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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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ポラッケ、襲来

皇紀2591年(1931年) 5月15日 チェコ・ポーランド国境 テッシェン


 ユーゴ侵攻を宣言している日伊両国やベッサラビア侵攻を狙っているソ連ではなく、真っ先に動いたのはポーランドであった。


「1920年より約10年……今こそ同胞の住むこの地を祖国へと返り咲かせる好機! 我が精鋭騎兵隊は今こそ1920年の屈辱を戦場で雪ぐのだ!」


 まったく自分の都合でしかないその演説によって侵攻が開始されたが、チェコスロヴァキア軍の抵抗は薄く、5月11日当日中にテッシェン全域がポーランドによって”解放”されたのである。


 目的を達し、そこで停止したならばよかったが、条件の良い停戦を目論んだポーランド軍は西方のオストラウに次なる標的を定め一部の部隊を残し前進を開始する。


 流石のチェコスロヴァキアもプラーグ及びブリュンで再編成していた軍部隊を急派し、オストラウ郊外のプロシュコヴィッツで激突したのである。


 ポーランド軍:歩兵2個師団、騎兵1個師団とチェコスロヴァキア軍:歩兵3個旅団である。数の上ではポーランド軍の方が勝っていたが、チェコスロヴァキア軍にはポーランド軍よりも多い軽機関銃を装備していた。


 チェコスロヴァキア軍はプラーグ市内やブリュン市内で徴発出来た十数台のトラックに軽機関銃小隊を載せ、即席の機動戦闘車を用意していた。これはシベリア出兵後半の日本軍のそれを見習ったものであるが、装甲板もなく、荷台に木箱を積んで仮銃座にしただけである。


 数に勝るポーランド軍は騎兵突撃によって先制攻撃を開始、機動力に富む騎兵の突撃は塹壕などがない野戦においてはやはり有利な部分は多く存在し、チェコスロヴァキア軍の最前線を食い破っていった。食い破られた前線には後続の歩兵が襲い掛かり蹂躙していくという教科書通りの戦闘が行われいた。


 だが、第二戦線に到達した歩兵部隊を待っていたのは突撃を敢行した騎兵部隊の戦死傷者だった。何が起きたのかわからないままであったポーランド歩兵部隊に大量の銃声が聞こえたのはその直後であった。


 銃声とともに大量の銃弾がポーランド軍に弾雨となって降り注いだ。喊声とともにトラックが突っ込んでくるとそのトラックから再び大量の銃弾の雨が彼らを襲ってきたのである。


 状況を察したポーランド軍の指揮官たちは散開を命じるとともに砲兵の支援攻撃を依頼したが、その頃にはトラックに分乗した軽機関銃チームによって制圧されてしまっていたのである。


 敗北を悟ったポーランド軍はテッシェンに向かって撤退を開始したが、時折、チェコスロヴァキア軍のテクニカルによる追撃を受け損耗していくのであった。


 テッシェンに逃げ込んだポーランド軍は本土からの後詰を得て死守の構えを見せていたが、敵の新兵器の登場による混乱は軍上層部に衝撃を与えていたこともあり、積極攻勢には出ることはなかった。


 自慢の騎兵を壊滅させたテクニカルの登場と西部国境におけるドイツ軍の動きがポーランド軍の行動に制約を与えていたが、動けないのはチェコスロヴァキア軍も同様であった。ドイツはバイエルン・ザクセン・シュレジエンに軍を移動させ数は少なくとも圧力をかけていた。無論、外交においても同様であった。


 仮にテッシェンで譲歩を見せた場合、ドイツおよびオーストリアはズデーテンラントの割譲を要求することは目に見えていた。旧帝国領土と国民の復帰という面を見ればオーストリア側に正当性があるが、民族・人種的な面に関しては双方とも正当性がある。どちらにせよ、退くことは出来なかった。


 それだけではなく、軍備制限が掛かっているとは言えど、ハンガリーもまた旧領土奪還の正当性があるためドイツ・オーストリア・ポーランドと組んで分割を夢見かねない。


 だが、突っぱね続けることはまた不可能であった。ポーランドが本気で動けばテッシェンだけでなくカルパティア山脈を越えて侵攻するのもまた火を見るより明らかだったからだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] バルカン半島あっちこっちで火を噴いていれば ヨーロッパの国はそこに意識のほとんどを向けるし ロシア(ソ連)もそちらに意識が向いてしまう ソ連が日本にちょっかいをかけたら 日本がバルカンに火…
[気になる点] ちょっと史実と違う石を抜いたらあらぬ方向に倒れたでござる。 中欧政治は複雑怪奇
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