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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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1931年時点での大日本帝国<5>

皇紀2591年(1931年) 1月1日 世界情勢


 転生者、東條英機と有坂総一郎は大日本帝国の国力の底上げを画策し、まずは鉄道省を事実上の根城とすることで国政に参画するという軍部もびっくりのゴリ押しを行っていた。それもこれもすべては関東大震災と原敬暗殺阻止というそれぞれにとっての契機が大きくものを言う形になったのである。


 東條は陸軍省(技術本部や陸軍省本体)と内務省、そして憲兵隊に大きく影響力を伸ばし、同時に東北帝大とのつながりを有し、これら人脈と支援を受けることで陸軍の兵器開発や生産、また運用に注力していた。また、憲兵隊や内務省を事実上味方にしたことで、赤化阻止という目的の下、共産党員や社会主義者を片っ端から葬り、また、かつての部下である甘粕正彦を用い、甘粕事件を引き起こし徹底した”浄化”を推し進めたのである。


 総一郎は財界に梃入れをすべく、産業機械の大規模輸入と国産化、標準規格化を推し進めることで企業ごとにばらばらな規格の統一、寸法や精度の均一化を浸透させていくことに注力していたのだ。


 これには陸軍の各工廠に納入するという実績により、陸軍省からの指導というこれまたゴリ押し的な標準化を財界に押し付けたことで比較的スムーズに進んだと言える。また、中島飛行機や鉄道省関係の企業にもこれらを進めていくことによって、下請けや孫請けなどの企業にも普及させていくこととなったのだ。


 これには中小企業の反発が多かったが、一定精度に満たない品質での納品を発注元である鉄道省大企業が拒否する姿勢を示し、有坂製の工作機械、産業機械、それに準じた規格によって製造された他社製品を導入した企業を優遇する方針を出したことで中小企業も嫌々ながらも応じることとなり、標準化が加速したのである。


 また、これらと同時に東北地方への工場設立を促したことで下町に多かった町工場は助成金目当てに工場を移転、また操業規模の拡大を行ったこともあり、集約化も進んだのである。


 東北5県には鉄道沿線に工業団地の造成を進める様に商工省から督励が飛び、各県は自県の利益を確保するため競って好条件の工業団地造成を引き受けていたが、これらに中小企業の工場が移転してきたことで総一郎の狙いはある程度達成していた。


 東北における余剰人口は昭和初期の政情不安に大きく影響するだけに30年までにある程度の目処を付けておく必要があったのだ。この世界では気候変動などないことから、30年の豊作は東北の農家を確実に疲弊させることが目に見えていた。また、翌31年から始まる冷害による農業生産の壊滅的被害は追い打ちを掛けると予測されていたからだ。


 実際に30年は豊作となったことから米価暴落一歩手前まで進んでいた。しかし、帝国政府は米価調整と満州・支那方面における不穏な状況から派兵の可能性を考え米穀の大量買い付けを行っていたのである。これによって米価が持ち直し、平年並みになったことから東北農家の減収という事態にはならなかったのであるが、東北の問題はこれから発生するだけに安心する余裕はどこにもなかった。


 ただ、史実の昭和農業恐慌と違い、世界恐慌の影響は皆無であり、全国的に好景気であることから東北地方への失業帰省がないことから31年以後の冷害においても影響は少ないとみられている。しかし、それだけではなく、33年に想定される昭和三陸地震とそれに伴う津波への手当ても行う必要があった。幾度となく襲ってくる三陸地震における津波被害を考えると三陸海岸地区の都市計画という面でも対応を迫られているのである。


 史実において宮城県が33年の昭和三陸地震を契機に制定した「海嘯罹災地建築取締規則」という条例とほぼ同じ内容のものを内務省は関東大震災の直後に「海嘯防護特別移転法」を帝国議会に提出し、裁可されるとすぐに施行し、過去に津波が到達した記録がある地域を中心に海岸線からの退去移転を強制執行したのである。


 関東大震災の記憶が新しい状況でこの法案が施行されたことは非常に大きな意味がある。尤も、これらの対策がどれだけ有効になるか、それは未知数であるが、史実で失われた命がいくらかは助かると思えば強制執行の意味はあるだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後世の日本は規格不統一で苦しんだ話が「なんのこと?」になりそうだな。 詳しい人も「とある政商が陸軍と鉄道省と結託して金儲けした結果、いつの間にか統一されていた」と悪意ある解釈が難しい逸話に…
[一言] 国を変えるためにはゴリ押しも已む無しかと。全ては大日本帝国のためにですな。
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