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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2593年(1933年)

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重巡洋艦という名を冠するモノ

皇紀2593年(1933年) 3月10日 日本本土各地の造船所


 長門型・伊勢型・金剛型の各戦艦の改装が終わったことで海軍工廠の船渠は一段落ついた状態になった32年後半から伊勢代艦の建造が始まった。


 この伊勢代艦はイタリアに譲渡されることとなった伊勢型戦艦伊勢・日向の2隻を代替するものであるが、倍する4隻の建造となっていた。これらの建造は拡張なった呉工廠・横須賀工廠の船台で2隻ずつの建造となっていた。横須賀工廠の船台上には潜水母艦の大鯨が竜骨をくみ上げた状態になっていたこともあり船台ではなく船渠での造船となったのである。


 民間造船所を頼らなかったのは機密保持の観点からのモノであるが一つには民間造船所は海軍からの発注が控えられていたこともあり、船台や船渠を目一杯使っていたこともあり、建造スケジュールから外されていたのだ。


 しかし、32年年末から33年3月までの間に三菱長崎、川崎神戸の船台に空きが出来たこともあり、いよいよ帝国海軍もインコンパラブル(超巡)規格を建造するにことになったのである。


 この際に川南豊作が海軍省に多大な献金を行うなどの根回しもあり、遂に川南工業が艦政本部と佐世保工廠からの監督を受けるという条件で2隻の建造枠を得ることに成功していた。史実では2等輸送艦や戦時標準船の量産を行っていたが、軍艦の建造実績はなかった川南工業であったが、この世界では既に豊富な建造実績を積んでおり、ブロック工法や電気溶接技術では一家言持っているのだ。


 受注において三菱や川崎は川南工業に負けたことに大いに不満を抱いてはいたが、海軍省と艦政本部から「実際の軍艦建造、それも大型艦において電気溶接とブロック工法を多用する実証試験を兼ねている」と言われては文句をつけられない。実際に三菱も川崎も三井も川南工業に電気溶接とブロック工法に関しては一歩後れを取っていたことを自覚しているだけに、海軍当局の監督下で技術供与を条件に渋々引き下がったのである。


 この艦の構想は概ね史実における最上型を拡大した形を取っている。


 しかし、1番砲塔は廃止され、10インチ砲4基8門というものになっていた。10インチ砲は既存のヴィッカース1905年式45口径10インチ砲では能力不足と砲身数が足りないと判定されたことから新型砲が開発されていた。九二式60口径25cm砲として開発がされていたのだ。


 矢鱈長い砲身ではあるが、その分だけ高初速、長射程を狙えるというメリットがあったこと、砲身内筒をボーリングすれば50口径31cm砲に転用することも可能との判断によるものであった。


 また、史実で問題を起こした強度甲板や砲塔の歪みなどは史実の利根型と同様に上甲板を強度甲板とすることで問題を解決していた。この船体構造は大型化した利根型に準拠したものであり、合理化と欠陥の解決が為されている。


 旧1番砲塔付近の空きスペースにはイタリアから伊勢型のオマケ代わりに得ることが出来たブレダ1932年式54口径37mm機関砲が4連装化されて2基装備されている。本家本元では連装仕様が標準であるが、帝国海軍はこれを無理矢理4連装化したのである。また、後部甲板にも同様に2基、高角砲甲板にも左右3基の6基配備されている。


 比較的対空火器が充足しているが、これは欧州派遣艦隊が地中海において演習を行った際に有効な弾幕を張ることが出来なかったことから弾幕を突破して艦隊上空から模擬弾を投下出来たという結果を戦訓として取り入れたのである。


 この際に帝国海軍は適当な対空火器を有していなかったこと、大英帝国のヴィッカースQF2ポンドポンポン砲……毘式四十粍機銃……がトラブルが頻発していたこともあって早急に適当な対空砲を導入することを迫られていたが、欧州派遣艦隊がイタリア土産として持ち帰ったブレダ1932年式54口径37mm機関砲はほぼ同サイズであるが、砲弾重量が軽くなり、初速も速く、故障も少ない優秀な砲であった。これは帝国海軍にとってまさに待望とも言えるモノであったのだ。


 また魚雷兵装は開発なったばかりの九三式魚雷を装備する61cm5連装魚雷発射管を4基搭載している。次発装填装置が搭載されていることで合計40本が積まれている。


 機関に関してはロ号艦本式大型罐8基を積み、従来よりも若干であるが高圧になっている。また4基4軸の艦本式タービンを搭載し、これによって18万馬力、最大速力35ノットを発揮する。


 こうして覆面巡洋艦の建造は開始されることとなった。表面上はアラスカ型戦闘巡洋艦と張り合うものではなく、一貫して露払い役としての役割を強調しているが、明らかに排水量は1万5千トンを超えているのは誰の目にも明らかだった。だが、電気溶接の多用によって鋲接が少ないことで重量を節約出来ていると海軍省は各国の駐在武官に強弁したのであった。



 最上型重巡洋艦 最上・三隈・鈴谷・熊野


 基準排水量:15000トン

 公試排水量:20000トン

 全長:210m

 全幅:24m

 機関:ロ号艦本式大型罐8基

 主機:艦本式タービン4基4軸

 馬力:18万馬力

 速力:35ノット

 主砲:六〇口径九二式二五糎砲 連装4基8門

 魚雷:61cm5連装発射管4基 九三式魚雷装備

 高角砲:四十口径八九式十二糎七高角砲 連装4基

 対空砲:五四口径武式三七粍機関砲 4連装10基

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― 新着の感想 ―
[一言] 魚雷ではなくブレダ機銃ですか……。 イタリアの中口径の対空砲のスペックは知りませんでしたがポンポン砲よりマシだったんですね。
[良い点] 最上型がB65と島風を足して二で割った様な性能になった…しかもコンテ・ディ・カブール級やアンドレア・ドリア級みたいに砲身ボーリングで25.4センチから30.5センチにする事も出来るとか、こ…
2020/12/03 10:38 退会済み
管理
[良い点] 魚雷搭載で揉めた妙高型、使いやすさ優先で艦橋を大型化したら台風被害を受けた高雄型をすっ飛ばしての最上型(拡大版) 艦隊建造を後回しにした分、長く活躍できるよう史実のような改装も視野に入れ…
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