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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2592年(1932年)

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1932年時点での世界情勢<3>

皇紀2592年(1932年) 1月1日 世界情勢


 欧州情勢は東に西に火種や騒乱が後絶たない1年であったが、それは何も欧州情勢に限ったものではない。


 ペルシアにおいてはペルシア回廊を縦貫するペルシア縦貫鉄道の建設が開始され、カスピ海とペルシア湾を結ぶ一大プロジェクトに国力を注ぎ込んでいたのである。これには大英帝国による対ソ戦略も絡んでいた。


 旧式戦艦のソ連への売却というソ連発の情報で米ソの接近を疑った大英帝国は比較的鉄道建設が容易であり、尚且つソ連の資源地帯であるコーカサス・ウクライナへアクセスしやすいペルシアに目を付けたのであった。


 大英帝国の支配下にあるイラクのメソポタミア鉄道と合わせて、コーカサスへのルートを確保することは国策上大きな意味を持っていた。


 バスラを起点とするメソポタミア鉄道はウルやウルクの古代遺跡を横目にユーフラテス川に沿って北上、バグダッドに至る。バグダッドからはティグリス川を渡り、ペルシア国境に近いカーナキーンへ向かう路線とトルコ国境にほど近いモスルへ至る路線に分岐する。


 大英帝国はこのメソポタミア鉄道を延長しザグロス山脈を越え、ペルシア領のタブリーズもしくはバンダレアンザリに向かう路線を計画していたが、それとは別ルートの確保も目論んでいたのである。


 シャトルアラブ川を遡上する必要があるバスラやアバダン、ホラムシャハルはシャトルアラブ川の砂の堆積を定期的に浚渫する必要があり航路の安定確保の面で難点を抱えていたこともあり、ペルシア湾に直接面する港湾を起点とする鉄道を大英帝国は欲していたのだ。


 そこで白羽の矢が立ったのがバンダルシャープールであった。アバダンからも直線距離で100km以内であり、ここを起点にコンビナートの建設を行い、英国資本のアングロペルシャンオイルカンパニー(APOC)はペルシアにおける石油の集積地として再開発を進めることにもなったのである。


 APOCはペルシア政府との石油をめぐる利権争いを引き起こし、継続協議として持久戦で自社権益の維持を狙っていた。ペルシア政府もまたAPOCがロイヤリティの引き下げを撤回しなければ権益の回収を迫り予断を許さない状況であったが、彼らもまた振り上げた拳の下ろしどころが見つからず持久戦での条件闘争を続けていたのある。


 大英帝国、ペルシア、APOCは立場が違っても石油開発は重要であり、権益争いはあるにしてもコンビナートと港湾、そして鉄道の建設には積極的であり、そこは切り分けて歩みを共にしていたのである。


 31年中にバンダルシャープール、アフワーズ、アダバンの環状鉄道が開業し、シャトルアラブ川航路に頼らずにイラク内陸への物資輸送が可能になったことで建設工区が短いカーナキーンからの路線延長工事が年末には始まった。35年までの工期でザンジャーンを経由してタブリーズまで達する見込みである。途中のザンジャーンから分岐してラシュト、バンダレアンザリへの延伸もほぼ同時期の完工を見込んでいた。


 ペルシア縦貫鉄道は既存ルートの活用が出来ないため、ゼロスタートの建設であることから40年を目処とし、アフワーズを起点としてアラーク、コムを経由してテヘランへ至るルートを計画している。この路線の建設は史実同様、建設の苦難とともに語られることになるが39年までに全通することになる。


 この大英帝国の動きにはソ連側を大いに刺激し、それが元で経済相互援助会議(コメコン)の設立に至ることになったが、それは偶然の産物とは言え、後年、大英帝国を大いに悩ますことになる。

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