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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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ビキン攻略戦

皇紀2583年(1923年)8月25日 ダリネレチェンスク


 浦塩派遣軍は7月中にダリネレチェンスクまで進出し、周辺地域の占領を進めるとともに恭順した町や村の鎮撫を行い、鉄道修復と物資集積を待っていた。


 8月に入ると鉄道復旧も完了し、順次上陸用舟艇を鉄道輸送され上陸挟撃作戦の準備は15日には完了していた。だが、準備は整った頃から天候が悪化し、上陸作戦を敢行するには不都合であると判断され作戦実施は延期された。


 23日になって天候が回復すると浦塩派遣軍司令部は作戦実施を発令し、陽動としてビキン南方の仮称第一要塞線への牽制攻撃が開始された。


 仮称第一要塞線への攻撃には七年式三十糎榴弾砲が用いられ、本砲の初陣となった。重砲の投入による制圧射撃の効果もあり、要塞前面の敵陣地は24日にはほぼ壊滅させることが出来たのであった。ただ、敵も要塞には重砲を持ち込んでいたらしく、白兵突撃を敢行すると射程内に入るや釣瓶打ちにしてくるため、結局歩兵による攻撃は中止することとなった。


 そして、25日……。


「我が第8旅団がいよいよ上陸夜襲を掛ける時が来た! いざ征かん! 皇軍精神ある限り、露助など恐れるに足らん!」


 第8旅団長荒木貞夫少将は麾下の兵たちを前に士気鼓舞のため訓示していた。


 上陸作戦は第8旅団がその任に就いていたのだ。


 第8旅団はダリネレチェンスク攻略時において抜け駆けをすることで味方の援護を受けるまでにダリネレチェンスク市街地へ突入、敵の守備隊司令部を包囲し降伏を勧告したのである。


 敵は降伏を拒み徹底抗戦したが、司令部と前線の連絡が遮断されたことと、浦塩派遣軍の他の部隊の戦場への到着により挟撃を受け前線部隊が壊滅したことで最終的に降伏を受け入れたのであった。


 浦塩派遣軍司令部は第8旅団の抜け駆けを問題視し、旅団長荒木少将を数日間謹慎させるという処分を下したが、命令違反を犯した割には軽い処分であった。また、荒木少将の抜け駆けによる戦死傷者の低減という結果が彼の名声を高めることとなってしまったのだ。


「良いか、この上陸作戦で敵要塞線は孤立する。孤立した敵なぞ、浮足立ってしまって物の数ではない。竹槍でも勝てる相手だわい」


 荒木は威勢よく訓示を続ける。


「そうだ!」


 彼の訓示に将兵たちが呼応しすると同時に笑い声をあがる。


「若い者は元気があって良いのぅ。じゃが、油断はするな……」


 荒木は上機嫌でそう言い訓示を終えた。


挿絵(By みてみん)


 第8旅団は夜陰に紛れ上陸用舟艇にてウスリー川を下り始めた。空は曇っており月明かりがなく、視界がないことが彼らに味方していたのである。


 敵哨戒圏に入ると原動機を止め、静かに川を下り、ポクロフカの集落へ上陸。ここから陸路でビキンを目指す。ポクロフカを見下ろす山中に敵要塞線は延びているが、敵主力はシベリア鉄道と街道に面した部分に集中していることが判明しているため、無視してのポクロフカ上陸である。


 ポクロフカ上陸後、第8旅団は1個大隊をポクロフカに残し、一路ビキンを目指した。


 辺りは氾濫原の湿原であるため行軍には苦労しているが、ビキン-ポクロフカを結ぶ街道沿いに行軍していることもあり迷わずビキンまで進めたが、ビキン前面には陣地が構築してあり、第8旅団は遂に敵と遭遇することとなるのであった。

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