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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2593年(1933年)

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廃両改元<1>

皇紀2593年(1933年) 4月11日 支那大陸


 アメリカ合衆国の支那大陸への介入と門戸開放要求はフランクリン・デラノ・ルーズベルトが米大統領に就任してから一層強くなっていった。


 ルーズベルトは対支那政策としてまずは蒋介石率いる南京国民政府へ通貨政策に対して内政干渉を行った。無論、これを内政干渉と捉えられないために、チャイナ・ニューディール提案と称しての経済支援政策の一環という触れ込みである。主な政策は以下の通りである。


 1,現行通貨から新通貨への刷新

 2,新通貨移行に対するアメリカによる通貨保証

 3,通貨保証と引き換えにアメリカ資本による交換へ5%の利子還付

 4,通貨保証はアメリカへ現銀の売却によって行う


 まさに有坂総一郎が懸念していた通りにアメリカは支那へ金融介入という形で乗り込んできたのである。


 これに先立って、中立法、銀買上法が矢継ぎ早に議会を通過し、即日施行されるというものであった。これらによって、世界中の銀はアメリカに向かって流れ始め、財務省による銀の備蓄・退蔵が行なわれた結果銀の国際価格が大幅に上昇していた。だが、これはあくまで大量の銀を保有し、銀相場に影響を与える支那から銀を放出させるための一環でしかなかった。


 南京国民政府は現時点では地方政権でしかないこともあり、その財政基盤が弱いが南京や上海近郊を抑えていることもあり他の軍閥政権に比べれば抜きん出ていた。これは輸出力の違いと言うべきだろう。


 タングステンの輸出禁止から国際介入されてしまったが、後に輸出再開するにあたって禁輸前と比べて高値で売れるようになったこともありいくらかの財政再建が出来ていた。その多くはアメリカに流れていた。


 鉱物資源の輸出によって外貨を得ることに成功していた者のその多くは米ドルであり、次第に米国資本の浸透によって現地通貨がだぶつき価値を落としていくこととなったのだ。アメリカの支那市場の席巻は明らかに意図を持って行われていたことがこれで十分にわかるというものだろう。


 1,米ドルによる支那市場の支配

 2,兌換通貨であるため連動して銀相場の下落

 3,通貨価値下落による外貨不足

 4,銀の放出によって外貨準備を行う


 これがルーズベルトの大統領就任までの流れであった。しかし、ルーズベルトはそこから一段階介入の度合いを引き上げたのである。通貨政策の転換を要求したのだ。


 第一段階として廃両改元の施行が要求された。これによって国内の通貨価値を統一させると同時に南京国民政府が通貨発行権を有することを明確化させるためである。


 また、南京国民政府の財政を支える支那人銀行家たちからも銀元への通貨統合を訴える声が聞かれ、蒋も自身の政治的権力の確立と増大を目的にこれを受け入れたのである。


 アメリカ、支那人銀行家、蒋の三者による利害の一致であった。


 だが、これは日英独仏伊といった支那権益を有する各国や外国人銀行家にとっては寝耳に水であり、大反対の声が上がったのである。従来通貨による融資や債務保証を行っていた者たちにとっては通貨価値の変更は大打撃であったからである。


 だが、列強の反対をアメリカの後ろ盾の元に蒋と南京国民政府は一蹴し、4月6日、アメリカの支援の元で南京に国民政府中央造幣廠が設置され、同日に施行された銀本位幣鋳造条例によって銀本位制に基づく銀本位幣が発行され、銀両との一定相場での交換が断行されたのである。


 初期流通分とアメリカ国内流通分はアメリカ国内で準備され、アメリカ国内流通分は即日全額が引き換えされ、現銀と交換の上で現銀はそのままアメリカ政府に売却された。初期流通分は4月中に上海に到着し、順次交換されることとなっている。


「いよいよ大魔王が支那に乗り込んできたか……」


 帝都東京のオフィスでこの一連の動きを報告書にて把握した総一郞は支那大陸が列強の草刈り場になるそれを予感したのであった。

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