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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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国際世論は踊る

皇紀2591年(1931年) 4月1日 欧州


 大日本帝国によるユーゴスラヴィアへの戦争状態と解釈することも可能であるとの声明が4月1日の朝刊に大々的に掲載され各国世論を大いに沸かせたのである。


 大英帝国の代表的新聞であるタイムズは以下のように報じていた。


「大日本帝国、コスモポリタニズムを提唱し、それを実践することを表明」


「ユーゴスラヴィア政府及びクロアチア反政府勢力の異民族絶滅(ジェノサイド)、自民族優越政策の即時撤廃なくば迅速且つ完全なる壊滅があるのみと事実上の最後通牒」


 これらセンセーショナルな表現で大日本帝国による中欧介入を報じたが、その背景には保守党に属するウィンストン・チャーチルが親日的姿勢を示し、タイムズに働きかけをしていたことによる部分が大きい。概ね、日英同盟以来の友好関係と支那動乱と満州事変における連携及び取引という実績が英国世論には影響を与えているからか、目立った反発の声は聞こえない。


 尤も、これには若槻演説、高橋演説による中東欧における新独立国が旧宗主国に対して行っている不法行為を大々的に宣伝非難していたことが功を奏しているともいえる。


 だが、逆にアメリカ合衆国の主要紙はワシントンポストやウォールストリートジャーナルは中立的な報道を行い、淡々と日本側の声明と中東欧諸国への糾弾を伝えていたが、ニューヨークタイムズはそんな中でも紙面を大きく割き反日的報道を行っていたのだ。


「極東の貪欲な成金が旧大陸に牙を剥いている」


 一面トップにセンセーショナルな表現と風刺画を掲載し、反日、侮日に誘導するような論調で社説を掲載していた。


「詭弁に次ぐ詭弁でユーゴスラヴィアへ恫喝を繰り返すと同時に主権を侵害、民族自決の原則すら否定するその所業はまさに黄禍論のそれを思い起こさせる」


「タタールの軛以来の欧州への災厄……イタリアもまた大ローマの再来という野望を実現せんと日本と同調している」


 このような論調で世論を煽るかのように記事がいくつも掲載され、民主党の議員や州知事など反日志向の強い有力者の談話を載せていた。尤も、ニューヨークタイムズほどではないが黄禍論を論拠もしくは懸念する論調の社説を載せる地方紙はいくつか存在していた。


 だが、この報道は意外なところに影響をもたらしたのである。イタリア系移民やドイツ系移民が恣意的な報道をするニューヨークタイムズに抗議の声を上げたのである。旧大陸の同胞の苦難を無視し、一方の声だけを伝え、無利益で仲介しようとしようとする日本を悪役に仕立てるとは何事かと訴えだしたのだ。


 ニューヨークタイムズの社内でも同様にイタリア系やドイツ系の社員たちが編集部の恣意的な報道姿勢に疑問と反発を示していた。


 尤も、彼らは親日的であったわけでも特別に国際社会への関心が高かったわけでもなかった。ただ、原初的アイデンティティーである民族意識による反感による行動だったのだ。


 しかし、アメリカ政府が腰が重かった。世論は沸騰していても、国際連盟に加盟しているわけではないアメリカが国際連盟で協議されていることに口を挟むことは出来ないからだ。出来るとしても声明を出す程度で、常任理事国の様にあれやこれやと口を挟んだり調停が出来る立場にはなかった。


 これがアメリカ国内世論をより混迷の淵に追いやったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国際『連合』ならば、やりようはあった対日牽制も、国際『連盟』未加入が故に、日本のオーストリア問題を止める事叶わず…アメリカは本当にどうして連盟加入のメリットを想像出来なかったのだろうか…
2020/04/29 12:28 退会済み
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