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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2592年(1932年)

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オリンピック<1>

皇紀2592年(1932年) 7月30日 アメリカ合衆国 ロサンゼルス


 前回のアムステルダムオリンピックにおいて快挙を達成した日本代表団は今回のロサンゼルスオリンピックの閑散としたそれに衝撃を受けざるを得なかった。


 アムステルダムでのオリンピックの時は世界の景気も悪くなく、欧州大戦以後はじめてドイツの参加が認められたこともあり大きく盛り上がったが、今回のオリンピックは世界情勢を反映して参加国や選手の数が半減し非常に寂しい状態となっていた。


 史実でもロサンゼルスオリンピックの閑散とした状態はそうであったが、明らかに違ったのは大日本帝国が未曽有の好景気の真っ只中であり、企業は実業団の設立などをして全国規模でスポーツ振興に力を入れていたことだ。


 帝国陸軍は自転車、馬術、フェンシング、射撃に力を入れて本気で勝ちに行く腹積もりであったし、海軍もセーリングに力を入れて海軍兵学校だけでなく商船学校などにも補助金を出し発破をかけていたのだ。


 軍部の力の入れようが民間にも伝播するのはそれほど時間が必要ではなく、財閥が企業イメージの向上と顧客へのアピールを兼ねて実業団を組織し、水球、競泳、飛び込み、陸上競技に力を入れたのである。


 そうなると国内リーグの組織が必要となり、また、競技会の定期開催と新人発掘という好循環と繋がっていったのだ。


 これらの取り組みの成果もあり、国内のスポーツ熱が高まっていったのであるが、企業もいくらでもカネが出せるわけではないため、自然と公式賭博へと議論は向かっていったのだ。時期的に競馬における馬券販売と連動しての出来事であった。


 農林省と陸軍省は軍馬や輓馬の生産という目的で馬券販売へと連携していたが、そこにスポーツ振興というそれが出てきたことで文部省が省利省益のために口を出し始めたのである。


「運動競技に関係することであれば我々の管轄だ。賭博など以ての外だが、進行のために資金が必要なのは認める。一言我々に話を通してくれるのであれば、その話考えんでもない」


 大日本帝国の中央官庁で最も勢力の小さい官庁が文部省であるのは言うまでもない。官僚の花と言えば外務省や商工省、大蔵省であり、権益を握っているのも商工省、大蔵省、鉄道省、農林省だ。それ以外の省はそれほど力があるわけでもなく地味な存在なのだ。


 そんな中で権益拡大のチャンス到来となれば動くのが官僚として当然のことだ。こうした流れで活動資金を得たい各競技の連盟などは文部省と水面下で手を握ったのだ。


 無論、それに待ったをかける存在があった。大蔵省である。


「売り上げの一部を国庫に納めるという話でなければ認めるわけにはいかん。その辺りの話が疎い君たちには適切な忠告をする存在が必要であろう?」


 要は自分たちを噛ませないと認めないという脅迫だった。競馬の馬券販売には陸軍省というバックがあったために農林省に口出せなかったが、軍服を着た怖い存在が居ない弱小官庁相手にはいくらでも強気に出るのもまた官僚の常だった。


 こうして大蔵省と文部省、そして各競技連盟が一緒になって帝国競技振興籤が発売されることとなったのだ。


 そうなると、文部省の一部官僚は省利省益を追求するために更なる権益を生み出そうと画策したのである。彼らにとって答えに行きつくのは非常に容易であったのだ。


「なければ作れば良い。そして、その好例はそこにある」


 30年にカナダ・ハミルトンで開催された大英帝国競技大会ブリティッシュ・エンパイア・ゲームズであった。彼らはこれを参考に大日本帝国の領域内での一大競技大会を行い、それによって帝国競技振興籤の売り上げ拡大を狙ったのだ。


 こうして官僚たちが暗躍しつつ日本のスポーツ振興はここ数年で急激に推し進められていったのだ。そしてロサンゼルスオリンピックの開会の時が来た。

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― 新着の感想 ―
[一言] この様子だとこの世界のロス五輪、日本の獲得するメダルの数が増えそうですね… そしてその4年後のベルリン五輪は、どんな進み方を迎える事になるのやら。ちょび髭が大人しくてドイツが直ぐに戦争を仕掛…
2020/08/09 11:42 退会済み
管理
[一言] この時代にはまだオリンピックは商業主義的じゃなかったから余計にでしょうね。やはりテレビの普及は確実に世を変えたのかな。 テレビと言えば、日本って意外と電気分野は欧米先進国と比べても劣る物では…
[一言] 舞台裏はいつも醜いことを実感してしまいます。
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