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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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ベオグラード消滅

皇紀2591年(1931年) 11月18日 バルカン半島


 列車砲による殲滅射撃が行われた15日、ベオグラードは文字通り焦土化した。


 事前に遣欧艦隊からビラが空中散布されラジオ放送による避難勧告が行われていたが、ユーゴスラヴィア王国政府は前線から離れたクラーリェヴォへ疎開していたもののベオグラードに市民は残留していた。


 残留していた市民は今までハンガリー軍がベオグラード市街地への砲撃を控えていたこともあり楽観的に考えているものも多く居た。無論、避難を開始したものも居たが、逃げ延びる者たちに臆病者と罵るなどしていた。


 やがて避難勧告に示された避難時間が過ぎた15日正午、宣告通りに砲撃が開始され、榴弾が次々とベオグラード市街地に降り注ぎ、煉瓦や石造りの建造物を粉砕していった。その時点での被害は着弾地点周辺の建造物が倒壊した程度で犠牲者もそれほど多くはなかった。


 砲撃が一時止んだことで市民たちは片付けを始めた時、再び彼らの頭上に砲弾が降り注いだ。


 降り注いだ砲弾は今までの榴弾だけではなく焼夷弾も含まれており、倒壊した建造物や家屋の剥き出しとなった木材や木製家具といった可燃物に次々と引火、大炎上を起こしていった。


 旧市街地であったことも災いし、避難経路であるはずの道路が倒壊した瓦礫によって封じられ、また至る所で火災を発生させていたことで市民は逃げまどい、やがて窒息、焼死という惨劇が起きたのであった。この日はたまたま風が強いこともあり、砲撃の被害が少なかった地域にもまた燃え広がっていき文字通りの焦熱地獄や炎熱地獄であった。この火災によってベオグラードは市街地全てを燃やし尽くされたのであった。


 消防隊による消火も焼け石に水であり、燃えるものがなくなり自然鎮火するまで待つしかないという状態であり、結局鎮火したのは16日の昼から17日の朝のことであった。だが、一度鎮火した場所で再び発火し炎上するということは18日になっても起きていた。


 事態を把握したユーゴ政府はこれに市民を虐殺する忌避すべき行為だと16日に非難声明を発表したが、日伊洪三ヶ国による17日の共同声明で十分な避難時間と避難勧告、砲撃予告を行っていたにもかかわらずユーゴ政府が手を打たなかったことこそ犠牲が出た原因であると糾弾され、またユーゴスラヴィア人民解放戦線もまたユーゴ政府を非難するとともに大量破壊兵器の使用を糾弾するが日伊洪三ヶ国はユーゴ人民解放戦線の声明を無視し、18日にはユーゴ政府に降伏を勧告を迫った。


「速やかなる降伏なくば迅速かつ徹底した壊滅あるのみ」


 降伏条件や他の文言は一切なく、降伏ありきの勧告であった。ただ、”徹底した壊滅あるのみ”という言葉に一切の嘘偽りがないことは11・15ベオグラード消滅で明らかであった。


 もっとも、この時、殲滅射撃に用いた焼夷弾は既になく、出来ることは列車砲や中欧派遣軍の機動砲による榴弾を用いた通常の攻撃くらいなものであった。


 だが、降伏勧告がユーゴの統治下であるセルビア・モンテネグロ・コソボだけでなく、人民解放戦線が占拠するマケドニア、そしてクロアチアにラジオ放送や空中散布のビラで伝わると各地で降伏しようとする者と徹底抗戦を主張する者が衝突が頻発、また軍部隊を市街地から追い出し無防備都市宣言をする都市や村落が相次いだ。


 人民解放戦線が支配するマケドニアにおいても同様の衝突は起きていたが、ヨシップ・ブロズ・ティトーの指導の下で混乱は最低限に抑えられていた。もっとも、それはベオグラードの惨状を正しく理解出来ていないからでもあったが。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 発案はどっかの幼女だろうか?
[一言] 列車砲は数揃えられないし、発射間隔が長いからなぁ 元々要塞や拠点攻略用で面制圧には不向きだから野戦重砲の大量投入の方がリアリティはあると思う。
[一言] 大都市一つを砲撃で焦土とか核攻撃に近いものがありますよね。
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