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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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1931年時点での大日本帝国<3>

皇紀2591年(1931年) 1月1日 世界情勢


 史実において俱知安鉄山の開発は三井財閥系において行われていたが、この世界でも同様である。ただ、違うのは有坂コンツェルンが仲介することで欧米から最新型の機材を導入することが出来たことから史実と異なる経緯での開発が進んでいた。


 道内の他の炭鉱のように露天掘り化が進められ、採掘の効率化と大規模化が行われている。三井側は当初、露天掘り化することで採掘の最適化は可能であろうが、可採年数の大幅な減少を危惧したが、国内における数少ない鉄資源であることもあり欧州大戦の様な通商破壊をされては国外からの搬入が難しくなるということを主張された結果、延命措置は取らずに採掘量を優先することに決したのである。


 三井鉱山の決断の背景には空前絶後の建設ラッシュ、インフラ景気が訪れていることもあり強気の決断をすることが出来たのである。無論、このインフラ景気は列島改造、弾丸列車計画による鉄道省のゴリ押しが理由であるが。


 鉄道省も三井側の開発に応えるべく伊達紋別~俱知安を結ぶ鉄道を建設(鉄道免許交付企業の買収も含む)した上で突貫工事によって胆振線として28年に単線、30年には一部区間複線化開業させている。これによって夕張-室蘭-京極の鉄道貨物輸送軸が完成した。線路規格も東海道本線並みの水準としたことで鉄道省が採用したばかりのD70形(軸配置2D1)の高速運転可能な貨物用蒸気機関車を東海道本線に先駆けて導入し、室蘭本線室蘭機関区に20両集中配備されている。


 この機関車は史実の南満州鉄道マテイ形をモデルとしている。動輪直径1750mmとC51形同様の大直径を用いていることから100km運転が可能な高速機関車である。無論、この機関車を運用出来る線区は現在のところ東海道本線、山陽本線、常磐線、函館本線(門司~熊本)、筑豊本線、そして室蘭本線、夕張線、胆振線に限られる。いずれも貨物需要が旺盛な地域ばかりであるが、その中でも室蘭本線と夕張線に初期生産分を全て投入しているのはその線路特性にもある。


 室蘭本線は平坦かつ直線距離が長いことから高速運転に向いている、また夕張線と胆振線は山岳線であることから牽引力と粘着性が必要であることからもこのD70形が適任だったのである。また、D70形には自動給炭機を標準装備していることで乗務員の労働環境の改善を図っている。


 これらの取り組みによって輪西製鉄の室蘭工業所には大量の資源が送られることによりその製鉄量が急増することになったのだ。無論、鉄鋼需要は日増しに増えていることもあり供給が需要を上回ることはなく、増産増産の掛け声が事業所内では響き渡っているのである。ここで製品化された鉄鋼は道内に勃興しつつある土建機械メーカーへ供給されるとともに本州へ移送され各企業へ流通していく。


 まさに鉄は国家の基礎である。これらの北海道殖産政策を有坂総一郎は”鉄血政策”と呼称し、エネルギー問題と同列に扱うことで重要基幹産業として成長させる戦略であった。


 尤も、音頭を取っている当の本人の弁は次の通りであるが……。


「この時期の北海道は鉄道経営ゲームの基本を押さえてあるからそのままやればいいのだから楽勝。尤も、鉱山が黒字でなければ途端に大赤字になるんだが……まぁ、そうなる前に手を打つ必要はあるけれどね」


 結局、北海道の鉄道は貨物輸送が前提の歪な基礎構造をしているという問題にメスを入れることは難しいと彼にもわかっていたのだ。だからこそ、鉱工業の衰退を視野に入れて本州から産業の移転を進めているのである。


「せめて機械工業の工場をもっと移転させて本州の余剰人口を道内に振り向けないとな……」

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