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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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地鳴り響き震え止まらず

皇紀2583年(1923年)9月1日 帝都東京


 8月1日、15日と2度の防災演習を経て、災害時の行動でどうすべきなのか、帝都市民だけでなく、避難誘導を担う東京市職員や鉄道省職員、そして災害出動を行う内務省、警察、消防の職員、そして帝国陸海軍将兵も経験によってなんとなくではあるが理解しはじめた矢先のこの日、3度目の防災演習が行われようとしていた。


 午前11時、帝都各所の防災サイレン……戦時においては空襲警報に転用される……のけたたましい大音響によって事前の周知の通りに、地震発生と認識し、建造物からの避難を開始した。


 帝都各所にある交番や警察署から警官が避難誘導のために出動し、多くの街路では避難民が列をなして避難場所として指定されている宮城(皇居)、都市公園、学校、港湾施設、軍施設などへ向かっていった。


 3度目ということもあり、帝都市民の混乱は最低限に収められており、若い男たちが、女性、老人、子供といった弱者を避難させるために警察に進んで協力し、避難誘導や交通整理などの無償奉仕を行ったことで、11時半過ぎにはこれらの避難が完了するに至った。


「ふむ……流石に3度目ともなれば経験によってどうすればよいかわかってくるのだろう……まぁまぁの出来と言えようか……」


 宮城二重橋前の宮城前広場に仮設された防災演習指揮所に陣取るのは東條英機少佐である。


 彼は来たるべき関東大震災に備えて打てる策を打っては来たが、その殆どは時機を逸していたために有効に機能することはなかったが、唯一、有効に機能したこの防災演習に期待を寄せていた。


「これで、圧死、焼死する者たちのかなりの数を救うことが出来るだろうが……いや、帝都は何とかなるが……神奈川県などは事実上見捨てたことになる……結局、自己欺瞞でしかないのか……」


 彼は自身が陣取る指揮所に入ってくる情報を重要度別に分類し、状況の把握に努めつつも自身のこれまでの震災対策が自己満足の自己欺瞞だと自嘲し自身の無力さを感じていた。


 午前11時58分……遂にその時がやってきた……。


 ズゥゥゥゥゴゥゥゥゥゥグラグラグラ……。


「来たか……」


 予期せぬ地震の発生に指揮所にいる者たちの統率が乱れ、秩序が崩壊した。


 逃げ惑う者やパニックを起こす者、呆然自失となる者がこの指揮所にも数多く居た。


 彼は指揮所のテントから飛び出すと叫んだ。


「狼狽えるな! 貴様らはこの日のために備えてきたのであろうが! 決められた通りに落ち着いて冷静に対処せよ! これより、ここを災害指揮本部とし、上級指揮官による指揮継承までこの東條が指揮を執る。良いか、貴様らの行動如何が帝都市民の生命を左右すると心得よ! 今や非常時である!」


 明確な指揮系統の確立による秩序回復によって防災演習指揮所改め災害指揮本部の軍人や官吏などは自らに与えれた使命を果たすため再起動したのであった。

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