表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2592年(1932年)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

582/910

1932年時点での世界情勢<2>

皇紀2592年(1932年) 1月1日 世界情勢


 ポーランドはチェコスロヴァキアとの戦争で結局は分割されたテッシェンを全域確保したに過ぎなかった。騎兵部隊の喪失という多大な損害対して得たモノは余りにも小さなものであり、政権基盤にダメージを与えることとなり、年末には政権が崩壊し、新政権が誕生したが暫くは失った兵力の回復に注力せざるを得ない状況であった。


 また、ダンツィヒ湾が海上封鎖されてしまったことによって経済状態は恐慌以来の低迷に加えさらに打撃を受けることとなったのである。内需拡大を図ろうとするが輸入が出来ないことで製品を生み出すことが出来ない。元々農業国家であるがゆえに産業の基盤も弱く、資源と言えば石炭くらいなものである。それが故に深刻な不況にあえぐことになったのだ。


 チェコスロヴァキアも同様に深刻な孤立を深めていた。ポーランドが兵を退いたとは言ってもハンガリーは列強と結んで巨大化しつつあり、オーストリアも王党派勢力が日増しに優勢になりつつあること、ドイツはズデーテンラントのドイツ系住民迫害というそれで圧力をかけ続けていること、それらすべてがチェコスロヴァキアを追い詰めていたのである。


 昨日の敵は今日の友。


 12月25日、ポーランド・チェコスロヴァキア友好条約がポーランド南部レンベルク結ばれた。いわゆるクリスマス友好条約と言われるものだ。お互いに足りないモノを補い合うことで孤立した現状を打開しようというもので工業製品をチェコスロヴァキアがポーランドに供給し、農産物を逆に供給するというものであった。


 だが、不足するものは燃料である石油も同様であった。東欧で流通する石油の殆どはルーマニアとハンガリーで産するものだった。ポーランド・チェコスロヴァキアの両国はソ連との接近を画策し、不足する石油をソ連から手に入れようと考えたのである。


 クリスマス友好条約が結ばれた同じ日、ポーランド・チェコスロヴァキア・ソ連の三ヶ国が秘密裏に集まり、経済相互援助会議が同じレンベルクで開催される。これは後にコメコンと称され、所謂東側陣営の経済的結びつきを象徴する組織だった。


 国際的に孤立している国家が結びつきを強めていくことは後の世界に大きく影響を与えていくことになるが、現時点では列強諸国も想定は出来ていなかった。いや、そもそもがコメコンの存在に気付くことはなかった。ゆえに事実上の経済制裁を受けているにもかかわらずポーランド・チェコスロヴァキア両国が経済破綻を起こさない理由が数年の間わからなかったのであった。


 一方、ソ連の指導者であるヨシフ・スターリンはクレムリンの執務室で笑みを浮かべていたのである。労せずに東欧を勢力圏に組み込むことが出来たからであるが、彼にとってもコメコンが後に役立つことになるとはそれほど思ってはいなかったからだ。恩を売っておく程度のものであった。


 32年1月から不足する石油が順次供給されることとなり、また、鉄鉱石など不足する資源の供給も始まる予定となっており、チェコ製の工業製品もまた同様にソ連領内に流通し始めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] チェコスロヴァキア・ポーランド・ソ連 による同盟か…始まりは呉越同舟だけども 後々の東側的な同盟にシフトしていくわけ ですね。まあチェコは元々親ソ連的な所が ありましたからこの結びつきは何れ…
[一言] 工業力のあるチェコスロバキアと農業はそれなりに強いポーランドが、その両方を求めるソ連が接近…何も起こる筈もなく… これ、ワルシャワ条約機構が早い段階で生まれそうな…
2020/06/14 09:34 退会済み
管理
[気になる点] ひ、東側陣営ってなんだっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ