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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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大蔵省の受難

皇紀2591年(1931年) 4月6日 帝都東京


 大蔵大臣濱口雄幸は海軍が陸軍との取引に応じてあっさりと方針転換をしたことに落胆していた。


 それというのも3月31日の五相会議において艦隊派遣を否定していたにもかかわらず陸軍側から大連の陸軍燃料廠で精製された重油の供給を取引条件にされるとあっさりと方針を翻したのだ。


 確かに海軍にとって燃料問題は非常に大きいものである。毎日何もしなくても数百トン単位で重油は消費されるのであり、遠征になど出掛ければその消費量は増大する。その燃料を調達するには予算が必要であり、それを出来るだけ抑えたいというのも心情としては理解出来る。


 遼河油田で産出される重質油を精製して作られた重油は主に満鉄向けに出荷されていたが、操業規模が拡大したことで東南支那海に駐屯する英独艦隊向けに出荷するようになったことで大口定期の出荷が可能となったことで利益効率が良くなっていた。


 無論、国内向けにも出荷され石油会社を経由して海軍にも納品されてはいたが、当然、中間マージンが発生していたことでそれほど納入価格は海外産の重油と違いはなかったのだ。


 しかし、大連陸軍燃料廠からの直接納品されるようになる場合、中間マージンが存在しないことで入手出来る量が相当数増えることもあり海軍にとってはありがたい申し出であった。さすがに遠洋演習艦隊が海外で買い付ける重油に関してはどうしようもないが、国内で用いる分が安くなるのであれば海外買付分の補填にもなるので海軍にとってはそれほど悪い話ではなかった。


「歳入が増えたことで財政収支は悪くない状態だ。だが、海軍は八八艦隊の様な前例がある。英独の建艦競争に合衆国が参加するのは目に見えているだけに海軍もいつまでも建艦自粛を続けるわけがない。今はもう暫くおとなしくしていて欲しかったが……せめて鉄道省の一大事業が終わってからと思っていたが……」


 濱口の溜息は深い。


 海軍関係者からの話でアメリカにおいて1万5千トン級の重巡洋艦が2隻起工され、僚艦と思われる建造資材の集積と調達も始まっていることは濱口の耳にも届いている。


 アメリカ政府の公式発表では排水量は1万5千トンとなるが、兵装は条約に沿った8インチであり従来と同様であるとのことであったが、問題は個艦性能よりも建造数であった。建造数が著しく多い場合、帝国海軍も対抗措置として相応の隻数を確保する必要がある。まして、今まで自粛してきた分の増強をする必要があり、結果として八八艦隊建造に匹敵する規模の建造予算を組み立てねばならない。


 これが濱口にとっての憂鬱であったのだ。


「軍縮してくれている方が政府予算は余裕が出来てありがたいのだがな……政府部内における列強としての責務とやらで国際貢献という名の要らぬ世話をするなど一銭にもなりはしないというのに……全く……」


 陸海軍予算だけでなく、国際貢献の名のもとに別途請求される補正予算……事実上の戦費……もまた濱口と大蔵省にとっては悩みの種であり、これがなければ海軍予算をある程度色を付けての増額も可能であったが、海軍は当然という顔で建造予算と戦費を要求しているだけに腹立たしかったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 濱口大臣、ご愁傷様です。 まぁ、濱口大臣の不満は解るけど後々の外交等で役に立つことがあるわけだから決して無駄ではないと思いますよ。 でも陸海両軍の態度は少し腹立ちますな。莫大な予算をもらって…
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