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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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1931年時点での大日本帝国<12>

皇紀2591年(1931年) 1月1日 世界情勢


 自動車化と工業化が著しく進展している北九州地区以外は史実と大きく異なる地域はそれほどない。


 陸軍が大刀洗飛行場の増設を進めていること、九州財界が福岡市近郊に民間空港を建設しようと政財官界に働きかけを進めているくらいなものである。


 改軌工事も主要線区については単線であれば殆ど完成し、重要路線の複線化に取り掛かっている状態である。また、関門海峡を打通する関門トンネルの建設も順調に進んでいる。


 特筆すべきところは川南工業の香焼島造船所であろうか。一度に数隻の1万トン級輸送船を建造出来る船渠を有し、近隣地区にも同規模の船台を建設していて32年までに巡洋艦程度の艦艇を建造出来る船渠も出来上がる予定である様だ。


 社長である川南豊作は以下のように豪語している。


「前世の戦標船は確かに不出来なものが多くあっただろう。だが、よく考えて欲しい。20隻の船団を組めるほど建造出来るのはうちだけであるし、仮にその20隻のうち1隻2隻が事故でも撃沈でも構わんが失われたとしよう。残りの18隻ないし19隻が辿り着けば資源は、物資は届く。大事なのはそこである。だからこそ、必要な部分は手直しもするが、量産第一で行く。そのために私はここにいる。それに技術的な部分は10年早く取り組んでいるのだからそれほど気に病む必要はない」


 彼の姿勢はまさに戦時体制を見越したものであった。


 同時に国内における優秀船舶の建造需要も膨らみつつある今、高性能な船舶を建造する大手と違い、程々の性能で安価で早く手に入るという川南工業の規格標準船は船主にとっても大いに魅力的であった。特に内航船であれば外航船ほどの速力も積載量も必要がないため適当なサイズの船でもあったのだ。


 そんな彼は強気の姿勢を変えず、海軍向けに商船構造の簡易空母の提案もしていたのである。無論、艦政本部をカンカンに怒らせたのは言うまでもない。


「我々海軍軍人に装甲もない洗練もされていない軍艦モドキに乗れと言うのか? いや、それ以前に軍艦建造のプロである我々にこんなふざけたモノを持ってくるなど舐めておるのか!」


 この時期の空母は巡洋艦並みの主砲を積んでいるのが常識であり、当然、いざ海戦になれば撃ち合いも行う軍艦という思考であり、当然、被弾に対する防御も考えているものであるだけに川南の提案は流石に時期尚早というべきものであった。


 だが、一部の技官は川南の提案を面白いと考えていたものも居た。彼は川南が持ってきた概念図を受け取り研究課題にすると言って対価代わりに自腹で飲みに連れていったのであるが、その後、どう影響するかは今の段階では不明である。


 川南の行動に危機感を抱く名門三菱重工業もこの現状を放置する気はない。手狭である本拠長崎には拡充が出来ないこともあり、伊万里に新設の船台式造船施設を建設している。これによって川南工業と同様に10隻程度を同時に起工し建造出来る様になる。


 これに当たって三菱は鉄道省の伊万里線伊万里駅から造船所まで伸びる専用線を建設し、長崎造船所との間で資材の輸送や製品の出荷に用いることにしたのである。また、至近に石炭発電所を設置し、工場用電力供給と売電を進めていたのである。


 海軍も自前の造船施設を大分県大神に建設中である。ここには300m級の船渠を4つと中型艦艇用の船台を4つ整備している。呉、横須賀、佐世保、舞鶴といずれもが敷地に余裕がなく、既存船渠の拡張や船渠1つの新設程度くらいしか出来ないため、別府湾に面した大神に建設を決定したのである。


 舞鶴のように少し離れたところに分廠という形で建設するよりも、鎮守府と工廠を新設する方が効率的であると判断した部分が大きい。また、砲身などを製造している呉工廠と近いことから建造資材の融通の面でも適当であると考えられていたのである。

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