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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2594年(1934年)

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来訪!イタリア東洋艦隊

皇紀2594年(1934年) 9月23日 関東州 旅順


 水平線の彼方からその巨艦はやってきた。


 元のパゴダマストの名残を感じさせる高い艦橋が水平線の彼方で徐々に大きくなり、全体像が見える頃には従えた護衛艦艇もその姿を見せていた。


 戦艦2、重巡2、軽巡2、駆逐艦8の堂々たる艦隊だ。その所属国を表す三色旗を檣楼にはためかせながら旅順港内の錨泊地へ投錨した艦隊はイタリア東洋艦隊。月初めにその母港モガディシオを出航し途中シンガポールを経由してその偉容を旅順港に示していた。


「兵たちには順次上陸休暇を与えよ。彼らとは上陸の喜び楽しみを分かち合いたいものだな。そして英気を養って存分に働いてもらわねばな」


 艦隊司令長官イニーゴ・カンピオーニ中将は長旅の疲れを感じさせない笑みを浮かべながら部下に指示を出す。艦橋要員もまた同様に笑顔で無事な入港を喜んでいた。


 彼らの航海は困難な道のりであった。


 元々イタリア海軍の艦艇は航続距離が短い。これは地中海においての行動が基本であるためだが、ムッソリーニ(ドゥーチェ)が海軍大臣に就任して以来、大ローマの復興を旗印に海軍力の強化が行われ、沿岸海軍から外洋海軍へと方針が転換されたことで艦艇整備が追いついていないことに起因する。


 本格的な外洋艦艇は大日本帝国との外交協定による伊勢型戦艦の譲渡という形で得たことから配備が始まったのだ。その伊勢型戦艦の伊勢と日向は今は改名されシチリアとサルデーニャとなり、この東洋艦隊の中核を為している。


 東洋艦隊はその性格から設立当初から比較的航続距離の長い艦艇を優先して配備しているが、それでもイタリア海軍という尺度の中での話で、実際にはそれでも不足気味だったのだ。


 この艦隊に配備されているのはシチリア級戦艦の他にザラ級重巡洋艦、ライモンド・モンテクッコリ級軽巡洋艦、ダルド級駆逐艦である。何れも33年頃までに就役した新造艦ばかりだ。だが、何れも4000海里台の航続距離であり、シチリア級戦艦の1万海里と比べると圧倒的に短いのだ。


 4000海里はモガディシオ-シンガポールをギリギリ補給なしで巡航航海可能ではあるが、途中で戦闘があれば確実に燃料不足に陥るという数字だ。タンカーが随伴していれば問題はないが、それでも不安のある数字に違いはない。


 実際に彼らはインド洋を横断する際にタンカー随伴の上で3回洋上補給を受けシンガポールへ入港している。最初の給油は慣れない作業であったこともあり艦隊を低速航行させた上で作業を行っていた。それでも給油ホースの受け渡しは非常に難航し作業は一昼夜かかったのだ。


 2度目の補給は低気圧の接近で波が高くなっているところで半ば訓練として行われた。これには流石に条件が悪く失敗する艦が多かったが、前回の補給で燃料に余裕があることから作業に当たった者たちには不安感はなかった。


 流石に3度目になると慣れてきたのか多少手間取ることがあってもそれほど苦労することなく補給を行うことが出来たのだが、それもやはりシンガポールが間近であると言うことが気持ちに余裕を持たせていたのかも知れない。


 シンガポールを出た後も洋上補給は訓練を兼ねて行われていたが、インド洋と違い、ブルネイ、カムラン湾、マニラ、香港、高雄、上海と航路上にはいくらでも補給拠点があることからその安心感の違いから兵たちは気が楽であった。無論、ここまで来ると失敗する艦は皆無であった。


 彼らの航海はこうして終わったが、カンピオーニの予想と反して余分な寄港をせずに済んだのはイタリア海軍将兵たちが真面目に任務に取り組んだ結果だと彼は素直に喜んでいたのだ。


「あとは日英海軍の提督へ挨拶しに行く程度か」


 カンピオーニは副官に確認する。副官は頷くと大連のイタリア総領事館宛ての打電をするために士官たちとの打ち合わせに戻っていった。


「我が艦隊の砲が火を噴くことがなければ良いが」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この元伊勢型もやはり、艦首艦尾に赤と白の斜めストライプが描かれているのだろうか。
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