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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2592年(1932年)

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ジュラはジュラでもゲンベシュ・ジュラ

皇紀2592年(1932年) 10月15日 ハンガリー王国


 摂政ホルテイ・ミクローシュ提督率いるハンガリー王国ではカーロイ・ジュラ内閣が対ユーゴ戦争における輝かしい業績を残し勇退した。後を継いで内閣を組織したのは同じくジュラの名を持つゲンベシュ・ジュラであった。


 彼はオーストリア=ハンガリー帝国においては参謀本部勤務の大尉であったが、ホルテイが欧州大戦後にクーン・ベラ率いるハンガリー共産政権に反旗を翻すとこれに従い「ハンガリー全国防衛連盟」を結成しこれに続いた。


 このときからホルテイの信任を得て、1929年にベトレン・イシュトヴァーン内閣で国防大臣を務める。そして、遂に32年秋に史実通りに首相に登板することになる。


 その間、ナチ党やドイツ・ミュンヘンの極右勢力と関係を持ち、政治家としての人脈作りを行い、またイタリアのベニート・ムッソリーニを範にファシスト政党「人種防衛党」を結成し、ファシスト国家建設を唱えたのである。


 ホルテイがゲンベシュを登用したのは対ユーゴ戦争におけるイタリアとの関係強化に伴い、親ファシスト勢力を活用した方がイタリアの歓心を買えると判断し、同時に対ルーマニア、対チョコスロヴァキア、対ソ連への後ろ盾にするためであった。


 ゲンベシュ登用の効果は早速現れ、イタリア側からダルマティアの自由通行権を得ることが出来たのだ。無論、イタリア側にとっても目論見があってのことであるが、イタリア・ハンガリー間における特定産品の関税の撤廃もしくは優遇とセットとなったこれは相互に大きな利益を得ることになったのである。


 ハンガリーにとっては海への出口を得ることとなり、イタリアにとってはブロック経済化しつつある世界市場において輸出を拡大出来ることで外貨獲得の機会を得る結果となったのだ。特にハンガリーは石油輸出が可能となり、その多くをイタリアや大日本帝国が購入することで地中海における日伊両国の存在感が増すこととなった。


 金剛型戦艦が地中海を遊弋し、付属する加賀型空母からの航空支援により旧ユーゴスラビア地区の残党狩りが進んだことでハンガリーの旧領土鎮撫はすこぶる好調に進んでいったのである。イタリアが併合したダルマティア地域も海上交通の安定でイタリア本土からの移民が急増したことで旧来のセルビア人やクロアチア人と人口構成が逆転し治安の安定化が一層進むことになったのだ。


 そして、エンゲルベルト・ドルフースとクルト・フォン・シュシュニック率いるオーストリア王党派もスロヴェニアという策源地を得たことでいよいよザルツブルクやリンツなど主要都市はほぼすべてが王党派の手に落ち、共和国政府が維持するのはウィーンとその周辺だけであったが、彼らはそれでも反ハプスブルクを唱え抵抗を示していたのである。


 チェコスロヴァキアは共和国政府を支援するべく義勇軍を送り込もうと画策していたが、ズデーテンラントにおいてドイツ人が不穏な動きを見せていることから結局は見送り、実質的に共和国政府は完全に見捨てられた形となってしまったのである。


 この状況において首相の座に就いたばかりのハンガリーのゲンベシュはホルテイの黙認の元でオーストリア王党派へ援軍を送り、来るべきハプスブルク帝国復活におけるハンガリーの優位性を確保しようと動いたのであった。

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