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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2594年(1934年)

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電力問題<3>

皇紀2594年(1934年) 4月 帝都東京


 28年の張作霖爆殺に始まる満州事変以来、日英関係が利権の融通などもあり好調であった。そして、同様に民間レベルでもアメリカ製品よりもイギリス製品の輸入を行うことが多くなっていた。


 性能面ではアメリカ製品が一歩進んでいる部分があるのは分かってはいたが、国益の観点からイギリス製品の輸入を商工省は奨励していたのだ。


 特に外務省が独断で軍縮条約に有利な条件となるように工作した結果、デッカー社及びイングリッシュ・エレクトリック社のEF50形電気機関車(当初8000形と呼称)が輸入されたが、引き受けさせられた鉄道省はこの欠陥だらけの難物を苦難の末使いこなすことに成功するとともに国内電機メーカーと共同で技術習得と内製化することに成功したのであった。


 この頃には発電機などは自前で調達可能であったが、各地で発電能力の強化を行っていたこともあって、イギリス製の発電機の輸入が行われることになったが、その仲介を行ったのがイングリッシュ・エレクトリック社であった。無論、自社製品とセットでの受注であったため、各電力会社は難色を示したが割引とメンテナンスの引き受けという条件で折り合いを付けることとなった。


 しかし、そこで商機に敏感なドイツのシーメンス社が待ったを掛けたのであった。元々東日本の電圧50Hzというのはドイツが源流であり、彼らにとって自分たちの縄張りを荒らされるような思いがあったのだろう、大幅値下げとはいかなかったがイギリス側と同じ条件で提示を出してきたのだ。


 電力大手にとっても使い慣れたシーメンス製の発電機の方が安心感があったこと、鉄道省の苦労を聞いていた彼らにとって商工省や外務省のごり押しにいくらかの反発心があったことでシーメンスが多くの受注を得ることとなったのだ。


 流石にそうなるとイギリス側も黙ってはいない。大変な剣幕で商工省と外務省に苦情と契約履行を求めてきたのである。


 日英関係を重視したい外務省と日米関係の冷却化でアメリカ製品の安定供給に懸念を抱いている商工省は事を荒立てたくはなかった。そのため、両者談合の上で鉄道省に押しつけることにしたのであった。


 軍縮条約と同様に寝耳に水でイギリス製発電機を押しつけられた鉄道省は鉄道大臣を通じて正式に迷惑であると通告したが、時既に遅く契約が交わされた後であった。押しつけられた以上は使いこなすしかなく、EF50形電気機関車の時と同様に苦労しながらも運用を始めることとなったのだ。


 この時、鉄道省は川崎に総発電力30万kwの一大発電所を設置することにしたのだった。これは川崎に蒸気機関車用の重油タンクを設けていたことでタンクを増設すると同時に発電用重油に回すことで帝都近郊の電車運転線区への電力供給に回すこととしたのだ。無論、電車運転に使い切れる分ではないため、大井工場や東京機関区など近傍の鉄道省関連施設に電力を供給することとなったのだ。


 東洋一の火力発電所と関西共同火力発電会社が尼崎第一発電所30万kwを賞賛していたが、実は鉄道省の方も同等の火力発電所を有していたのだ。


 本来は全力運転で45万kwまで出せるとなっていたが、鉄道省側はカタログスペックを一切信用しておらず、自身の経験から定格の7割程度が妥当と評価していたのだ。また、常に故障のリスクを抱えていると考えていたが故にEF50形を運用している上越本線の高崎機関区から人員を手配出来るようにと川崎に入手したすべての発電機を集中していたのである。


 結果から言えば鉄道省の懸念は的中し、発電を開始してからも不具合が連続し、高崎から技師や整備員が出張ってくるのが日常であったが、EF50形と同様に使いこなせるようになると徐々に発電力を定格に近づけていったのだった。


 この時の経験もまた国内電機メーカーに情報共有されることで活かされることとなった。

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[気になる点] このころの米国の工作機械は、英独の機械より半歩遅れていたのでは?(最先端になるのは第2次大戦で欧州の技術者を取り込んでから) 日本が米国製を選らんだのは安くて程度が悪い中古品を多数売っ…
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