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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2591年(1931年)

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1931年時点での大日本帝国<2>

皇紀2591年(1931年) 1月1日 世界情勢


 北海道、樺太はこの数年で著しく発展を遂げていた。炭鉱の機械化による露天掘りへの移行は劇的に影響していた。坑内掘りから露天掘りに移行した結果、炭鉱労働者の労働環境の改善につながり、同時に炭鉱労働者たちに土木機械を使いこなすことが求められたため、装軌車両の運転免許保持者が激増したのであった。


 これには陸軍省が一枚噛んでいて、三菱、三井などの鉱山経営企業へ機械化に当たってトラック免許、装軌車両免許の取得を奨励していたのである。


 これらの第一期、第二期、第三期講習者は千歳飛行場建設現場に召集され、実習と同時に飛行場建設に駆り出されることで実地体験と免許取得講習を一度に賄ったのであった。文字通り、勤労奉仕の形での免許交付である。これは陸軍側にとっても工事費用の人件費削減にもつながり、企業側にとっても講習費用を勤労奉仕で代納した形を取ることが出来、まさに両者にとって都合が良い形となったのである。


 千歳飛行場は陸軍及び民間が利用する飛行場であったことから、刺激を受けた海軍省は自前の飛行場として道東の要とすべく美幌に飛行場建設を画策したのである。


 この時、海軍はある実験を思いついていた。


「北海道は雪深い、作業をするにも不都合があるだろうから地下に格納庫を設置してエレベーターで滑走路へ出せばよいのではないか?」


「であるならば、空母の技術研究としてこの際だから思いつく限りの実証試験をしようではないか……失敗しても滑走路脇に格納庫や誘導路を設置すればよいだけだ。地下格納庫も弾薬庫や倉庫に使えばそれほど問題はない」


 などという意見が海軍技術研究所航空研究部、横須賀海軍工廠航空機実験部・横須賀海軍工廠航空発動機実験部など海軍航空当局から出てきたことで通常の飛行場ではなく、地上施設を最低限度、主要施設を地下若しくは半地下にすることが決定されたのである。


 無論、このような大規模工事を引き受ける余力があるゼネコンはどこにもなく、海軍側は軍縮の兼ね合いで生じた余剰人員の一部を技術将校や軍属化しこれを投入することで史実よりも10年近く早く海軍設営隊と海軍工作学校の設立に至っていた。


 その海軍設営隊、海軍工作学校の生徒を実戦投入する形で美幌飛行場整備を開始したのであった。当初、慣れない重機の実地運用と机上の理屈ではない実体験が彼らを苦しめていたが、日が経つにつれて次第に教育のそれと実体験がしっくりくるようになり作業効率は跳ね上がっていったのである。


 また、網走本線美幌駅から海軍専用線を美幌飛行場まで建設したがこれも2ヶ月程度で運行可能としたのである。飛行場施設が整うと鉄道省に石油輸送列車の定期運行を要請している。手稲にある日本石油の製油所から函館本線、名寄本線、湧別線、網走本線経由での輸送である。32年からは石北線の開通によるダイヤ改正で経路変更の予定であるが、それは別の話。


 海軍の陸軍に対する対抗心が結果として北海道開発に大きく寄与しているので転生者たちは大きく関与はしていない。


 だが、石狩油田の採掘量が低下することを知っている有坂総一郎は有坂商事を使って勇払原野において試掘を行っていた。いくつかの試掘ポイントで原油の噴出を確認していたが、5000mを超える大深度のためなかなかうまく進んでいない。だが、史実現代において日量600klの原油を得られているこの勇払油田を無視するわけにはいかない。このプロジェクトが上手く進めば、新潟県中越地区での油田、ガス田開発にも対応出来るからである。


 これらの開発事業がそれぞれ思惑と面子によって推し進められていることを傍観者の立場で見る限りでは滑稽に思えることだろうが、転生者たちからすれば結果さえ出れば経過など構わないとなりふり構わない答えが出ることだろう。

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