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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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オーストリア騒乱<1>

皇紀2591年(1931年) 2月27日 オーストリア


 オーストリア政府はチェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィアの両国からの恫喝……だけでなく国境付近に展開しつつある両国軍という現実的な圧力に屈した。


 14日には戒厳令を宣言し、「皇帝の自治体」を宣言した各自治体首長の逮捕が実施されたのである。


 この事態に反発した住民団体と警察が衝突、同時多発的に同様の事件が発生、一部の自治体では警察が袋叩きに合うだけでなく、警察署そのものを占拠され、自治体首長を解放の上で中央政府に反旗を翻したのであった。


 中央政府もこの事態に即座に対応を決断、反旗を翻した自治体へ軍隊の出動を実施、武力鎮圧に出たのである。中央政府が最も恐怖したのは治安崩壊により、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィア両軍が国境を突破し、介入してくることであった。


 外国軍の介入をさせないためにも早期の事態収拾が中央政府にとって優先すべきものであったが、その意図は失敗し、事態の長期化を招いたのである。


 というのも、「皇帝の自治体」を真っ先に宣言したチロル地方が頑強に抵抗をし、それどころか軍隊も住民と合流し、中央政府に反旗を翻してしまったのである。これにはイタリアに併合された南チロルからの義勇軍や支援物資が届いたことが大きかった。


 当初、イタリア王国はオーストリア国内の問題として逮捕などはやめるように求め、それ以外は静観する姿勢だったが、駐ローマ大日本帝国大使館から抗議が行われたことでチロルの叛乱勢力に非公式であるが支援を行うことにしたのである。


「我が帝国とイタリア王国は中東欧問題に関して主導的な役割を果たすと約したにもかかわらず、オーストリアの現状に何ら方針を示さないのは我が帝国との信義に関わると考えているが如何?」


 日本大使館は若槻演説に賛同した首相ベニート・ムッソリーニのそれを持ち出し、支援を強要したのである。


「イタリア王国がなんら示さないのであれば、現在、我が帝国において改装中の伊勢型の引き渡しに関しても留保を本国に上申せねばならないが如何?」


 と、畳みかけられた外相ガレアッツォ・チャーノは返答に窮したが、南チロル(ボルツァーノ、トレント)のドイツ系住民にイタリア陸軍の装備品を横流しすることと義勇軍として国境を越えることを黙認することで手を打つ様に提案したことによってチロルの叛乱勢力に武器弾薬が流れたのであった。


 チロルにおいて叛乱勢力が持久戦による戦線形成で一歩も引かない姿勢を示している中で、ウィーンを脱出し、叛乱勢力に合流する政治家たちも出てきたのである。


 エンゲルベルト・ドルフースとクルト・フォン・シュシュニックの二人である。


 彼らは中央政界に嫌気がさしたことと、外国勢力に振り回されて主体的な国政を行えない中央政府に愛想をつかしたのである。彼らの側近や人脈の一部も同調の動きを見せ、イタリアへ一度抜けた後ブレンナー峠を越えてチロルの主都インスブルックへ続々と集まっていくのであった。


 インスブルックにはハプスブルク君主国の紋章と旗が掲げられ、叛乱自治体首長たちによる暫定首長会議はオーストリア共和国との決別を25日に宣言し、オットー皇太子以下、皇帝一家の帰国を要請したのである。


 この事態にオーストリア中央政府は反発し、叛乱勢力の殲滅と帝政復古派の逮捕を命じたのであった。


 27日になってイタリア王国は正式にオーストリアとの国境地帯にイタリア軍を展開させ、本格的なチロル侵攻をオーストリア軍が行った場合にケルンテン・シュタイアーマルク両地方の保障占領を行うと宣言したのである。


 これに一番驚いたのはチェコスロヴァキアとともに圧力をかけていたユーゴスラヴィアであった。


 まさかイタリア軍が行動を起こすとまでは思ってもおらず、トリエステからイストリア・カルスト地方への侵攻すらあり得ると考えてチェコスロヴァキアに断りなくイタリアとの国境へ軍を動かしたのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] オーストリアの動きもドルフースの生存率 が上がるだけで、今後の動きが変わりそう ですね。 ドルフース生きてると、ムッソリーニの ドイツへの姿勢も変わりそうだし、この人物 も生きてるだけで影響…
[一言] まさか思いもよらぬ裏側から戦争が始まるとは。 続き楽しみにしてます。
[一言] やっと読み終わった
2020/04/20 14:50 退会済み
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