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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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鬼たちの宴

皇紀2583年(1923年)8月25日 ビキン


挿絵(By みてみん)


 第8旅団は独立混成歩兵砲大隊の行動開始とともに敵の塹壕陣地前面から鉄橋との中間地点まで移動。ここで独立混成歩兵砲大隊の開幕砲撃によって戦端が開かれるのを待っていた。


 夜明けとともに激しい砲撃音が響き渡り、数瞬の後、鉄橋前面において着弾音が響き渡った。爆発による土埃と爆炎が鉄橋を覆い隠すと敵塹壕陣地の方向が騒がしくなり、敵が動き出した。


「露助どもの度肝を抜いてやったわい! どうじゃ、上杉謙信曰く、啄木鳥の戦法……」


 第8旅団長荒木貞夫少将は上機嫌で高笑いをしていた。


「旅団長閣下……大変申し上げにくいのですが、川中島のそれを言っておられると思いますが……あれは武田信玄の軍師、山本勘助の……」


 参謀が恐縮しながら口を挟んだ。


「わしとて、記憶違いの一つや二つくらいはある……それに大した間違いでもなかろう……実際に啄木鳥に突かれて出てきた木の中の虫と同じであろう?」


 荒木はムスッとしながらそう言いながら立ち上がると参謀も続いた。


「さて、わしらも仕事に取り掛かるとしよう……武田信玄宜しく川中島で待ち構えておるのだから敵の動きに合わせて行動を開始せねばな」


「左様でございますな」


「では、各大隊から引き抜いた歩兵砲小隊に制圧砲撃を命じよ……それから……」


「軽機関銃による援護射撃とともに歩兵突撃ですな?」


「あぁ、その通りだ。予定通りに行動させよ」


 第8旅団司令部は各部隊へ矢継ぎ早に指示を飛ばしていく。活気あふれる司令部の空気は麾下部隊へ伝染し、兵士たちの士気は高揚していった。


 おっとり刀で駆けつける敵の頭上に迫撃砲弾が降り注いだのはその後まもなくであった。突然の砲撃に恐慌状態に陥った敵が塹壕陣地へ逃げ帰ろうとしたが、そこで二の矢として軽機関銃による銃撃が横殴りの雨霰が如く降り注いだことで敵部隊は完全に統率を失い壊走を始めたのである。


「ふっ、甘いな……生きて帰れると思うなよ?」


 小畑敏四郎中佐は壊走する敵集団を睨みながらそう言うとすぐに行動を開始した。


「よし、包囲殲滅戦を開始する! 事前の計画に従い、行動せよ! 我が大隊は白兵突撃を敢行し、味方が待ち伏せる地点に敵を追い立てるのだ! かかれ!」


「おう!」


 小畑麾下の大隊は鬼神の如く敵集団に襲い掛かる。ある者は銃剣で、ある者は軍刀で、そして小畑は軍刀拵えの日本刀を振りかざし突撃を敢行したのであった。


 後に『Yellow demon's attack(黄鬼の攻撃)』もしくは『Banquet of demons(鬼たちの宴)』と呼称され欧州各国に恐怖を植え付けた出来事の始まりであった。


 小畑率いる大隊による白兵突撃により恐慌状態の敵は追い立てられるように第8旅団主力が待ち構える地点まで敗走を続けた。


 極東共和国軍の逃げた後には夥しい戦死者の遺体が、そして逃げ遅れた者が恐怖に慄きガタガタと震え身動きが取れないでいた……そして塹壕陣地を前にして彼らは逃げ切れたと安堵の表情を見せたその瞬間に最後の地獄が待ち構えていたのであった。


「いまだ! 撃て!」


 荒木の命令一下、誘い込まれた敵集団の残党は蜂の巣となったのである。命からがら包囲網を突破し、塹壕陣地へ逃げ込んだものは多くはなかった……。


 この時の包囲殲滅戦による極東共和国軍及びパルチザン勢力の戦死者は約1500名、戦傷者は約500名、日本軍の捕虜となった者は約200名であり、記録的な大敗といえるものだった……。

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