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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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機動砲開発の顛末<3>

皇紀2591年(1931年) 5月30日 帝都東京


 機動砲の開発が本格化したのは30年5月のことであった。ここにきてやっと史実における機動九〇式野砲のそれが見えてきたのである。


 12月には試作砲が完成し、830mmパンクレスタイヤを装備し、車軸はサスペンション方式として各種改修調整したものが出来上がったのである。


 その性能は史実機動九〇式野砲と全く同一のものでそのまま採用になるのかと思われていたが、そこに陸軍省と参謀本部から横槍が入ったのである。31年1月には富津試験場において評価試験をクリアしたのであるが、そこから陸軍側の欲張った要求が始まったのである。


「軽量化が出来ないか」


 最初はこれであった。無論、出来ることはしたのであるが、だがこれがいけなかった。


「戦闘運用したら砲架が耐えきれなかった。砲身より前に壊れるなど戦場で使えない」


 軽量化改造によって駐退複座機と砲架に故障や破損・破断が頻発したのである。


「耐久度を増しつつ軽量化をせよ」


 矛盾する要求に設計陣は苦戦しながらも対応を続けて、これを何とかクリアしたことで元の状態よりもいくらかの軽量化に成功した。


「たったこれだけの軽量化しか出来ないのであれば最初の案と変わらんじゃないか」


 流石にこれを聞いた有坂総一郎は陸軍側の担当者に抗議を行う。有坂グループ全体から会長は陸軍に甘すぎるから理不尽には応戦しろと突き上げがあったことで言わざるを得なかったのであるが、それとは別に振り回される間に量産化が出来ていたことに腹を立てたことが大きい。


 これによって結局、量産性やコスト的な問題で当初案に戻ったが5月1日付で制式採用され、8月からの量産開始という方向になった。今は治具など生産基盤を整えている段階である。


 だが、それは一つの終わりであるが、また始まりであった。ドイツから帰国した駐在武官が持ち込んだ資料が技術本部に回されたことが発端であった。


「4輪式にして運搬性能を上げつつ旋回式砲座にしたらどうだろうか?」


 まさに今までやってきたことを否定するような提案であった。だが、これに乗り気になったのが参謀本部であったのだ。


「旋回式砲座であるなら砲の向きを変えるのも便利だ! 是非、それはやろう!」


 無茶苦茶であった。だが、理屈は通っていた。野砲にこれを適用するのが適切かはわからないが、少なくともドイツの88mmFLAKや88mmPAKはそういう仕様だ。アリかナシかで言えばアリだろう。


 実際、88mmPAKは高射砲同様に十字砲架を採用し、トレーラーから下ろした場合に限ってだが360度の旋回出来、全周射撃が可能だ。トレーラーに載せていても射角は左右30度に限られるが可能である。


 だが、これを開発するとなるとゼロベースでやらないと駄目である。文字通り振出しに戻るのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 軍事メーカー側も大変だ。
[一言] 砲身転倒防止の為に重量が必要なのが、一軸2輪式野砲の限界ですよね。 90式~95式が、砲身長2割減で重量も約2割減 各国の新型一軸2輪式野砲も75mm級だと、砲身長で係数でも決まっているかの…
[気になる点] 史実では更なる軽量化を目指して95式に至る訳だが、まさか、歴史は変わるのか。
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