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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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1931年時点での大日本帝国<8>

皇紀2591年(1931年) 1月1日 世界情勢


 近畿地方の様子はどうだろうか?


 近畿最大の都市である大阪には陸軍造兵廠大阪工廠が鎮座している。徳川幕府時代の名残である大坂城を東洋最大の兵器廠として魔改造した姿だ。


 現代の大坂城は文字通り「守るも攻めるも黒鉄の……」と言わんばかりに帝国陸軍の各種兵器を製造していく拠点である。尤も陸軍相手に軍艦行進曲の一節というのは失礼であるかもしれないが、これが最も適当なのだから仕方がない。


 この大阪工廠であるが、関東大震災前に有坂重工業が陸軍省及び陸軍技術本部を篭絡し捻じ込んだことで有坂重工業製の各種工作機械が所狭しと並んでいるのだ。


 納入され設置された各種工作機械が生み出す兵器や物資はそのままシベリア出兵の時期に大いに帝国陸軍を支えたのである。量産された弾薬、銃火器、火砲を惜しみなく注ぎ込んだことで浦塩派遣軍は極東共和国を降し、赤化勢力を極東から追い払ったのである。


 その大阪工廠はシベリア出兵が落ち着いた頃から軍用製品よりも民需向けの鉄鋼製品、橋桁や鋼管などの生産が増えていった。これは金属加工の技術が民間企業よりも最先端に近いという理由が大きい。だが、その技術蓄積と同時に大量導入した工作機械による生産コストの低下が大阪工廠の仕事を増やしたと言える。


 陸軍省も大阪工廠の生産能力向上とそれによる収益は政府歳出の陸軍予算とは別枠の収入源としてむしろ受注を増やす様に督励している程であった。だが、大坂城という限られた土地に所狭しと立ち並ぶ工廠の工場群にはこれ以上の余地はなく、増築を要請するに至り、城東練兵場を工廠用地として転用することになった。


 この新工廠が稼働を始めたのが28年秋のことであり、これによって大阪における雇用はさらに拡大し、昼夜兼行で生産を行うということもあり大阪工廠に務める工員は4万人を数える。また連結関係にある民間企業と合わせると10万人規模の雇用を支えているのである。


 しかし、戦車の製造が始めったこともあり、工廠内の各工場の生産ラインの見直しを行った結果、更なる増築が必要と判明、城内外の敷地だけでなく広大な敷地と試験場を含んだ用地として干拓化が実施されている巨椋池に目を付けたのである。


 明治末期から次第に水質悪化が進行した結果、マラリアの流行地域指定となる状態であったことから大正末期には干拓事業が開始され、一部は既に干拓が完了し農地転用を待つ状態であった。基本的に史実通り、ポンプによる排水によって水を抜く形で進めている為、数年がかりの事業であるが、伏見市街に近い区画を工場用地に転用することで隣接する伏見や京都などの住民の雇用に寄与すると考え、盛り土をした上で造成し水害対策も行い30年春に大阪工廠伏見分廠が設置されたのであった。


 鉄道省奈良線から専用線が分岐する形で工廠内に引き込まれ更に延伸して片町線へ連絡する線路が計画されているがこれは干拓の進捗と関係することから現在は準備工事などを行っているに過ぎない。だが、ディーゼル機関車を導入し、大阪工廠とスムーズに行き来することを計画するなど先行投資は欠かさなかったのである。


 また、民間では阪神郊外地区……西宮や伊丹、門真、守口などに安価で広大な土地を求めて工場が進出していた。


 28年に川西航空機は親会社から独立、鳴尾に工場を進出させ本格的に航空機開発製造に乗り出した。これに亡命シコルスキー・エアクラフト社も協力することとなり、シコルスキー・エアクラフト社の工場も隣接して設置されることになるのだが、現時点では需給バランスの都合で川西航空機の傭兵として活躍し始めていた。

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