都へ向かえ……他艦も救援に必要な物資が自艦にどのくらい積み込まれているか把握に務めよ」
連合艦隊司令長官竹下勇大将は緊急電を見ると同時にそう告げると帝都の方角を見つめた。
「参謀長、最悪の事態を覚悟せねばならん……海軍省、軍令部ともに全滅ということも有り得る……その場合、ここ連合艦隊司令部が海軍の全権を担わざるを得ない……その場合、政治的な行動もしなくてはならん……褌を締めてかからねばならぬ」
竹下の言葉に参謀長白根熊三少将は答えた。
「長官、大連に向かわせた駆逐隊とともにこの長門も帝都へ急行すべきであると考えます……第二艦隊との協議も必要ではありますが……それは私が陸奥で引き受けますから、長官はすぐに帝都へ向かってください……我らも物資を満載しましてから後続しますゆえ……」
「参謀長……わかった……では、私は長門で先行しよう……大連と佐世保で物資を満載し、順次横須賀へ向かうよう手配してくれ……」
「はっ! お任せください」
白根はその後、単身、長門を退艦すると陸奥へ移乗した。彼は言葉通りに第二艦隊司令部を陸奥で迎えることになる。
白根が退艦し、十分に離れると竹下は指示を出した。
「これより、帝都へ向かう! 被災し、絶望の淵にある帝都へ我が雄姿を示し、海上より救護活動を支援する。艦内施設に被災者を収容し、負傷者への医療活動を行う! 総員、奮励努力せよ!」




