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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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ローマより浪漫を込めて

皇紀2591年(1931年) 10月25日 ハンガリー ノイシャッツ


 ハンガリーが旧領土の一部回復を宣言して2ヶ月。ノイシャッツにヴォイヴォディナ総督府が設置され行政統治が始まった。これによって旧領土のマジャール人はユーゴスラヴィアの圧政から解放され、祖国に復帰できた喜びを分かち合っていた。


 ハンガリー本国に近い地域での民政移管はこの2ヶ月でほとんどがスムーズに行われ、経済もハンガリー本国経済に組み込まれたのである。無論、使用される通貨もハンガリーの通貨に切り替わっている。


 だが、未だに戦火は止んでおらず、旧帝国時代の南部国境に近い地域では戦闘は継続しており、ユーゴスラヴィア軍だけでなく時折クロアチア独立勢力との交戦が続いていた。クロアチア人貴族などはハンガリー王国への復帰を望み、帰順を表明していたがそれを望まぬ共和主義者や独立主義者はポツダム宣言の後も反ハンガリー、反セルビアを唱え抵抗を続けているのだ。


 ハンガリー軍は極力クロアチアにおける戦闘は避けつつ、ユーゴスラヴィアとのみ戦闘を行うことに専心していたが、イタリア王国がクロアチア独立勢力と縁を切ったことで自主独立を目指すクロアチア独立勢力からの攻勢が始まったのである。


 これによってスラヴォニア、ヴォイヴォディナは三つ巴の戦場と化していた。


 だが、ハンガリー軍はポツダム宣言以後に軍備制限から脱却することで動員戦力が格段に充実したことで警察を軍隊代用としていたがこれを置き換えることに成功していた。これによって予備兵力に余裕が出来たことでユーゴスラヴィア軍への圧力だけでなく、クロアチア独立勢力の討伐にも戦力を向けることが出来る様になった。


 そして、それだけでなく、待望のハンガリー軍復活の象徴がペーターヴァルダイン要塞に隣接したペーターヴァルダイン駅及び操車場に到着したのである。10月19日のことであった。


 イタリア軍制式列車砲Cannone da 381/40 AVSである。


 艦載砲を転用した40口径15インチ砲を持つこの列車砲はイタリア王国ラスペツィアの倉庫で長らく保管されていたものであるが、イタリア首相ベニト・ムッソリーニはすぐに用意出来、尚且つ有用である砲戦力と判断し、徹底して整備を行い、試射試験の後にこれを無償供与したのである。


 この列車砲の無償供与がイタリア大使館経由で10月12日に伝えられたミクローシュ・ホルティ王国摂政は思いがけない強力な兵器が手に入ったことで戦争の勝利を確信したと側近に漏らすのであったが、それは、無理もないことだった。


 元々ホルティは海軍提督で有名を馳せた人物である。


 戦艦の主砲と同等の戦力が4編成も手に入ったこと、それも現在の戦線を考えれば安全圏から敵首都であるベオグラードに砲弾の雨を降らせ、灰燼と帰すことが可能であることによる敵への心理的圧力は他の戦力では代替出来ないほどのものであると認識があった。


「富永を呼べ」


 ホルティはノイシャッツにいる軍事顧問団長兼観戦武官である富永恭次少佐をブダペストへ呼び戻すように命じた。


 翌13日、王宮に出頭した富永はホルティに驚くべきことを伝えられるのであった。


「富永よ、貴官に列車砲4編成を預ける。機動師団の運用で実績のあった貴官ならばこれを預けるのに心配はいらぬだろう。貴国が満州で列車砲の集中運用を行ったことは知っておる。折角手に入った列車砲である。今度はこれを用いて見本を見せてもらえぬだろうか?」


 富永はこの時初めてハンガリーが列車砲を手に入れたことを知ったのであった。まさかの事態に富永は返答に窮したが、軍事顧問を引き受ける自分たちが運用の指揮を取らずに誰が取るのかと考えると表情を引き締めてそれを受け入れることを伝えた。


「列車砲はここブダペストを素通りさせ、ノイシャッツへと向かわせるように手配する。恐らく19日か20日頃には着くだろう。鉄道工兵や鉄道省の人材が必要であれば手配させよう。便宜は図る故、頼んだぞ」


 王宮を辞した後、問い合わせと確認のために立ち寄った日本大使館はそれを知らなかったことでイタリアが無通告で列車砲を譲渡したことを知ったのであるが、これには皆一様に驚きを隠せなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、これ、ブームくるねWW 自転車に続き、列車砲
[一言] 流石、欧州列強の中では他の列強の後塵を拝するとはいえそこは欧州の国。ちゃんとした戦力を陸続きですぐに送り込めるのはイタリアの強みですね。 第二次大戦時のイタリア陸軍砲兵の資料(特に日本語)っ…
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